企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2007-12-18

[][]さらばシェーン。

ローマの休日」の衝撃からおよそ1年半。


「シェーン」事件が最高裁判決にたどり着き、そして著作権の消滅が確定した。


 最三小判平成19年12月18日(H19(受)1105号)*1

最高裁で弁論が開かれなかった時点で結論は見えていたのだが、案の定上告棄却


判決は、平成15年改正著作権法で設けられた経過規定

「改正後の著作権法・・・第54条1項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による」

の中で繰り返し用いられている「この法律の施行の際」という文言について、以下のような解釈を示した。

「本件経過規定中の「・・・の際」という文言は、一定の時間的な広がりを含意させるために用いられることもあり、「・・・の際」という文言だけに着目すれば、「この法律の施行の際」という法文の文言が本件改正法の施行日である平成16年1月1日を指すものと断定することはできない。しかし、一般に、法令の経過規定において、「この法律の施行の際現に」という本件経過規定と同様の文言(以下「本件文言」という。)が用いられているのは、法令の施行日においても継続することとなる旧法令下の事実状態又は法状態が想定される場合に、新法令の施行日において現に継続中の旧法令下の事実状態又は法状態を新法令がどのように取り扱うかを明らかにするためであるから、そのような本件文言の一般的な用いられ方(以下「本件文言の一般用法」という。)を前提とする限り、本件文言が新法令の施行の直前の状態を指すものと解することはできない。所論引用の立法例も、本件文言の一般用法によっているものと理解できるのであり、上告人らの主張を基礎付けるものとはいえない。」(4頁、太字筆者)

そして、結論としては、「この法律の施行の際」とは、

「当該法律の施行日を指すものと解するほかな(い)」(4頁)

としたのである。


こうなれば、もはや上告人の主張が受け容れられようがなく、平成15年12月31日をもって存続期間が満了し消滅した、と解するほかない。


また、上告人が主張した「立法者意思」についても、判決は

「本件経過規定における本件文言について、本件文言の一般用法とは異なる用い方をするというのが立法者意思であり、それに従った解釈をするというのであれば、その立法者意思が明白であることを要するというべきであるが、本件改正法の制定に当たり、そのような立法者意思が、国会審議や附帯決議等によって明らかにされたということはできず、法案の提出準備作業を担った文化庁の担当者において、映画の著作物の保護期間が延長される対象に昭和28年に公表された作品が含まれるものと想定していたというにすぎないのであるから、これをもって上告人らの主張するような立法者意思が明白であるとすることはできない」(6頁)

と、あっさり退けている。


我々はついつい、ジュリストやNBLに掲載された「立法担当官解説」などを見て、「これが立法者意思だ」などと早とちりしがちなのであるが*2、立法行為を行うのはあくまで国会であって、法案を提出する内閣(諸官庁)ではない、というのは、よくよく考えれば当たり前の話なのであり、今回の最高裁判決はそれをあらためて明確にしたものに過ぎない。


以上のように、改正法の施行からまもなく4年が経とうとする今になって、「シェーン」の著作権の消滅が高らかに宣言されたわけであるが、ここで気をつけないといけないのは、本判決の射程が及ぶのは、あくまで

「本件映画を含め、昭和28年に団体の著作名義をもって公表された独創性を有する映画の著作物」

に限られる、ということである。


以前、「チャップリン映画事件」*3や「黒澤明映画事件」*4の判決で紹介したとおり、最近の映画会社側の法廷戦術は、「著作者は映画監督個人だ」と主張して権利存続期間の起算点を後ろにずらす、というものであり、その結果昭和28年どころか1919年公開の作品にまで遡って保護の恩恵を享受できるという事態が生じている。


「シェーン」事件において最後までこのような戦術が取られなかった背景事情は筆者の知るところではないが、少なくとも今後争われる映画作品については、「昭和28年公開だから」という単純な理由で格安DVD業者が勝てるとはとても思えない。



下級審判決の段階では絶大な注目を集めていた事件の価値が、その後の状況の変化によって失われ、「最高裁判決」が出る頃には・・・、という状況は司法の世界では決して稀なことではないのだが、僅か1年半でのこの変化。


関係者にとっては何とも気の毒な展開だなぁ、と思う次第である。

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