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労働契約法の基本原則、特に合意の原則について解説。2008年施行のこの法律は、労使の自主的交渉を基盤に労働関係を安定させます。(雇用社会と法第4回)#放送大学講義録

 

 

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では、最初のポイント、労働契約の基本原則について見ていきましょう。ここでお話しするのは、労働契約法が定めるルールについてです。

労働契約法は、2007年11月28日に参議院で可決され、成立し、2008年3月1日から施行されました。労働基準法などと比べると、労働契約法はあまり馴染みがないかもしれませんが、労働契約の基本ルールを定める重要な法律です。ここでは、まず、労働契約法が定める労働契約の基本原則について確認し、その上で労使の合意の場面について検討していきます。

まず、労働契約法は合意の原則を定めています。これは労働契約法第1条および第3条第1項に規定されています。労働契約法第1条は、法律の目的を定めており、以下のように規定しています。

「この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉のもとで、労働契約が合意により成立し、または変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定または変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。」

合意の原則とは、労働契約が労働者と使用者の自主的な交渉によって、合意に基づいて成立し、または変更されるという考え方です。

ここで考えるべきは、雇用の特殊性です。民法では、対等な当事者間で合意を行うことが基本ですが、労働者と使用者の関係は必ずしも対等ではありません。そこで、労働法の分野では、実質的に労使の対等を確保することが重要になってきます。

 

 

 

労働契約の基本原理、権利義務、懲戒処分、業務命令の権限について学ぶ。労働者と使用者の関係性と契約上の義務を解説。(雇用社会と法第4回)#放送大学講義録

基本原則は学んでおかなければ。

 

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雇用契約とは、第4回のテーマは労働契約の基本原理です。働く際には、労働契約を締結して働くことになります。労働者は労働契約に基づき労働し、使用者に労務を提供します。これに対して使用者は賃金を払います。では、労働契約を締結した契約当事者はいかなる権利義務を負うのでしょうか。第4回は「労働契約の基本原理」と題して、労働契約が成立する基本的なルールを学んでいきたいと思います。

 

今回学んでいきたいのは、次の3点になります。第1は、労働契約の基本原則についてです。労働契約法には、労働契約の基本原則が条文化されています。最初に労働契約の基本原則について抑えたいと思います。第2は、労働契約上の権利義務についてです。労働契約を締結することにより、労働者は使用者の指揮命令下で働くことを求められます。ここでは、労働契約上の権利義務について検討していくことにします。第3は、懲戒処分についてです。指揮命令下に基づいて労働者は働くということになりますが、労働関係においては、使用者が懲戒処分、すなわち労働者に対して罰を与えることも許されることになっています。使用者が懲戒処分を行う権限を有するのはなぜなのでしょうか。懲戒処分の有効性の判断方法を含め、ここで見ていくことにします。

 

第4回で皆さんに考えてほしいポイントは、労働契約上の権利義務を取り扱う上で、服装や髪型などを制約する業務命令についてです。使用者は労働者に対して業務命令を出す権限を有しますが、髪型や髭などの労働者の外見に関わる事項についても業務命令で制約することはできるのでしょうか。この事例を検討することで、使用者の業務命令権の在り方について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

 

 

 

 
 
 

自閉症スペクトラム障害支援では早期介入、学習能力向上、2次的問題予防が鍵。適応スキル習得と精神障害対策も重要。(障害者・障害児心理学第12回)

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最後に、自閉症スペクトラム障害の支援をする上で心に留めておくべきことを話します。自閉症スペクトラム障害は、早期からの介入がとても重要です。学習することができる、または得意な自閉症スペクトラム障害者は、障害により困難の生じる場面を、その学習したスキルを使い乗り越えていきます。

そのため、教えられる能力、つまり学ぶ能力を向上させていくことが鍵となります。そして、学ぶ内容は、自閉症の重症度、存在する障害、特に知的障害の有無、環境、年齢により変えていかなければならず、また変わっていかなければなりません。

