2006-05-19
「医療崩壊ー立ち去り型サボタージュとは何か」を読む
- 作者: 小松秀樹
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2006/05
- メディア: 単行本
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最近出版された本だが,「医療崩壊」というタイトルに惹かれて読んでみた。内容は警察の問題,法曹(検察・弁護士)の問題,患者の問題,病院経営者の問題,大学・医局の問題,厚労省の問題と多岐にわたる。患者-医療者間の意識の違い,大学医局の現状,地方医療の崩壊に対する現状認識に関しては自分がこれまで当ブログで書き散らしてきたことと本書とはあまり相違はなく(勿論その裏付けとなる情報の量は比べものにならないが),また医療裁判に絡んで警察・検察・弁護士と医療との関わりについては知らないことが多く勉強になった。今後医療問題について構えた文章を書こうとしてもおそらく既に本書で網羅されていることになると思われる。
虎ノ門病院部長という多忙な身にも関わらず膨大な資料を読み多くの人と意見を交わしたことは尊敬に値する。文章を読んでいると融通の利かない生真面目さが伝わってきて身近にいたらさぞ煙たいだろうなと思うが,そういう人が居ないとこれほど濃厚な本が世に出ない。ただ最終的な結論が「医療側と患者側の認識を一致させるための国民的会議が必要」という理想論になっているのには同意できない。これだけの本を書く方なのだからそうした会議を立ち上げて結論を出すことがほぼ不可能なことは理解されているだろう。あえて不可能とは書きたくなかったのかも知れない。国民的合意を形成しないと取り返しの付かないことになる,と述べられているがむしろ取り返しの付かない事態になってようやく国民的合意が得られるかも知れないというのが自分の見解である。
兎に角にも,あまりブログで力んで医療問題を取り上げてもこのような遥かに広範でかつ緻密な書物が世の中にある訳だから(しかも普通の書店で入手できる),今後はもう少し肩の力を抜いて適当に毒を吐いていこうかと思っている。
それはともかく医局脱出まであと316日。
comment
Commented by 小林 at 2006-05-29 19:02 x
「医療側と患者側の認識を一致させるための国民的会議」って2ちゃんねるのことでわ」?
Commented by Dr.Pooh at 2006-06-08 06:30 x
2chは国民的会議というより国民的井戸端会議みたいなものですよね。お互いに言いたいことは言うけれど結論は出ない,という。議論は大切ですが,あそこでは医療側と患者側の一致した認識は生まれないと思われますがどうでしょうか。
Commented by taiga at 2006-09-03 01:19 x
東大の医局を9年前に辞めました、専門医と博士は採ったので、関連病院への転出ができず、論文を書かされるのは教授になるつもりの無い自分に意味が無く、自分のスキルにとって無駄な時間が多いためです。スキルを磨き、専門性を高めるために2つの病院を回りました。スキルと専門性で今の職場にいます。人生の時間は有限です。虎ノ門病院というところは東大がたくさんいるところです。東大卒の方は几帳面で優秀ですが、世界観なく、常識がずれていますので、分析は正しくても、結果としての行動は官僚の言うとおりです。これが日本の悲劇です。
Commented by とまと at 2006-09-08 20:28 x
取り返しの付かない事態になってようやく国民的合意が得られるかも知れないというのが、あたっているでしょう。
セカンドオピニオンとか客の奪い合いが、起きたほうが、自由競争なんでしょうが、医療に自由競争が導入されると、どうでしょうね?立ち入ったことですが、医局脱出の動機はなんでしょうね。
Commented by doctorpooh at 2006-09-09 09:05
>失礼なことを、質問してしまったかと、、、デリケートですね。
そんなことはないですよ。脱出の動機は一言では語れませんが,世間の医局員の先生方が思っていることとそう大差はないと思います。単純に,自分が医局にとって必要のない存在であり,また医局が自分にとって不要であるという事実を認識したのが一番でしょうか。
