幽鬼の源

2007-03-26

[]【0】難聴

怪異よりも体験者達のキャラクターの方が印象に残ってしまった。

どうしても指輪の出所を語る上で特に彼氏の性格を書いておく必要性があるので、削るということはできないだろう。

性格を事細かに書く書かないというよりも、怪異そのものの扱いが非常に適当だと思うのである。

怪異の肝に入る前に“耳が聞こえにくくなった”ことが書かれており、この後の“耳に指を突っ込まれる”現象に推移するのだが、その怪異と指輪の繋がりがかなり希薄に感じる。

原因は指輪を放置した後、体験者の難聴が治ったのかどうかが一切書かれていない点である。

さらに突っ込むと、指輪を拾った場所が霊園の“近く”のポストの上という、何か中途半端な場所である。

強く否定することは出来ないが、もしかすると指輪と難聴の怪異との間には実は因果関係が成立していないと考えてもおかしくないのである。

そのように邪推することも可能な指輪に焦点を合わせて最後を締めてしまったために、どうも居心地が悪い雰囲気が出てしまったように思う。

体験者は指輪が原因で難聴になったと信じ込んでいる様子だが、本当はもっと別の原因があったのではないだろうか。

ケチな彼氏である。

指輪以外にももっとたくさんの物を拾っている可能性があるだろう。

その中に彼に取り憑いて怪異を起こすものが存在していると見た方が、自然な流れであるように感じるのである。

結局この作品は登場人物や指輪といった、怪異そのもの以外の部分だけがクローズアップされてしまった感が強い。

難聴の原因と結果をきちんと書くべきだったと思うし、それが正統な怪談話としてあるべき形だったように思う。

[]【+2】青い部屋

ラブホテルの怪異も、よく考えると結構多い。

この作品もその中にあっては、割とよく見るタイプの怪異である。

例えば、事に及ぼうとすると霊体が視線の端々に見える、室温やバスの湯の温度が異常に低くなるあたりは、ラブホテル怪談の定番と言ってもおかしくないだろう。

この作品ではさらに“部屋が揺れる”という珍しい怪異が書かれているが、怪異が連発しているにもかかわらずねばって部屋にいたためのボーナス怪異なのかもしれない。

とりたてて凄い怪異という訳ではないのだが、作者の筆さばきが上手いために、なかなか読ませてくれる内容に仕上がっている。

スピーディーな展開と、際どいところで卑猥にならない表現で、読者を飽きさせずに引っ張っていっていると思う。

特に後日談は体験者の何とも言えない性格が滲み出ていて、妙にあっけらかんとしたオチで終わらせている。

この手の怪談話は、最後はおどろおどろしい事件の報告で締められるケースが多いのだが、そのような大時代的なパターンにも陥らずに、意外な終わり方で面白かったと思う。

どうしても典型的な怪異パターンがほとんどだったということで、好評価までは至らず。

[]【−2】因果

怪異の身の丈にあった書き方をしないと不利な状況になるというお手本のような作品。

最初に体験者が一くさり講釈するのだが、そこで語られる大仰な前振りの方が怪異に勝ってしまっている。

そのためにせっかくの怪異の報告が見るも無惨なくらいつまらないものに見えてしまった。

自殺の現場で不謹慎なことをした報いを受けるというネタは数多くあり、この作品はその中でも大したレベルのものではない。

多分体験者の前振りがなくとも、多くの読者はそれほど強烈なネタではないと感じてしまうだろう(さすがに思い過ごしで片付けられるレベルはクリアしているが)。

それでも前口上さえなければ、しっかりとした怪異として受け入れられていたと思う。

大体において、ネタの前に“すごく怖い”とか“とんでもない話”とかを振ってくる作品は落胆することの方が圧倒的に多い。

読者を期待させるような書きぶりが元凶であることは間違いない。

やはり見かけ倒しは禁物である。

そして作者自身もネタを自画自賛する表記以前に、中身で読者を圧倒するような書き方を創意工夫しなくてはならないだろう。

多くの指摘があるように、前半部分は書かなかった方が正解である。

そこさえなければ、結構読みやすい作品であったと思うのだが。

[]【−1】窓の外から

画像であるが、あくまで実話怪談の括りとして評することにしたい。

つまりここに描かれている内容は、全て写実的に解釈されるに足る情報を持つものであり、事実を表現しているものであるとみなす。

イメージ画のような象徴的・隠喩的な表現ではないという前提に立っていくのが妥当であろう。

よって【絵解き】という手法を用いて評を進めることにする。

まず、窓枠の部分に黒い影がついていることから、時間的には夕刻から夜に掛けての出来事であるだろう。

現れている怪異は“一つ目”であり、丸いボール状の頭を持っている。

形状から考えると、妖怪の類であると見て良いだろう。

(ただし絵を見る限りでは、どの種類の妖怪であるかは特定できないように思う)

そのあやかしが窓の上から見下ろしていたというのが、怪異の肝である。

しかしあやかし自体は宙を浮いているのか、屋根から覗き込んでいるのか、そのあたりはどちらでも解釈できる。

左下にある腕は体験者のものであると推測するが、この体験者と怪異との関係はこの絵から見ることは不可能である。

偶然目が合ってしまったと解釈するのがベターかもしれない。

以上のことから、この絵は妖怪目撃談を表したものであると判断する。

そうなると、この妖怪の容姿に関する情報がかなり少ないために、かなり貧弱な内容であると言ってもおかしくないだろう。

妖怪のようなあやかしについて言えば、やはりその特異な容姿があってこそあやかしとしての価値を持つものという認識が強い。

その部分に不備があると感じてしまうと、どうしても評価を低くせざるを得なくなる。

特にディテールがしっかりと表現できていないように感じてしまうのは、視覚効果の高い画像作品にとってはかなり問題であるだろう。

さらなる創意工夫を要すると思う次第である。