自閉症スペクトラム障害者は2次的問題を持ちやすいということも心に留めておく必要があります。自閉症スペクトラム障害の2次的問題とは、例えば、対人関係がうまくいかず、いじめの被害を受けたり、不登校や社会的ひきこもりになったり、保護者や周囲の期待に応えられず怒られ続けたりして、うつや不安障害などの精神障害を発症するというようなことです。年齢を重ねながら自己理解を深め、同時にその時に生活している環境の中で必要な適応スキルを学び、それらを使いながら生活を行う中で、自分が成長していると感じ、生活していくことがとても重要です。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害治療の目標は症状低減、学習促進、問題行動改善。効果的な介入にはABAやソーシャルスキルトレーニングが含まれる。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

様々な支援の方法があることを知る。

 

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次は、自閉症スペクトラム障害への治療のゴールについて、今のところ、主に1. 中心的な症状、社会的なコミュニケーションと相互作用の欠如、情動反復的な行動、興味と併存的な症状の低減、2. 学習能力の促進と適応、行動スキルの獲得の最大化、3. 機能的スキルを妨害する問題行動(チャレンジングビヘイビアと呼ばれる)の改善があります。そして、治療のための介入は、教育、発達的介入、行動的介入の中で実施されます。

アメリカのナショナルオーティズムセンターは、22歳以下の自閉症スペクトラム障害者に対し、十分なエビデンスがある効果的な14の介入を紹介しています。ほとんどは、応用行動分析(Applied Behavior Analysis, ABA)によるものであり、行動心理学(Behavioral Psychology)、積極的行動支援(Positive Behavioral Support)に関連しています。発達心理学(Developmental Psychology)、障害児教育(Special Education)、言語理学(Speech-Language Pathology)による介入も増えています。

自閉症スペクトラム障害に有効な介入は、1. 行動的介入、2. 認知行動的介入、3. 包括的行動治療(幼児対象)、4. 表出言語訓練、5. モデリング、6. 自然な教授方略、7. ペアレントトレーニング(保護者へのトレーニング)、8. ピアトレーニング(友達へのトレーニング)、9. ピボタルレスポンストレーニング(PRT)、10. スケジューリング、11. セルフマネージメント、12. ソーシャルスキルトレーニング、13. 物語準拠型指導が効果的であるとされています。また、ナショナルオーティズムセンターによると、22歳以上の自閉症スペクトラム障害のある人を対象に確立されているのは、行動的介入のみです。

行動的介入とは、適応的な行動を増やし、問題行動(チャレンジングビヘイビア)を減少させる応用行動分析によるものを指します。自閉症スペクトラム障害の臨床ニーズは、認知、言語、運動動作、自立、社会性、情動、集団適応、問題行動、余暇活動、精神的ウェルビーイングなど広範囲の領域に及び、またそれらは成長に伴って変化します。幼児期が終わり学童期になっても、対人関係や社会性に関する適応や、問題行動や精神疾患の併存に対して、その都度状態に合わせた支援が必要になります。

自閉症スペクトラム障害に対する最もポピュラーな行動的アプローチは、応用行動分析によるものです。応用行動分析は、社会的に重要な行動を改善するために行動原理を組織的に応用し、実験を通じて行動の改善に影響した変数を同定する科学と定義されています。臨床的には、応用行動分析は教えるための技術であり、教える内容は対象者によって異なります。

就学後以降の応用行動分析によるアプローチは、学習のための教育的アプローチと、問題行動や併存症に対する治療的アプローチに大別できます。教育的アプローチには、読み書きを含む各教科の指導、学校適応のための社会的スキルの指導、家庭生活スキル(食事、着替え、入浴、清掃、金銭管理など)や、地域生活スキル(介護、公共施設の利用、交通機関の利用、地域行事への参加など)への指導が含まれます。応用行動分析の基本的技法には、タスクアナリシス、チェーン化、システマティックプロンプティングとフェーディング、ディスクリートトライアルトレーニング、ビデオモデリングなどがあります。

また、攻撃行動、自傷行動、破壊的行動などの問題行動(チャレンジングビヘイビア)に対しては、機能分析と機能的コミュニケーショントレーニングによる適切な代替行動を教えるアプローチが効果を上げています。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害理解に心の理論、ミラーニューロン、中枢統合、実行機能、手続き学習の障害を解説。心理学的視点から。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

