企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2009-04-10

[][]知財判例アーカイブ(H21.3.25〜H21.3.31)

4月に入ってからもバタバタしていて、なかなかまとまったエントリーを書けずにいるのだが、あまり放っておくと、ブログの趣旨からどんどん外れていきそうなので、新年度からは、筆者自身にとってのメモも兼ねつつ、興味深い判決へのリンク(&簡単な概要紹介)を定期的に掲載していくことにしようと思っている。


もっとも、裁判所の人事異動等によるブランクが明けて、一週間に数十件も判決がたまるようになってきてしまうと、フォローしきれなくなる可能性は大なのであるが・・・。


◆知財高判平成21年3月25日(H20(ネ)10084)

実演家の権利侵害差止請求控訴事件 第3部・飯村敏明裁判長

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090327115003.pdf


原告(被控訴人)アーティスト(「BRAHMAN」のメンバー4名)が、著作隣接権に基づき、被告(控訴人、有限会社イレブンサーティエイト)によるレコードの製造、販売差し止めを求めた事件の控訴審*1

被告側は、原告・被告間で原告らが本件レコードに対する実演家の著作隣接権を譲渡又は放棄することを内容とする合意が成立した、と主張していたが、裁判所はこのような契約の成立を否定し、「著作権者の意向に反して著作隣接権に基づく差止めは認められない」、「原告らの差止請求権の行使は権利濫用に当たる」といった被告側の主張もことごとく退けた(結論:控訴棄却)。

また、本件では、口頭弁論終結後、被告(控訴人)側から、「著作隣接権に基づく許諾を受けた」という趣旨の抗弁を追加するために口頭弁論の再開を求める趣旨の上申書が提出されたようであるが、裁判所訴訟手続の経緯等から、弁論再開の必要なし、と判断している。

大阪地判平成21年3月26日(H19(ワ)7877)

著作権侵害差止等請求事件 第21民事部・田中俊次裁判長

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090327103042.pdf


被告(大和ハウス工業、伸和エージェンシー)が作成した広告宣伝物に使われたイラストが、自己のイラストの複製、翻案物にあたる、として、原告が著作権、著作者人格権に基づく差止請求&損害賠償請求等を行った事件。


多数のイラストについて個別に検討しているため非常に長い判決文になっているのだが、結論としてはすべてのイラストについて「依拠して描かれたものと推認」しつつも、複製又は翻案したものとは評価できない、として、原告の主張がすべて退けられる形になっている。

判決の最後に、付言として、「裁判所としては和解を勧めたが当審では合意できなかった」という議論の経緯が記載されているのも興味深いところ。


大阪地判平成21年3月26日(H19(ワ)3083)

先使用権確認請求事件 第26民事部・山田陽三裁判長

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090401134445.pdf


「ケンちゃん餃子」という標章の使用について、被告の登録商標との関係で先使用権が認められるか、が争われた事件。

結論としては、東京都をはじめとした関東地方を中心としたエリア(1都11県)で、原告標章に周知性が認められる、として、原告の先使用権を肯定している。長年親しんできた自社の商品名の商標を、いつの間にか(悪意のない)第三者が取っていた、というケースも実務上は決して珍しくはないゆえに、周知性が認められる基準の目安等、事例判決として参考になるものと考える。


◆知財高判平成21年3月26日(H19(行ケ)10352、10353、10363、10364)

審決取消請求事件 第4部・田中信義裁判長

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090327144704.pdf


不正使用取消(商標法53条1項)審判で請求人(被告)の主張が認められたのを受けて提起された審決取消訴訟

裁判所は、使用者のみならず使用権設定者の責任も肯定した上で、審決の判断を維持した。


東京地判平成21年3月27日(H20(ワ)5826)

不正競争行為差止等請求事件 第46部・大鷹一郎裁判長

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090327152514.pdf


被告(有限会社横浜観光商会)が原告(有限会社p-collection)の販売商品(「もっこりBOMBER」)の形態を模倣した商品(「もっこりトゥカター」)を販売する行為が、不正競争防止法2条1項3号所定の不正競争行為にあたる、として、同3条1項、2項に基づく商品の譲渡等の差し止め及び廃棄を求めた事件。


原告は、原告商品が「原告が独自に考案したもの」であると主張していたが、裁判所は商品開発の経緯等から独自考案性に疑問を投げかけ、結果、原告商品は、被告にとって「他人の商品」に該当するとはいえない、として請求を棄却している(実際のところは、原告商品、被告商品のいずれも、「(北海道名物)まりもっこり」から着想を得た商品だったようである・・・)。


東京地判平成21年3月30日(H20(ワ)4874)

著作権に基づく侵害差止請求事件 第29部・清水節裁判長

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20090407180231.pdf


原告(読売新聞西部本社法務室長)が被告(フリージャーナリスト)に対してメール送付した「催告書」を、被告が自らの開設するウェブサイトに掲載したことから、公表権及び複製権に基づき削除を求めた事件。


裁判所は、原告の本件「催告書」の作成者(著作者)としての地位を否定し、さらに「催告書」自体の著作物性も否定したため、原告の主張は完全に退けられることになった(当然、請求棄却)。ネタとしては面白いが、「著作権侵害訴訟事件」というカテゴリーで論ずべき事案かどうかは疑問も残る不可解な事件といえる。

→ http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090417/1240157260 にて別途紹介。

*1:原審では原告の請求認容。

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