公共事業の改善におけるファンクション

 大手建設コンサルティングパシフィックコンサルタンツ株式会社の横田尚哉さん*1による問題解決本。問題解決を取り上げた本は書店のビジネス書コーナーにいくつもありますが、ほとんどが経営コンサルタントの経験者が書いています。それに対し、この本はものを作る現場に一歩近いという点で、ワンランク違うと感じました。とはいえ、この本ではパシフィックコンサルティングの具体事例は全く登場しません。理工系専門図書という感じでもなく、どんな業務に関わる人でも活用できる本です。問題解決にあたって、本質的かつ実践的な考え方について書かれているからです。

 私は、公共事業の設計にずっと携わってきた、一介の建設コンサルタントです。必要なものを作り、必要でないものは作らない。ただひたすら、このことに努めてきました。
まえがき より引用

 現在の日本の世論において、公共事業は無駄ではないかと思われがちです。建設業界に関わっている人はその状況のなか、社会に貢献できるもの提供をするために日々業務に取り組んでいるのだと感じています。個人的には、その点でこの本は信頼できるように感じたため購入に至りました。
 最初に読んだときの印象では、この本は経営コンサルティング系の問題解決本ほど整理されてはいないように思いました。しかし、自分が置かれている状況においてどう行動するか考えたとき。参考になることが多く書いてありました。経営コンサルティング系問題解決本ではやや説明不足な点を、うまく補完してくれます。

解決手段ばかりを考えるのではなく、改善点に大きなヒントがあるのです。
(P.31)

 「問題解決がうまくいかない4つの理由」という章において、理由のひとつとして「解決手段を一生懸命探している」ということが書いてありました。解決手段とは、主に事例や文献など、問題の「外」にあるものと書かれています。一方で、改善点とは問題の「内」にあるものだと書かれています。
 多くの人は解決手段ばかりを探してしまうように思います。自分にもその傾向があります。だから、いわゆる問題解決のビジネス書がたくさん出版されて売れるのだと思います。この本では、改善点をみつけるについても詳しく書かれており、その点が参考になりました。地味で難解と感じていた問題の「内」へのアプローチ、大切に考えて行動したいです。