遺憾な評価。

東京にいながらしてアクセスできる、数少ない(というか唯一の)“社会科学系GCOE”として、個人的にお世話になっているのが、早稲田大学のプログラム(「成熟市民社会型企業法制の創造」)なのだが、拠点リーダーである上村達男教授名でメルマガ登録者向けに送られた以下のメールの刺激的な文面には、ちょっと驚かされた。

同大学のGCOEの日頃の活動に敬意を表している筆者としては放っておけないので、ここに転載させていただくこととしたい。

メルマガ登録者の皆様へ  
日頃より我々の研究活動に対してご理解・ご支援をいただいておりますこと、心より厚くお礼申し上げます。
我々は拠点形成目的達成のために精一杯努力をして参ったつもりでおりますが、このたびの中間評価では初めて我々にとって遺憾な評価が下されました。我々研究者は研究内容についてはすべて謙虚に受け止めるべきと考えておりますが、このたびの評価につきましては評価委員の構成、内容ともに問題と考えられる点が多く、拠点リーダーとしてこれを放置して何らの見解の表明も行わないことでは、今まで努力をいただいたきわめて多くの関係者の皆様に対して申し訳なく、また研究者としての今後の意欲にも関わりますので、敢えて個人の資格において、率直な見解を表明致しました。
こうした見解の表明につきましては、それ自体につきまして苦渋の決断を要しました。ご賢察賜りますれば幸いと存じます。

ここで批判されている「グローバルCOEプログラム委員会における評価」は、http://www.jsps.go.jp/j-globalcoe/07_chukan_kekka_i.htmlに掲載されているのだが、確かに早稲田大学のGCOEに対する「総括評価」は、

「当初目的を達成するには、助言等を考慮し、一層の努力が必要と判断される。」

というなかなか手厳しいもので、「コメント」においても、一定の成果は認められつつも、「一層の工夫と努力」「特段の工夫」が強く求められる内容になっている。

早稲田大学側の反論は、上記メールの中でも記載されているし、http://www.globalcoe-waseda-law-commerce.org/purpose/index4.htmlにおいて公表されているから(相当なボリューム感とインパクトの強さが際立つ反論である)、双方の言い分の妥当性は、読者の皆様に適宜ご判断いただければ、と思うところであるが*1、こういう双方のコメントの応酬を見ると、研究活動の評価というのがいかに難しいか、ということを感じざるを得ない。

もっとも、上記「中間評価」の一覧を良く見ると、厳しい評価を受けているのは早稲田大学だけではない、ということも分かってくる。

この中間評価で「評価」された法学系のGCOEプログラムは4件であるが、COE時代から引き続いて田村善之教授を拠点リーダーに据え、着実に結果を出されている北海道大学(「多元分散型統御を目指す新世代法政策学」)を除けば*2、東北大、東京大のいずれも、早大と同様に“ダメ出し”を食らっていることにかわりはない。

本来、先行きが厳しい業界をリードすべき立場にある、東大(「国家と市場の相互関係におけるソフトロー」)でさえこの状態なのだから、早稲田だけがそんなにマジギレしなくても良いではないか。

と内心思ったりもするのであるが・・・。


今回の委員会の“酷評”をバネに奮起した大学側の尽力により、これまで以上に充実したプログラムへと進化を遂げていただけることを、自分としては切に願うのみである。

*1:自分は、早稲田大学側の意見には、それなりの理があると思っているが、再反論の機会が与えられれば、委員会側としてもより踏み込んだコメントをしてくるはずで、このような研究内容の評価の妥当性について、明確に白黒付けるのはなかなか難しい。

*2:北大のGCOEに対する評価は「現行の努力を継続することによって、当初目的を達成することが可能と判断される」というもので、(これまでの実績を考えれば当然のこととはいえ)これまでの活動内容が評価されたのは、実に素晴らしいことだと思う

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