様々な障害の種類があるのだなあと知る。

 

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次は、心理学の観点から自閉症スペクトラム障害の理解について話しましょう。

自閉症スペクトラム障害の原因が脳のどの機能障害にあるかについては、現時点で明確ではありません。また、脳科学の理論モデルの基となる心理学的理解においても、すべての症状を説明できるモデルはまだ存在しません。しかし、自閉症スペクトラム障害の症状を部分的に説明しようとしている理論モデルがあります。これらは、自閉症スペクトラム障害者の生活におけるさまざまな場面での理解に役立つと思われます。

まず、「心の理論」(Theory of Mind)です。これは、他人の思考や感情を想像する能力を指し、人が周囲の世界を理解し、背後にある意図、願望、希望、感情などを捉えることを意味します。この能力が欠如していると、人は他人の行動を表面的にしか解釈できません。自閉症スペクトラム障害では、他者の信念を推定し、その推定に基づいて他者の次の行動を予測する「他者理解」の能力が制限されているとされます。

また、「ミラーニューロンのシステム障害」は、模倣の障害を引き起こし、他者の動きや感情を自らの情動システムで共有する共感の障害も想定されています。

次に、「中枢統合(セントラルコヒーレンス)の障害」です。これは、多様な情報から中心的で主要な情報や概念を選択的に抽出し整理する能力です。自閉症スペクトラム障害の場合、全体を統合し意味を見出すことに困難があり、部分的な情報処理に偏りが見られます。例えば、ジグソーパズルを組み立てる際には、ピースの形状には注目するものの、絵柄の関連性を見落とすことがあります。

「実行機能(エグゼクティブファンクション)の障害」も重要です。目的を達成するために計画を立て、方略を維持する能力がこれに該当します。自閉症スペクトラム障害では、この能力の障害により、目先の欲求を後回しにすることが難しく、障害の程度が重度であるほど問題が顕著になります。

最後に、「手続き学習(プロセデュアルラーニング)」の問題があります。自閉症スペクトラム障害者は、具体的な事実に関する記憶は良好ですが、学習した内容を繰り返しによって自動化し、必要に応じて検索する「手続き学習」に障害があることが知られています。これにより、実用的な技能の適用に困難を抱え、時にパニック状態になることがあります。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの特徴を発達段階別に解説。エコラリア、社会的相互作用の困難、情動共有の欠如を含む。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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では次に、発達段階別に自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが見せる特徴について話します。自閉症スペクトラム障害の特徴は年齢や成長とともに変化し、症状の程度による個人差も大きいですが、発達段階別に比較的よく見られる特徴を、印刷教材の表1、表2、表3に示しました。

まず、乳児期には、視線をそらす、顔をあまり見ない、後追いをあまりしないなどの特徴があります。これらは対人関係における障害の一例と言えます。親が視線を向けている対象に自分の視線を合わせないことは、共同注意の欠如と言えます。抱っこした時にしっかりとしがみつかない、抱っこした時の体が重く感じる、社会的な微笑が少ないなどは、情動の共有の欠如の表れと考えられます。1歳頃には、発語が少なく、その段階で期待される言葉を話さないことが多いです。

次に幼児期です。この期には、周囲への興味が薄く、視線を合わせようとしない、他の子どもへの興味がない、共に遊ぼうとしない、名前を呼ばれても振り返らない、興味のあるものを指差して人に何かを伝えようとしないなどの特徴が見られます。定型発達の子どもは、約2、3ヶ月頃から指差しを使い、興味のあるものを指してそれを人に伝えようとしますが、ASDの子どもにはこれが見られません。彼らは主体的に大人と共同で遊ぶことが少なく、受動的です。このように、周囲への興味が薄く、コミュニケーションを取るのが困難な特徴が見られます。知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害の子どもは、言語の遅れやエコラリア(オウム返し)などの特徴があります。エコラリアには、すぐにオウム返しをする即時性エコラリアと、しばらく時間が経ってからオウム返しをする遅延性エコラリアがあります。会話をする際には、一方的に自分の言いたいことだけを話したり、質問に対してうまく答えられないことがあります。これは、適切な相互作用の困難さを示しています。定型発達の子どもが友達とのごっこ遊びを好むのに対し、ASDのある子どもは、ごっこ遊びや振り遊びなどに興味を示しません。これは想像力の障害と言えます。

