「公図」と著作権

著作権絡みの興味深い記事として、朝刊に掲載されていたこのニュース。

「法務局が地図業者の作製した地図「土地宝典」を利用者に貸し出して局内でコピーさせていたのは違法として、著作権者が国を訴えた訴訟の判決で、東京地裁は31日、「土地宝典には記載する情報の取捨選択や表現上の工夫がある」として、国側の著作権侵害を認めた」(日本経済新聞2008年2月1日付朝刊・第42面)

約1億4000万円の請求のうち、認容されたのは僅か600万円程度のようだから、原告の側としての決して“お得な”訴訟ではなかった、ということになろうが、それでもこの種の図面集について著作物性が認められたことの影響は大きい、と言わざるを得ない。


生の「公図」なんて、素人が見てもイマイチ良く分からない代物だから(線一本一本の意味を理解するにも時間がかかる)、それを見やすく編集したところに創作性を認める余地があるのは事実だとしても、「法務局の利用者が使う」という使用用途を考えれば、露骨な権利行使を認めるのも好ましいとは思えないわけで*1、本判決でそのあたりにどの程度配慮がなされているのか、判決原文を良く読んでみたいと思う。


※追ってコメント予定。

*1:不動産業者が違法複製したのであればともかく、用地調査に来た一般の人が気軽にコピーできるようなサービスを提供すること自体に問題がある、とされたのでは法務局もたまったもんではなかろうに・・・。

男女賃金差別に対する違法判断

最近労働関係でトピックになる判決が目立つが、これも結構重要な意義を有する判決ではないかと思う。

「女性であることを理由に賃金差別を受けたとして、兼松の女性社員ら6人が同社に差額賃金や慰謝料など計3億8400円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁の西田美昭裁判長は31日、「男女の賃金差別を継続したのは違法」として、請求を棄却した一審・東京地裁判決を取り消し、4人について計7250万円の支払いを命じた。」(日本経済新聞2008年2月1日付朝刊・第43面)

これまで相当露骨な賃金・昇格差別でも、「公序」の壁に阻まれることが多く、上級審レベルでの救済事例は限られていたと記憶していたのだが、今回上記のような判断に至ったのは、

「兼松では事務職の女性社員が定年まで勤めても一般職の社員の27歳の賃金に達しなかった。」

という極端な露骨さゆえなのか、それとも差別が雇用機会均等法の本格施行後も長期にわたり継続していた、と言ったような事情があったのか(この点については記事に時期的な記載がないため何とも言えないが、推測される提訴時期等を勘案すると、比較的最近までこの運用が継続していたのかなぁ・・・と思ったりもする)、細かい事情は分からないが、高裁レベルで地裁判決が労働者側に有利にひっくり返った、という点でも、極めて興味深い事案であるのは間違いない。

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