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2005-12-21

[][] 大阪地裁平成17年12月8日判決(その2)

NOVA商品化契約解除事件*1

(関連リンク:http://ootsuka.livedoor.biz/archives/50246275.html


本件の面白さは、上記大塚先生のブログのコメントにもあるように、

「キャラクター商品化契約交渉場面を伝える素材として示唆に富む事案」

という点に尽きる。


本件では、被告(NOVA)と原告(サクラインターナショナル)との間で

「継続的な商品化権許諾契約が成立したか否か」が最大の争点となっているため、

当事者間でのやり取りを詳細に認定することで

当事者意思を探っていく必要が当然に出てくるのだが、

原告・被告双方の主張及び認定事実からは、

契約交渉の“駆け引き”も垣間見ることができ、

商品化実務担当者にとっては“良い教材”になりそうである。


なお、結論としては、

「未だ契約交渉の一環にとどまる」として、契約の正式な締結には至っていない、

とされた。

 本件での本件許諾契約締結に向けた当事者の行動を見ると,被告は,原告サクラと被告との間で契約内容の協議が始まった当初から,原告サクラが電子メールによって概略的に契約内容の提案をした(甲58)のに対し,被告は契約書案(乙2の1契約書案)を送付する形で返答をしており,その後も協議の進展を踏まえて契約書案(甲1契約書案とそれを微修正した乙2の4契約書案)を送付しているのであって,甲1契約書案については被告の法務部が関与して最終確認も行っているのであるから,被告としては,契約を正式に締結するに当たっては,社内各部署でチェックを受けた上で契約条項を細部まで確定し,それを契約書として完成して調印すべきものという意思を有していたことは明らかである。そしてまた,原告サクラも,被告から提示された契約書案に対して,修正案(乙2の2契約書案,甲2契約書案)を提出する形で契約条項の詰めに向けた協議を行っているのであって,やはり契約書の作成・調印を前提とし,それに向けた行動をとっていたということができる。(太線部筆者)

 このように,当事者が,契約書を作成し調印することによって契約を締結することを予定している場合においては,調印に至る過程での当事者間の口頭あるいは文書によるやりとりは,いかに主要部分について実質的に合意がなされ,一部それに則った行動がとられていようと,未だ契約交渉の一環にとどまるのであって,契約の正式な締結には至っていない,と解するのが相当である。

ある程度の規模の会社であれば、

契約交渉に携わる当事者間である程度の合意がなされていたからといって、

安々と「契約の成立」が認められては困る、

というのが実態であるから、

大阪地裁の判断は、大企業にとっては“優しい”解釈といえるだろう。


もっとも、実際に、

契約上のルールを前提とした諸手続やロイヤリティ支払が継続して行われていた、

ということを重視すれば、異なる判断に至る可能性も否定できない。


本件では、原告側が提案していた「条項の追加」が「些細なものではなかった

という点も、「契約不成立」と判断した要素として挙げられているが*2

後になってみれば、その提案を被告が受け入れようが受け入れまいが、

「契約が成立してさえいれば」

(本判決よりは)原告にとって有利な結論になる可能性は高かったのだから、

原告側にとっては、納得のいかない面もあることだろう。


アパレル商品を対象とした商品化契約は、

“タイミング”を図ることが極めて難しい、というのは良く知られた話で、

.掘璽坤鷯戦に合わせた「展示会」のタイミングと、

∪源坤薀ぅ鵑魍諒櫃任るかどうか、が重要になる。


下手をすると商品が並ぶのは半年後ということもありうるわけで、

そうなると、“ナマモノ”であるキャラクタービジネスの商機に

乗り遅れてしまう、ということも十分にありうることである。


だが、本件は、平成15年4月に協議を開始して、

同年6月には商品が店頭に並ぶ、という極めてスピーディな展開を見せており、

ライセンシーにとっては“してやったり”の案件だったはずだ*3

契約を後手に回してでも、商機を逃すまいとしたライセンシー側の行動は、

実務担当者としては責められない。


逆に言えば、そのように“先を急いだ”ゆえに、

「品質面の問題」だの、その他の感情論的な問題だのが後から噴出してきて、

短命な取引に終わってしまった可能性も否定できない*4


最終的に裁判所がどのような判断を下すのかは分からないが*5

つくづく商品化ビジネスというのは難しい商売だと思う。


なお、余談だが、

サクラインターナショナルは、商品化契約のライセンサーとして、

ユニクロを提訴したことで話題になった会社でもある。

http://www.japandesign.ne.jp/EXPRESS/050302/005.php


江戸の仇を山口で・・・ということになるのだろうか。

こちらの方も注目したい。

*1大阪地判平成17年12月8日・http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/caa027de696a3bd349256795007fb825/a6b58b96c1bd6e0a492570d500202da9?OpenDocument

*2:なお、ここでは「ロイヤリティー改訂協議条項」と「著作権侵害情報のライセンシーに対する開示義務付け条項」が挙げられている。確かに前者は一筋縄では結論が出ない内容であるが、後者の条項は、一般的に盛り込まれることが多い条項であり、さほどもめることもなかったように思う。

*3:現に、判決に示されている販売金額、ライセンス料も相当な額に上っている。

*4:被告側は契約を締結しなかった理由として、「商品の品質」と「不誠実な言動」を挙げているが、後者に関しては“取ってつけた”ような印象が否めないし、前者に関しても、本件で共同原告となっている「アウトバーン」という会社自体は、良質な商品を提供することで有名な業者だから、次のシーズンまでにはある程度の改善は見込めたはずである。契約締結に至らなかった背景には、たぶんに他の要素も影響しているように思われる。

*5:本判決の判示によっても「信頼利益」の賠償が認められる余地はあるように思われ、原告は生産ラインの確保や、販売宣伝の準備等でそれなりの費用を負担しているはずで、それをもって「信頼利益の喪失」を主張すれば、部分的に請求が認容される余地はある。

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