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「魔王14歳の幸福な電波」について

2009-01-18

竜騎士07のミステリーが「本格推理」でない単純な理由

本格ではない

 『うみねこのなく頃に』のミステリー的側面を語るために一点はっきりさせておかなければならないのは、本作がある種の定義における「本格推理」の論理によっては作られていない、そもそもそれが目指されていないという点です。たしかに本作は「プレイヤーが作中の謎に挑む」という構図が採られています。けれど、だから本作が「本格推理」の文脈で読み解くべきものだと考えるのは早計ですし、その要件を満たしていないから不完全であると批判するのは少々筋違いです。

 本作が本格推理の文脈に当てはまらない点は色々考えられます。でもまず根本的なところで、本作は「真相の看破に必要な情報は、出題段階で全て明かされなければならない」という本格推理の基本的な要件*1構造上まったく満たしません。それを指向してもいません。なぜなら本作は「推理→検証→新しい事実発見推理→検証→新しい事実発見→……」という過程を繰り返しながら少しずつ事件の真相に近づいていく、どちらかといえば現実的な捜査に近い形で展開していくゲームだからです。


ターン制のミステリー

 第一話が公開され事件の謎が描かれて以降、プレイヤーWebを主とした場で様々な推論を飛び交わせるようになりました。不特定多数プレイヤーによる無数のやりとりの中からは自ずと当を得た仮説が浮かび上がってきますし、PARADOXのKEIYAさんのような突出した論者の考察存在します。そういったWeb上の「推理」は間違いなく作者の目にも入っていて、続編では彼らの推理状況も参照されながら事件の「検証」が行われ、さらに「新しい事実」も判明していきます。

 プレイヤー総体的に頑張れば、情報が早く明かされたり、逆に新たな事件の難易度が上がったりします。その逆も然りです。実際、第三作では現段階でのプレイヤーの理解度に合わせて「難易度」の調節を行ったという作者のコメントがありますし、最新第四作でもプレイヤーの間から生じたいくつかの仮説が作中に取り上げられています。これらは目に見えた分かりやすい例ですけれど、似たようなことが様々なレベル作品の展開に反映されているはずです。

 作中ではしばし、ミステリーというジャンルお約束的に語られる理想的な名探偵が"シンプルな一本道の推理で鮮やかに真相を突き止める"*2、あるいは"一本の矢で華麗に的を射抜く"ような推理方法に対する疑問が呈されます。その代わりに提示されるのは、たとえ無様な暴論や些細な疑問でも、数多くの推理と検証を積み重ね「面で襲いかかる」ことによって真相を突き止めようという、もっと泥臭い姿勢です。幾度もの推理と検証を前提とした本作のようなスタイル作品にとっては、このような「面で攻める」方法こそが、まさに適した攻略方法なのでしょう。

 本作の「ミステリー」部分の極北である特殊な推理パートでは、論理性を過剰に突き詰めたゲーム的なルール採用されています。ここでは犯人の動機や個人の身体能力差などは完全に無視され、なかば現実的な再現性すらも度外視した論理パズル的な問題*3が焦点となってきます。こういった論理の応酬による推理バトルはたしかに大変"それっぽい"感じがするのですが、それでも基本的なところで「情報の公開が段階的である」という本作の根本の性質は変わりません。

 『うみねこのなく頃に』はこのようなスタイルで展開する作品です。だから本作を本格推理的な文脈で解釈しようとすれば多くの不具合にぶち当たるでしょう。このゲームは「出題者が完結したひとつの問題を出し、あとは回答者がそれを解くのみ」という一ターン限りの戦いではなく、「作者とプレイヤーが交互に一手ずつ駒を動かしていく」まさにチェスのようなルールの上に成り立っているのです。


作者はむしろTRPGゲームマスターに近い

 さらに、こういう見方もできます。作者はプレイヤーに敵対する「挑戦者」であると同時に、プレイヤー推理を最終的な真相まで誘導する「狂言回し」でもあります。TRPGゲームマスター*4みたいなものと言ってもいいかもしれません。ゲームマスターは障害としてプレイヤーの前に立ちはだかりますが、状況によってプレイヤーにヒントを与え、道を外れすぎないよう誘導するのも仕事です。

 ですから、作者はプレイヤーに勝利するための最善手ばかりを打っているわけではありません。究極的には、「自分が最後に負かされるための舞台」を地道に準備している風にも見えます。このあたりに、単なるプレイヤーの敵対者ではない作者の行動基準の特殊性があると言えるでしょう。作品が8話かそこらで必ず完結することは予定されているわけで、作者ははじめからそこを目指して動いているはずです。

 そういえば作中でプレイヤーの「敵」として立ちはだかる魔女も、「常に最善手を打つわけではない」者として説明されています。このあたりの理屈を考えてみると、本作のテーマのひとつとして論じられる「魔女目的」のヒントにもありつけるのかもしれません。

関連

*1:「その様な要件を持つと定義されている本格推理」として定義します。コメント欄参照。

*2:ただし地道で現実的な検証や、他の仮説でも現象は説明できるといった可能性がなかば度外視されている類の。

*3論理に偏りすぎるあまり、言葉遊びの領域にまで入り込もうとする類の。

*4:ちょっとマイナーですが、「ウミガメのスープ」なんかも感覚近いです。

ErlkonigErlkonig 2009/01/19 00:30 むむ。ありがとうございます。その辺の言葉をどこまで精度詰めるかは文章書くとき毎回考えなきゃいけない課題でありますね。注釈つけておきます。

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