さらに、幼児期から強いこだわりを見せ始めます。例えば、興味のあることに関して同じ質問を繰り返したり、既に結果が分かっている行動を何度も繰り返します。これは、結果ではなく方法や手順へのこだわりです。また、日常生活においても特定のルーティンや順序へのこだわりが見られ、何かがいつもと違うと混乱し、パニックになることがあります。

幼児期が終わり学齢期に移行すると、集団に馴染むのが難しいという特徴が見られます。同年代の友人関係が少ない、周囲への配慮が薄く、自分の好きなように物事を進める傾向があり、人との関わりが限定的で、何かしてほしいときにのみ交流が見られます。基本的には一人遊びを好み、臨機応変に対応するのが苦手です。したがって、ルールが明確に決められている状況では活き活きと活動できますが、そうでない場合には、状況に応じた対応が非常に苦手です。さらに、小学校の段階では、「どのように」「なぜ」といった説明が苦手な傾向があります。

小学校を卒業し、思春期から成人期に移行すると、不自然な話し方、他人の感情や気持ちを読み取るのが苦手、雑談が苦手といった特徴がよく見られるようになります。そして、興味のある分野にはとことん没頭します。

 

 

 

自閉症スペクトラム障害の診断と評価にはADOS, ADI-R, CARS等の検査が用いられ、感覚処理異常の評価も重要です。(障害者・障害児心理学第12回)#放送大学講義録

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次に、自閉症スペクトラム障害の診断と判断のための検査についてお話しします。

自閉症スペクトラム障害の診断や疑いの判定、症状の把握のために使用される検査を紹介します。診断に用いられるものとして、まずADOS(Autism Diagnostic Observation Schedule)があります。ADOSは、言語と非言語コミュニケーション、相互的対人関係、遊び、創造力、情緒的行動と限定的興味、その他の異常行動の特徴的な側面の評価、DSMの診断基準に基づく自閉症スペクトラム障害の判定、自閉症スペクトラム障害の症状の程度の判定ができます。次にADI-R(Autism Diagnostic Interview-Revised)です。精神年齢が18か月以上であれば、幼児から成人まで幅広い年齢に対応しています。

DSM-IVの診断基準である相互的対人関係の質的異常、意思疎通の質的異常、限定的、反復的、情緒的行動様式に焦点が当てられ、自閉症スペクトラム障害の判定を行うことができます。CARS(Childhood Autism Rating Scale)もよく用いられます。

2歳以上の対象者に実施でき、言語水準などの機能レベルに関わらず評定できます。観察、面接、その他の資料に基づく包括的な情報を使用します。

スクリーニングに用いられるものとして、代表的なものはPARSです。自閉症スペクトラム障害の発達行動症状について、主要な養育者と面接し、その特性、症状の可能性と程度を評定します。対人コミュニケーション、こだわり、情緒、行動困難性、過敏性の評価を行うため、57項目から構成されています。

DSM-5から診断基準Bの1つの症状に感覚処理の障害が加えられました。このことから、感覚異常の判定の必要性が高まりました。そのために用いられるのは、SP(Sensory Profile)です。聴覚、視覚、触覚、平衡感覚などの感覚に関する125項目の質問票に保護者と本人が記入し、感覚特性を把握します。結果は、低登録、感覚探求、感覚過敏、感覚回避に分類できるようになっています。知的能力については、自閉症スペクトラム障害に特化された知能検査はありません。他の発達障害や知的障害と同じように、ウェクスラー知能検査や田中ビネ知能検査などが使われます。認知処理については、D-KEFS(Delis-Kaplan Executive Function System)やKABC(Kaufman Assessment Battery for Children)などが使用されます。言語能力の測定には、ITPA(Illinois Test of Psycholinguistic Abilities)などがあります。また、社会生活能力に関してはバインランド適応行動尺度が使用されます。特別支援学校では、知能検査が行えない子供に対しては、SM(Social Maturity Scale)社会生活能力検査を用いることもあります。