ゴースト×ゴースト小説、願いの手

「反抗期なんですよ」
事あるごとに、そう言われる。
人を治す度に、人を助ける度に、俺が反発をして、舌打ちをすると、親もそれ以外のヤツもみんなそう言う。
...別に生まれてからずっとそうだよ。親とまともに喋ったことなんて無い。誰かを助ける予定を勝手に立てられて、それを伝えられるだけ。頷いた事もない。...横に振ったことも無い。

ありがとう、その言葉を嬉しく思った事がなかった。それを言うヤツらは全員、俺の自由を犠牲に救われている。
ただの名前に、理想を込められて、抑圧されて、雁字搦めにされた俺に、無理を言って。
この世界の全員、俺を愛してるんじゃないさ。この手が大好きなんだ。なんだって治る、なんだって戻る。全て理想通り、思い通り。

...なんだよ、ちょっとくらい気にしてくれたっていいじゃん。
一回も、どういたしましてって返した事ないんだし。
誰か一人くらい、気に掛けてくれたって...いいじゃん。

みんな助かった事に頭がいっぱいでさ、幸福を見せつけられたら幸福になれる訳じゃないのに。
機嫌悪くしてたら反抗期、親なんて大した事ない。勝手な名前付けて、俺の生きる道を勝手に決めただけだ。

患者に触れて、今、この瞬間...ちょっとやる事を変えたらさ、俺の人生も変わるんだよ。
もう俺の事、信じる人も減るんだろうし。...でもいざ命の危機になったら、どんな危ないヤツでも頼るのかな。

なんで死にたくないんだ。神様の所へ行けるのに。みんな神様の所へ行ったら、俺の仕事もなくなって、みんな幸せになれるのに。
みんな一緒に死んだら、みんな一緒になれるのに。

ああ、でも...逆らえない。あいつら、どうせ俺の評価を下げて世の中に広めて、俺の自由をもっと奪う。
俺の手を奪う。俺の腕を切り落として、俺を救世主だった存在にする。
ダメだ、俺はもっとこの手でやりたい事がある。この手で俺の世界を変えて、この手を俺だけのものにする。
いつか...いつか、絶対に見返す。世界中が俺に与えた理不尽を、絶対に許さない。
俺がこのまま死んで神の所へ行くなんてダサい事は出来ない。
人の死をこの目で見るまでは、この世界を去る訳にはいかない。

だからそれまで何度でも言おう。

「...症状は何ですか。この手で何でも治してみせましょう。......この、メサイアの名に懸けて。」

それまで、どれだけでも叶えよう。

...そう、それまでだ。