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2006-01-20

[][] ライブドア社は「犯罪」を犯したのか?

さて、ここに来ていろいろと「解説」されるようになった、

ライブドア社の「違法」行為の数々。


だが、中には本当に「違法」といえる行為なのか、

疑わしいものもあるように思える。


自分自身、企業会計や金融取引の専門家ではないので、

いかにも心もとないのだが、

以下、簡単にコメントしておくことにする。


 企業買収の際の「偽計」行為について

東証マザーズ上場の関連会社、ライブドアマーケティング(当時バリュークリックジャパン)は04年10月、出版業のマネーライフ社を株式交換で買収すると公表したが、実際には公表前にライブドア側が実質支配する投資組合から買収先企業の株主に現金を渡して事実上、傘下に収めており、開示した内容が虚偽だった偽計取引の疑いがもたれている。

日経新聞1月17日朝刊・1面)

これが、最初に浮上した「ライブドアグループ」の疑惑である。

その後、ライブドア本体も投資事業組合を通じて

同種スキームによる企業買収を行っていたことが判明した。


だが、これが「偽計取引」にあたるかは疑わしい。


ライブドアマーケティングと当該組合との間では、

公表されたとおり「株式交換」が行われているから、

それでも「偽計」というためには、

「買収先企業に現金を支払った時点でライブドア傘下に入った」

いえる必要がある。


しかし、当該「投資事業組合」に対して出資していたのは

ライブドアだけではない上、組織体としても、同組合は、

ライブドアないしそのグループ会社とは明確に区別される存在である。


そして、この点については、ライブドア側も

19日午前の「社内調査結果発表」において反論しており、

http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=120645&lindID=1

「(筆者注:ライブドアファイナンスが出資している投資事業組合と買収先に現金を支払った投資事業組合とでは)それぞれ業務執行役員が異なっているとの理由からLD(筆者注:ライブドア)グループ会社として連結決算に組み入れることは妥当でないという判断をいたしました。」

と述べている*1


「投資事業組合」といっても、

節税目的で作られた「紙の上の存在」に過ぎない場合がほとんどだろうし、

狭い世界の中での話だから、出資構成は違えど、

事実上買収元の意思どおりに動いてしまう、ことは考えられよう。


だが、だからといって、一体性を簡単に認定して良い、

ということにはならないし、複雑な投資スキームを勘案すると、

それを認定するのも困難なのではないかと思える。


ついでにいえば、

ここでは「真実を公表しなかったこと」と、

「虚偽の事実を公表したこと」の二点が問題視されているが、

この二つの行為のタイムラグは、僅か半年程度に過ぎないのだから、

(仮に一体性が認定されるとしても)

単に「プレスリリースするのが遅れた」というレベルの問題に、

過ぎないようにも思われる。

形式的に証取法に反するとしても、違法性が高いとは言い切れない事案

といえるのではないか。


 「粉飾決算」について

ライブドアは2003年以降、企業の買収攻勢を強め、手持ち資金を用意しなくても買収できる株式交換を多用した。しかし実際には、交換名目で発行した自社株は買収先企業の株主らには渡さず、同社が支配下に置く投資事業組合を通じて売却し、値上がり分の差益を稼いでいた。」(日経新聞1月20日朝刊・1面)

他にも、合併前の買収先から、

コンサルティング料名目で数十億円を吐き出させ、

ライブドア本体の利益として計上した、という手口も用いられたと言われている。


これが証取法違反(有価証券報告書の虚偽記載)にあたる、

というのが、検察側の考えらしい。


確かに、企業再編に伴う資本の増減は資本取引にあたり、

P/Lに反映される損益取引とは一線を画すものである。

数百億円の資産を持つ企業を買収したとしても、

合併によって増えた資産分を利益として計上することができないのは

いうまでもない*2


だが、このような利益計上の手口は、

これまで「粉飾決算」として騒がれてきた事例とは異なる。


山一證券やカネボウ等で問題になったのは、

「債務隠し」によって、財務状況の悪化を隠す行為であったし、

ベンチャー等で問題になったのは、ありもしない取引を偽装する行為であった。


あるものを隠す、あるいは何もないのをあるように見せかけると、

結局、どこかで辻褄が合わなくなって、

企業が「突然死」するおそれがある。

したがって、このような行為の違法性はきわめて高いといわざるを得ない。


しかし、ライブドアの場合、

実際に存在するキャッシュ(資産)を利益に“付け替えた”だけである。


詳細は紙面からは分からないので、憶測でしかないが、

合併前に買収先の資産を本体の利益に付け替えたとしても、

合併後のB/Sにそれが的確に反映されていれば、

(流出した分を勘案して、買収先の資産をプラスしていれば)

実際には、大きな狂いは生じない。


投資事業組合がライブドア株を売却して得た利益を付け替えた行為にしても、

実際に株式売却で得た利益を会計処理上どのように扱うか、

という問題にすぎず、存在しない“利益”を計上したわけではない。


P/Lは、企業の一定の時点における“瞬間風速”を見るものであり、

風が吹いていないのに吹いているように見せかけることで、

「あたかも本業が好調で利益を上げている」と、

投資家に誤解させたことが、株価形成をゆがめた可能性があるのは事実。


だが、これまでの他企業の粉飾手口に比べると、

偽りの度合いは小さいように思え*3

そのために実質的な違法性は乏しいのではないかと思う。


いずれにせよ、本件はエンロン級とまではいかないまでも、

会計制度をよく研究して“練られた”方法であることは間違いない。

そして、これが証取法に違反するかどうかは、

取引の実態をより吟味しなければ、断定できない事例のように思われる*4


計算書類にどういう数字を載せるか、は

一義的に決まるものではない。


会計基準とにらめっこしながら、

投資家に対していかに数字をよく見せるか、

(あるいは税務署に対して数字を悪く見せるか)

という会計部門の知恵で作られているのが、

現在の各企業の財務諸表なのだ。


そういった奥の深さに思いを馳せることなく、

単に「粉飾」とのレッテルを貼って、

感情的なライブドア叩きをすることには、

大いに問題があると考えている。


ここまで騒ぎが大きくなった以上、

ライブドア経営陣が証取法違反で起訴され、

何らかのペナルティを受けることは避けられまい*5


だが、有罪にするにしても、

今後、実際にライブドアが何を行ったのか、

そして、そのどこが証取法違反にあたるのか、

ということをより明確にしていかない限り、

今回の事件の教訓は次代に生きてこない、

そう思うのである。

*1ライブドアは加えて、仮に連結対象とする判断をした場合においても、「東証の適時開示規則に照らせば、開示をした可能性は非常に低い」とも主張する。

*2:あくまで逆のれん代が生じた時に営業外利益で計上しうるにとどまる。

*3:金額の問題ではなく、単なる「付け替え」に過ぎない、という点において。

*4:長年企業会計をやっている友人も、「グレーだがクロとは言い切れない」難しい事案だとコメントしていた。

*5:虚偽記載、風説の流布、内部者取引、といった証取法の規定には解釈の幅があるため、強引に起訴に持ち込んだとしても、検察側が一定の「成果」を得ることは可能であろう。

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