痛快に過ぎた勝利。

かれこれ2週間以上、ドーハの地でハードワークを徹底し、ドラマチックな試合展開を度々演出して、日本に歓喜をもたらしてきたサッカーU-23代表。

これまでの戦いぶりは、いくら誉めても誉めすぎ、ということはないくらい素晴らしいものだったのだが、さすがに決勝の相手が韓国*1となると、“中継局が煽るほど良い試合にはならないだろう、準優勝でも五輪に行けるのだから、半年後に力関係が逆転していることを期待しよう”というのが、戦前の素直な感想だった。

実際、試合が始まってからも、韓国U-23代表の攻守の切り替えの速さとゴール前の分厚い攻撃の前にあっさり先制を許し*2、中盤の支配を取り戻すべくシステムを切り替えた後半開始早々*3にも、鮮やかなパス交換を織り交ぜた速攻から追加点を浴びる・・・。

4年前のロンドンでの3位決定戦の悪夢を思い出させるような展開で、日本での放映時刻*4を考えると、“やっぱりここまでか〜”と、テレビを消した人も多かったことだろう。

だが、ここからが今大会のU-23代表の真骨頂だった。

元々スペースが空きがちだったサイドから執拗に攻撃を仕掛けて、相手の体力をじわじわと削ったところで、後半15分に切り札・浅野拓磨選手を投入。

そして、そこから浅野選手のスピードをふんだんに活かした縦の速攻と、サイドからの崩しで、韓国守備陣をズタズタに切り裂き、10分も経たないうちに同点。
さらに、足を攣った韓国選手が次々と交代に追い込まれるのを横目に、走り勝って数的優位を作った日本の攻撃陣が浅野選手の逆転ゴールを生み出した瞬間、戦況はほぼ確定した。

準決勝のカタール戦でも露呈したように*5、“上手だがタフではない”というのが、今の韓国U-23代表の特徴だったのだが、そこで相手の弱点を徹底的に突いて試合をひっくり返す、というのは、そう簡単にできることではないし、“勢い”という言葉だけで説明できるものでもないだろう。

状況の変化に応じてシステムを巧みに切り替える戦術の柔軟さ、決勝トーナメントの3試合に万全のコンディションで臨めるように配慮された選手起用、そして、そういったお膳立てに献身的なハードワークで応える選手たち・・・

勝利の背景を分析していけばキリはないのだが、とにかく、美しく、痛快に過ぎる勝利だったというほかない。

最後の最後まで目が離せない試合展開だっただけに、夜更かしして日曜日の予定が狂ってしまった人も多いかもしれないが、そんな些細なことよりも、“最弱”世代が“アジア最強”に駆け上がった瞬間を目撃できたことに、今は感謝しないといけない。そして、この物語が「ここまで」で完結してしまわないように、半年後&さらにその先に向けて、Jリーグに戻った彼らに温かい声援を送り続けるのが、我々の役目だろう、と思っているところである*6

*1:2012年のU-19・AFCチャンピオンシップで優勝、U-21世代で争われた2014年のアジア大会でも優勝、と、アジアのこの世代では絶対的な強さを誇っている。

*2:ゴール自体は、岩波選手の足に当たって軌道が変わる、というアンラッキーなものだったが、その前にも速攻からゴールネットを揺らされた機会は何度かあり、ムード的には“やっぱり”感が強かった。

*3:FWとして出場しているにもかかわらず、中盤から後ろで守備に追われることが多かったオナイウ選手があっさり下げられてしまったのは残念だった。今大会での献身的なプレーぶりには、高い評価が与えられているだけに、五輪までにはもう少し“点を取れる雰囲気”のある選手になってほしいなぁ、と思う。

*4:この頃、ちょうど午前1時前くらいだったか。

*5:最終的には、終盤に勝ち越し、ダメ押しゴールを決めて順当に勝ち上がったものの、同点に追いつかれてからの時間帯は、スピードのあるカタールの攻撃陣の前に足が止まった韓国守備陣がノックアウト寸前まで追い込まれていた。カタールのFWにほんの少し決定力があれば、そこで試合が終わっていても不思議ではなかった。

*6:今大会を見ていて思ったのは、久保裕也選手はちょっと別格、中盤でも遠藤航選手、中島翔哉選手の2人はちょっと抜けた存在で、今大会は不完全燃焼に終わった南野拓実選手が万全な状態で戻って来れば、チームの核は整うだろうな、ということ。そして、日替わりでヒーローとなった浅野、矢島、原川、豊川といった選手たちも、彼らと組み合わせて初めて光る、というところはあるのではないかな、ということである。これから本番に向けてオーバーエイジ枠の問題等がいろいろと出てくると思うが、A代表でもあれほど研ぎ澄まされた縦の攻撃はなかなかできていないだけに、攻撃陣にはあまり手を入れない方が良いような気がする。補強するとしたら、終始危なっかしさを見せていたCB(植田選手はともかく、後の2人はまだまだ・・・という感じであった)と、バックアップの層が薄い両サイドくらいだろうか(室屋、山中両選手の出来は素晴らしかったのだが、その代わりになれる選手が・・・)。個人的には、仙台からの流れで、角田誠選手だとか、鎌田次郎選手、上本大海選手といった名前が上がると、ちょっと嬉しかったりもするが、さすがにそれはないか・・・。

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