【+3】妄執

井戸を潰すととんでもない目に遭うという話はよくあるが、ここまでしつこいケースはあまり記憶にない。
しかも、おそらく言いだしっぺだけを生殺しのように生き延びさせているという印象が強烈であり、また身体ごと乗っ取られているという確信を持たせるものがあり、それだけこの祟りが尋常ではないことは明確である。
特に、井戸の中の目にまつわるエピソードは鳥肌物である。
だが、この執拗な事態を克明に書き表した文章そのものが却ってこの作品の足枷になっていることも事実である。
要するに、怪異を提示する前段階の状況説明が多すぎるために少々だれてしまうのである。
詳細を提示して状況を理解させることは必要であるが、それがくどすぎると本題への道のりが長すぎてインパクトが弱くなってしまうのである。
この作品の場合では後半部分、癌であることが判ってからの本人の変化と共に、周囲の人間の対応の変化まで書いてしまったために冗長極まりない感じになってしまっている(ただ書き手の感覚から言えば、ここで恐ろしいぐらい筆が進んでいて調子よかったのではないか推測する)。
もう少し内容を整理して、怪異が連発して提示できるような長さに収めるべきだったと思うし、書き手自身がもう少し冷静にまとめ上げる必要があったように思う。
書き方の工夫次第では、相当な作品になっていたと感じるので、少々残念である。