「フリーコピーの経済学」

ちょっと前に出た本のようだが、日経新聞の書評欄に載っていたので一応ご紹介しておく。



書評欄の紹介によると、

「本書はインターネットにより情報配信コストが限りなく安くなる時代を想定し、新しいコンテンツ事業のあり方を展望した」

ものであり、

著作権が重視されたのは、出版や音楽制作のコストが高かったためだ。ネット配信で費用が劇的に安くなるなら、今の事業モデルを変えるべきだというのが本書の主張である。」
(以上、日本経済新聞2008年9月21日付朝刊・第22面)


そうである。


インターネットの普及に伴い旧来のビジネスモデルを転換すべき、という議論は良くなされるものの、それらの言説の理論的な裏づけについては、これまで十分に吟味されてきたとは言えないようにも思われる*1


その意味で、コンテンツ産業を研究ターゲットとしている新宅准教授と、「法と経済学」の論客として知られる柳川准教授が編者として名を連ねているこの書には何となく期待できるのあるが、実際のところはどうなのだろう・・・?



なお、最近経済学的分析がブームになっているように見受けられる保護期間の問題しかり、コンテンツビジネスの問題しかり、こと著作者との関係に関する限りは、経済合理性だけで答えを導くのが難しい面もあるのは事実で、理論的な裏づけを得ることによる効果もどうしても限定されたものになってしまうのは否めない。


だが、それでも、何も持たずに論じるよりはマシだろう・・・、と自分は思うのである。

*1:もちろん、実務の世界、学究の世界を問わず、意識的に、あるいは無意識のうちに分析を試みられた方はたくさんいらっしゃったと思うのであるが、分かりやすい形で世の中に出ていた、とは言えなかったように思う。

ささやかな宣伝と言い訳。

これまで特に紹介してはいなかったのだが、今年の6月から、技術評論社という出版社のご好意により、「gihyo.jp」の中の一コンテンツとして「ネットだから気をつけたい! 著作権の基礎知識」というタイトルの連載記事を掲載していただいている*1
http://gihyo.jp/design/serial/01/copyright


もともと、ITエンジニア向けの技術、ビジネス系連載記事が多くを占める「gihyo.jp」の中に、自分のようなものが書いた駄文を載せていただくのは申し訳ない限り。


せっかく声をかけていただいたので、と、二つ返事で引き受けてしまったものの、毎月締切間際になると、深い反省の念に駆られているのは言うまでもない。


ちなみに、連載当初考えていたコンセプトは、

ユーザーの視点から「著作権法のハードル」よりももっと高い「実務のハードル」を紹介したうえで、それをどうやって乗り越えていくか、という提案らしきことを行っていく。

というものだったのであるが、これまで4回の連載の中で果たしてどこまでそれに近付いているか、単なる消極的な「実務論」にとどまっていないか、といろいろ振り返って考えることも多い。



・・・というわけで、どこまで皆様のニーズに役立つかはわからないが、一応、毎月初めに更新、のペースで連載を続けているので、お時間のあるときに一度くらいは目を通していただけると嬉しい限りである*2



なお、こんな不自然な時期に宣伝エントリーをあえて載せた趣旨は、公式には「連載も4回を数え、ようやくおぼろげながら方向性が定まってきつつあるから・・・」ということにしておきたい。

*1:執筆者クレジットは「企業法務戦士F-JEY」。

*2:なお、本ブログの読者の方の中にも、すでに見つけてくださっている方がいらっしゃるようで、今更ではあるが感謝申し上げたい。

続きを読む
google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html