2007-03-13
■[超−1]【+2】潜伏期間
本心とは全く違うことを言い続けることで、却ってその本心を際立たせるというレトリックがある。
この作品でも「偶然だ」という言葉を連発させることで、そうではないことを強調しようとしたと思われる。
だが、何となくそれが中途半端というか、効果的ではなかったように見える。
結局、作品中で「偶然」だと言っているのが死んでいく当事者ではなく、第三者ばかりだというところに弱さを感じる。
もし仮に当事者が立った一言「偶然だよね」などと言っていたら、凄く重い印象を与えることになったであろう。
ところが連続死の環の中にいない者だけが「偶然」という言葉を使ってしまったために、本当にそのような刷り込みに陥ってしまったように感じる。
要するに、逆説的な示唆が額面通りに受け取られてしまい、本来の効果が出ないばかりか、却って恐怖感を打ち消す側に回ってしまったような印象である。
また劇的な盛り上がりを期待して当事者との会話を駆使しているのだが、これも何となく不発に終わっている。
結局、当事者の感情があくまで不安でしかなく、決定的な怖れにまでなっていないように感じるからだろう。
これだけ会話を積みながら漠然とした不安だけでは、やはりインパクトが弱いと言える。
“祟り”とは当事者が“祟られている”と自覚して初めて成立するものなのである。
この作品の弱点は、“祟り”とすべき内容にもかかわらず、原因らしきものはあっても決定的ではなく、また“祟り”と断じるには物的な証拠がなく、当事者達も明瞭に“祟り”であるという意識も薄い。
最終的に、状況証拠としては“祟り”と断定しても良い内容であるにもかかわらず、恐怖度から言えば数段低い“不安”というレベルで展開が止まってしまったところに、読者の感じる中途半端さが出てしまったと言えるだろう。
「千人塚」や「七人」の犠牲者など、もっていきようによってはこれだけでも“祟り話”に解釈できるような素材があるにもかかわらず、何か煮え切らない印象だけが残ってしまった。
悪い意味で“あったること”だけで話を繋げてしまった感がある。
もう少し作者の意図的な誘導があっても良かったように思う。
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