『フリーメイソン 西欧神秘主義の変容』

フリーメイソン (講談社現代新書)

 フリーメイソンについての"まともな"本。300人委員会とかネオアトランティスとかラー言語は出てきません。18世紀の「グランド・ロッジ」成立からアメリカ建国までの歴史をなぞりつつ、理性主義・自然科学主義・人間主義といった当時の西欧思想を反映した団体として、地に足のついた説明がなされています。

 ここに書いてある感じだと、フリーメイソンは特定の強固な思想によって統率された、共通目的を達成するための集団ではないようです。フリーメイソンは基本的にネットワークやコミュニティとして機能するもので、その中の有力者たちが相互互助的に大きな事を成し遂げることはあるでしょう。ただし、「フリーメイソン」なる謎の意志が有力者が集結させ、その差し金で世の中をどうこうする……というのはイメージしづらい感じです。

 連想したのは、インターネットとかTwitterでした。今では有名人もけっこうTwitterをやっていて、timeline上で頻繁に言葉を交わしているし、ツールとしても活用しています。でも、それを指して「IT系の若手成功者の多くがTwitterに加入している……IT業界はTwitterの陰謀によって操られていたんだよ!」「な、なんd(ry」とか言う人はいないわけです。

 その内容がクローズドになるだけで随分あやしげにな印象を帯びてはきますが、こんなあからさまに名前の知られた秘密結社よりも、隠居のおじいさん連中がどっかのホテルの一室を囲って催す地味な寄り合いとかの方が、現実的な意味でよっぽど怖いんだろうなあとは思います。ともあれ、フィクションとしての秘密結社のドキドキは大切にしたいね! というお話でした。