「この国を壊すな」っていうけれど。

菅首相の辞める辞めない問題を引きずっている間に鬱積したストレスを、ぶちまけるかのようなコラムが6日付の日経紙に掲載されていた*1

このコラムを書かれたのは芹川洋一論説委員長。
「この国をどうする気ですか」というタイトルも、「民主党政権『失敗の本質』」というサブタイトルも、書かれている文章の中身も相当過激だ。

だが、冷静に読めば引っかかるところも多い。

例えば、「民主党政権に統治技術がない」ことを指摘する際に、

「幹部クラスに組織運営の経験のないメンバーが多いことがあげられる。市民運動家、弁護士、松下政経塾といった出身者は、組織とは別の世界で育ってきた人たちだ。人前で解説・説明することには、たけていても、人を動かす人情の機微にはうとい。」
「不思議で仕方がないのが、事前の根回しなどなしで、いきなり会議でものごとを決めようとすることだ。どんな小さな組織でも、事前に、うるさ型や利害関係者には耳打ちし、時には肩ももんで、スムーズな着地をめざすものだ。根回しなど否定すべき古い自民党政治ということらしいが、組織運営の知恵に欠けていると言わざるをえない。」

といった解説を加えているのだが、これは「おいおい」と突っ込みを入れざるを得ないだろう。

市民運動をやるNPOにしたって、弁護士の世界にしたって、活動をまともにやって行こうと思えば、ある程度人を動かす力に長けていなければ何も話は進まないし、日常的に多かれ少なかれ根回しだって厭わずに行われる。

もちろん、そういった活動を地味に支えている人と、政界の表舞台で活躍している人が必ずしもイコールではないのは確かだが、それを言ったら今の野党だって同じこと。

そもそも、“根回しばかりで外からは何も見えない”として、古典的な自民党の政治手法が国民に忌避された最大の原因は、日経新聞をはじめとするメディアが散々バッシングしたからに他ならないのであって、上記のくだりには、何を今さら・・・といった感が強い。

今の混乱にしたって、本来なら未曾有の国難を前に政権をしっかり支えるか、さもなくば大人しく引っ込んでいるべき元首相やら元代表やら(&その周辺の人々)の権力者気取りの戯言を、メディアが面白おかしく書きたてることに端を発しているところが大きいのであって、結局のところ、「この国を壊すな」という論説委員長氏の主張は、「壊しているのは誰なんだ?自分で鏡を見てみろよ」という突っ込みを免れ得ないように思われる。

結局、政官財のトライアングル+官製メディアが“安定した”政治を担っていた時代への郷愁がどこかに残っている人たちには、現状を批判することしかできないんだろうなぁ・・・と空しさすら感じさせられる記事であった*2

*1:日本経済新聞2011年6月6日付け朝刊・第5面

*2:古き良き時代の政治スタイルは、現代においてはもはや通用しないことが明らかなのだが・・・(そしてそれを積極的に指摘していたのもこの新聞だったはずなのだが)。

続きを読む
google-site-verification: google1520a0cd8d7ac6e8.html