企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2006-01-16

[][] 何のための有給休暇

有給休暇 計画取得義務づけ検討」という見出しが、

今朝の日経朝刊の1面トップを飾っていたのを見て*1

またか・・・と思う。


日本の会社において年休の取得率が低い、ということは、以前から指摘されており、

2004年の取得率は46.6%、と過去最低を記録したことから、

厚生労働省は「労働者の時期選択権を補う仕組みとして」

「企業があらかじめ取得計画を作る仕組みが有効と判断した」そうである。


記事にもあるとおり、現在でも

労使の合意により、あらかじめ有給休暇の取得日を決めておくことは可能だが、

導入されている箇所は限られている。


なぜかと言えば、工場労働者ならともかく、

ある程度の裁量をもって働くことを前提とするホワイトカラーにとって、

「みんな一斉に働いて、みんな一斉に休む」などという制度は

極めてナンセンスというべきものだからである。


仮に、各企業がお盆や正月休みをはさんで、

計画的に有給休暇を付与するとすれば、

せっかく休んだところで、どこに行っても人ごみにぶつかり、

落ちついて休みを楽しむどころではない*2


ウィークデーに仕事に追われるホワイトカラーが一番幸せを感じるのは、

仕事を上手くやり繰りして、

誰も休んでいない時期に思い切った休みを入れた時なのだ。


周りに気兼ねして「自発的に有給休暇を取得しづらい」状況があることは否定しない。

だが、日頃から周囲の人以上に仕事をこなしていれば、

平日にぽっかり休みを入れたとしても、周りの目はそんなに冷たくない。

自分は“常習犯”だが*3、仕事に戻った後の“やりにくさ”を

感じたことはないし、

それで仕事の評価を下げられた、ということも(たぶん)ない。


逆に、年末、年度末、新年度早々、といった忙しい時期には、

ここぞ稼ぎ時、とばかりに有給どころか所定の休日も潰して仕事にいそしむ。

そのメリハリをいかにつけるか、に仕事の面白さがあり、

働くことの面白さがある。

どうメリハリをつけるかは、一人ひとりの労働者が考えるべきことで、

会社から押し付けられるものではないし、

会社がすべてのホワイトカラーの繁閑を考慮して計画的に有給を付与することは

不可能である。


自分の裁量で、自分の意思で休みをとれる、というところに

有給休暇制度の意義があるのであって、みんな一斉に休むのであれば、

週休三日制でも導入した方が、まだましだ。


労働法の研究者の方の中には、

「労働者の就労環境の改善」のために、計画年休制度の導入を説かれる方が多く、

今回の厚生労働省の方針も、そのような考え方の影響を受けているものと思われる。


厚労省は、研究会で「有給休暇制度」や「残業規制」に関して報告をまとめた上で、

今春にも労働政策審議会での議論に着手し、

労働基準法の改正案を2007年の通常国会に提出する考え」とのことだから、

おそらく、この線で決まっていくことになるのだと思う。


だが、企業の中で働いたことのない先生方や、

所詮は“ブルーカラーの代表者”に過ぎない労働組合代表が

“労働者を代表して”行う議論によって結論が出されたとしても、

承服しがたい思いは残る。


有給の取得率が低いのは、「周りに気兼ねして取れない」からなのか、

それとも、「会社で働いている方が楽」だからなのか、

そのあたりの検証すら、十分になされているようには思えない。


この記事には、加えて、「残業を抑制するために」

法定労働時間を超える部分のうち、

「一定時間数についてはそれに見合う休日を与える」制度を検討する、

とあるが、これまた噴飯ものである。


残業手当がもらえるのであれば、幾ら残業しても構わない、という人間は大勢いる。

問題は、「残業した分の賃金がきちんと支払われないこと」にあるのであって、

残業そのものが悪いわけではない、と自分は思っている。


「仕事はほどほどに、プライベートを大切に」という「思想」を

自分は別に軽蔑しやしないし、そういう思想をお持ちの方は、

気兼ねすることなく堂々と実践していただけば良い*4


だが、そういう生き方を社会的に強制するのはいかがなものかと思う。


多くの企業において、長時間労働は「命じられて」やるものではなく、

ホワイトカラー労働者が「自主的に」やっているものである。

「基本給」が低く抑えられている社員にとって、

残業手当は一種の「生活給」とも言うべきものであり、

それを当て込んで、半ば“計画的”に残業をやっている人も多い。

“いつも残業ばっかりで・・・”などとグチるのは、

“頑張ってる自分を見て見て〜”という思いの裏返しに過ぎない。


数字だけ見て、「残業時間が多いのはよろしくない」と判断するのは、

実態を知らない政策立案者が侵しがちな誤り、というほかない。


残業規制を課すことによって、最も喜ぶのは、

無駄な残業代を払わなくてよくなった「使用者」であって、

「労働者」ではない、ということに、早く気付いて欲しいものだと思う。


休みたい時に休む。働きたい時に働く。

そういった労働の「自由度」を向上させることこそが

ホワイトカラーにとっての目指すべき政策の姿というべきであり、

上記のような「規制強化」は、時代に逆行する試みのように思えてならない。


政策立案者には、少なくとも、ホワイトカラーを「規制」の対象から外す、

といった配慮をしていただくよう望みたい*5

*1:日経2006年1月16日付朝刊

*2:喜ぶのは、ピーク料金期を拡大できる輸送事業者や旅行業者くらいだろう。

*3:7月の上旬に1週間休みを入れて北海道一周したり、9月に西海岸5日間の旅に出かけてみたり・・・。

*4:まずは、旗振り役の厚生労働省の役人の方々からどうぞ・・・(笑)。

*5:以上のような流れでいくと、本記事でも導入が示唆さられている「ホワイトカラーエグゼンプション」(一定の職種の者を対象に残業や休日労働に対する割増賃金規制を撤廃するもの。現在導入されている「裁量労働制」もその一環ということができる。)制度は両手を挙げて歓迎したいところであるが、当然ながら、この制度を導入する前提として、「標準的な残業を行った状態」に匹敵するだけの基本給が確保される必要があり、個別企業の“賃金相場”そのものに公的な介入を行うことが難しい現状では、導入に一抹の不安が残る。

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