冷静な反応の裏に垣間見えるもの

ヤフーとグーグルのインターネット検索・広告技術での提携を受け、米マイクロソフトが反発を強めている、というニュース。


確かに日本の検索市場の51%を占めるグーグルと、47%のヤフーが提携する、と聞いただけで、競争法的な問題がどこかにあるんじゃないか・・・というのは、誰しもが思いつくことだし、これまで世界中で独禁当局との闘いに多大な労力を費やしてきたマイクロソフトとしては捨て置けない、というのも良く分かる。


だが、我が国の独禁当局は、早々と動じない姿勢を公に示した。

「日本の公正取引委員会の松山隆英事務総長は28日、「(今回の提携が)直ちに独占禁止法の問題にはならない」との見解を明らかにした。」
公取委の松山事務総長は28日の記者会見でヤフー・グーグルの提携について、広告主や広告のデータ、検索サービス利用に関する情報は両社で共有されず、競争条件は損なわれないと説明した。今後は「競争状況や市場の環境も含めてどういう影響が出るのか見ていくことになる」とした。」
日本経済新聞2010年7月29日付朝刊・第9面)

今回の提携に関し、ヤフーの説明(検索エンジンが同じでも検索サービスをカスタマイズして提供することは可能。ユーザーインターフェイスも独自のものを提供していく)は当初から極めて明快である(http://pr.yahoo.co.jp/release/2010/0727a.html)。


そして、独禁当局が、前記のようなヤフーの説明をなぞるかのように、現時点で独禁法上の問題が存在しない旨を明言したことは、この問題の当面の帰趨を占う上では大きな意味を持っているのであって、おそらく、マイクロソフトがどれだけ吠えようが、提携計画は着実に実行に移されていくことだろう。


自分もそんなに詳しいわけではないが、確かに提携が「検索エンジンの提供」というレベルにとどまるのであれば、そんなに大騒ぎするような話でもないだろう、と思う*1


だが、自分はそれ以上に、公取委の“冷静な”態度の裏に、今回のグーグルとの提携発表に至るまでの、ヤフーの綿密な「根回し」の存在を感じている。


もちろんいまどき、公取委への事前相談なしに、大規模な事業統合・提携が決行されるようなことはほとんどないと思うのだが、今回の件に関しては、単なる相談を超えて、考え得る第三者(想定されていたのは明らかにマイクロソフトだろうが)の指摘に対する回答まで、実質的に提携当事者側でレクチャーしていたのではないか・・・、という想像まで働くところ。


事前相談の場をどのように活用すべきか、という点など、いろいろと参考にすべき事案である。

*1:そもそもインターネット検索サービスの事業者同士の競争法の問題を考える上で、「市場」をどのように観念するか、ということ自体に曖昧なところが多いので(事業モデル自体が分かりにくいというか何というか・・・という状況である以上やむを得ないのだが)、本当にそういう結論でいいのかどうか、議論する余地はあると思うのだが。

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