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医局脱出へのカウントダウンarchive

2006-06-13

社説:医師不足 地域医療を崩壊させるな


 毎日新聞6月13日の社説。おおむねこれまでの報道側の主張通りであった。要するに臨床研修制度による研修医の地方から都会への移動が原因という議論である。対策に関してはこれまでは「国が何とかしろ」という論旨が多かったようだが今回は少し違うようだ。

   ---------一部抜粋-----------

単に医師の数を増やせば済むという単純な話でもなさそうだ。厚生労働省は、患者が安全で質の高い医療を受けられるよう地域の中核病院に医師を集め、少人数で過酷な勤務をこなしている現状を打破したいと考えている。

 結局、制度改正や対症療法などいろいろな処方せんを組み合わせていくしか打開の道はない。

 例えば、県の中核病院にその地域の医師配置コントロール機能を付与する。開業医になる資格条件として過疎地医療の研修医経験を設ける。地方に勤務する研修医の奨学金制度を充実させる。地方の病院に外国人研修医を受け入れる。過酷といわれる産婦人科医と小児科医の待遇改善に診療報酬で更なる増額をする。医学部へ「地方枠」で入学した学生は地元への就職を義務付ける。

 思いつくままに挙げたが医師不足の解消は官僚まかせにする問題でない。医療の専門家集団である医師会が率先して取り組むテーマだ。国民の期待もそこにあることを真正面から受け止めてほしい。

   ----------抜粋おわり----------


 ...本当に思いつきを挙げているだけである。肝心の「少人数で過酷な勤務をこなしている現状」を打破できる案が一つも含まれていないのはあんまりだ。仮にも全国紙の社説としてどうかと思うのだが...。一応コメントをしておくと,

(1)県の中核病院にその地域の医師配置コントロール機能を付与する

それはつまり医局の事である。医局に強制力を与えろというのはこれまでの新聞の論調からすれば思い切った転換であるが,あいにく医師を強制的に配置することはもはや不可能である。合法的に強制配置しようとするなら根拠となる雇用契約を結ばなければならないし,そうなればむしろこれまでのような労働基準法無視の奴隷労働は出来なくなる。第一誰がそんな契約を結ぶのだろうか。

(2)開業医となる資格条件として過疎地医療の研修医経験を設ける

一種の強制労働であるが,駆け込み開業によって僻地だけでなく,市中病院は壊滅的な打撃を受けると思われる。明らかに逆効果。

(3)地方に勤務する研修医の奨学金制度を充実させる・地方の病院に外国人研修医を受け入れる

研修期間が終わったら都会に戻るだけである。結果として僻地は多数の研修医と少数の指導医しかいない状態になるだろう。過酷な勤務は改善されない。また,外国人なら研修医が終わっても地方に残るという根拠があるのだろうか。

(4)過酷といわれる産婦人科医と小児科医の待遇改善に診療報酬で更なる増額をする

診療報酬を上げたところで開業医ならともかく勤務医の労働環境改善には寄与しない。病院の赤字を埋めるだけである。

(5)医学部へ「地方枠」で入学した学生は地元への就職を義務付ける

受験生は束縛を嫌って地方枠の競争率が低下すると思われる。当然地元に残る医師のレベル低下は避けられない。指導する医師の負担は減少しないばかりか,肝心の患者への不利益が生じる事になりかねない。

 挙げ句の果てには,「医療の専門家集団である医師会が率先して取り組むテーマ」などとおよそ見当違いのまとめ方。結局これまで医局を悪の権化として攻撃してはきたが,いざ崩壊して問題が噴出した時に責任を誰に転嫁していいか分からないのだろう。とりあえず今回は医師会の責任にするつもりらしいが,筋違いもいいところである。まずは自分の新聞のバックナンバーを読み返して,これまでの医療政策とそれを助長してきた報道内容をよく考察してみて欲しい。

そんなこんなで,医局脱出まであと290日。


comment

Commented by inoue0 at 2006-06-15 23:14

おっしゃることはほとんどごもっともですが、(5)の「競争率が低下する」はべつにかまわないと思いますよ。医学学習には、大して学力は必要ないですし。私学の方が難易度は低いですが、医師の質に国立出と私学出で、差はありますか?

ただし、どんな手を使うにせよ、特定地域就職義務づけ案は、総定員が同じである限りは、ある地域で充足すれば別地域で不足し、結局、全国で同じことが行われるようになるだろうから、元の木阿弥になるだろうと思います。

Commented by DrPooh at 2006-06-15 23:45 x

 受験勉強の実力イコール医師の実力ではないことはよく分かりますが,個人的には医学部入学のハードルは医師になる意欲の低い方をある程度ふるいにかけていると理解しています。入学の難易度で言えば地方枠と従来枠の差は国公立・私立の差よりずっと広がるように思ったので,異論はあると思いますが上記のように述べた次第です。

 「どんな手を使うにせよ、特定地域就職義務づけ案は、総定員が同じである限りは、ある地域で充足すれば別地域で不足し、結局、全国で同じことが行われるようになるだろうから、元の木阿弥になるだろうと思います」については,全く同意です。

 またコメント頂ければ幸いです。