外国企業には甘いのか?

租税法をやったことのある人なら、「典型論点!」と思わず手を叩きたくなるような記事が掲載されていた。

「インターネット小売り最大手の米アマゾン・ドット・コムの関連会社が、日本での事業を巡り東京国税局から2005年12月期までの3年間で計140億円程度の追徴課税処分を受けていたことが5日、分かった。アマゾン側は処分を不服とし、現在、日米の税務当局間で協議中だ。」

読み進んでいくと、

「関係者によると、課税されたのは「アマゾン・ドット・コム・インターナショナル・セールス」。同社は書籍などの日本での販売業務を「アマゾンジャパン」(東京・渋谷)に、物流業務を「アマゾンジャパン・ロジスティクス」(千葉県市川市)に委託。中枢機能は米側に集中し、顧客への販売代金を米側が受け取り、米国で納税している。」
「日米租税条約では、米企業が日本国内で支店など「恒久的施設(PE)」を持たない場合、日本で納税する必要はないが、国税局は市川市の物流センターが米本社の機能の一部で、PEにあたると認定。日本で得た所得を申告すべきだと指摘したとみられる。」(以上、日本経済新聞2009年7月6日付朝刊・第34面)

ということで、いわゆるPE問題の話だということが分かるのだが・・・。


PEの問題に限らず、国際課税関係の話になると、

納税義務者にそんなに悪意があるわけではないのに*1、税金が入ってこない側の課税庁がムキになってペナルティをかける

という話がどうしても出てきてしまうわけで、一時的にでも二重課税状態を余儀なくされてしまう上に、「脱税企業」のレッテルを貼られてしまう会社の側としては、何とも厄介なことになってしまう。


つい数年前にも、移転価格税制をめぐって多くの国内グローバル企業が“犯罪者”的な報道をされたのは記憶に新しいところだ。



だが、今回のアマゾン関連企業のケースを紹介する記事のトーンは、かなり中立的であるように思える。


この種の問題の難しさを勘案して報道のスタンスを変えたのか、それとも、単に情報ソースが通常の国内企業に関するものと違っただけなのか*2、はよく分からないが、米国の企業に関してこれだけフラットな記事を書くのであれば、国内企業に関する記事も同じようなトーンにしていただけないものかな・・・と言いたくなるわけで*3


警察・検察と並んで、国税絡みの記事にはどうしても大本営発表の“垂れ流し”が目立つだけに、せめて日経紙にだけは、(今回に限ることなく)良識ある報道を求めたいものだと思う。

*1:もちろんタックスプランニングの観点から、税制上有利な国に所得をシフトさせることはあるにしても、あくまでルール内で前例に従ってやっている、というのが多くの会社の認識だろう。

*2:記事を見る限り、今回の件はアマゾン側から情報を得て書かれたもののように読める。

*3:もちろん、日経紙などだと、コラムや社説等で必ずフォローが入るようにはなっているのだけど、それでも(みんなが読む)「社会面」に掲載される記事では“犯罪者”扱いされるのが常だ。

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