ちょっと・ショート ⑧  夢

夫を座卓にしばり付け 動き出さぬよう座卓ごと大型冷蔵庫にはりつけた
そうでもしなければ いつまでたっても片がつかぬと思ったからだ
どんな力が出てそのような荒事が出来たのかは解らないが
気がつくとその有り様だった
そして妻は覚悟していた 火を放つ算段だ
私の目がそれを見ていた じっと見ていた


くたくたにぐだぐだに起き上がれないほどに疲れて目が覚めた
同じ夢を二度見た
それほどに 何を訊いても「いや まだいい」
すこし動けば「まだ さわるな」 その繰り返しだったのだ
夫の目を盗んで妻は亡父母の衣類や夥しい物の数々を処分した


たくさんの人形 こけし ぬいぐるみは捨てるにしのびなかったが
人形供養の寺に持ち込む術も時間もなく
全部並べて夫をうながし香をたき二人で手を合わせ
シーツにくるみ 幾包みも燃えるごみに出した
可哀想に ごめんなさいね ずっと父母を見守ってくれていたのに


夫は言った
「オレも夢をみたよドアを開けたらものがまだいっぱいあったんだ」


私は両の手にロープを握りしめ ピンと張った





              ・