隔世の感、のレースがまた一つ。

まだ、国内産馬よりも外国産馬の方が、純粋に血統的に優れている、と考えられていた時代、そして、それにもかかわらず、「外国産」というだけでクラシックレースへの出走がかなわなかった時代、「NHKマイルカップ」というレースは、スピード能力が秀でた“マル外”の馬たちがしのぎを削る舞台だった。

第1回のレースでタイキフォーチュンが叩き出した「1分32秒6」というタイムは、当時としては破格だったし、シーキングザパールエルコンドルパサーといった規格外の馬たちが頂点を極めていた頃は、単なるマイル戦の域を超えた“もう一つの3歳最強馬決定戦”という雰囲気すら漂っていた。

しかし、創設から20年の歳月が流れた今、馬柱に「マル外」の馬は一頭もいない。
そして、戦績を眺めても、マイル路線一辺倒でここまで来たか、クラシック路線で一頓挫したか・・・といったメンバーしか見当たらない。

この日のレースでは、桜花賞まで「3歳牝馬最強」の呼び声が高かったメジャーエンブレムが、地力を見せて逃げ切り勝ちを収めたが、最後の3ハロンは35秒1、とギリギリのタイムで、絶対的な強さを感じさせるようなレースぶりには程遠かった*1

新馬戦、新潟2歳Sでの鬼脚を久々に思い出させてくれたロードクエストの追い込みが素晴らしかった、という評価もあるだろうが、今年の春はトライアルで敗れ、前走・皐月賞でも8着、と、決して世代の看板ではなかったロードクエストに肉薄されてしまったあたりに、勝った馬の限界を感じたし、おそらくここ数年の間に同じパターンで勝ったものの、その後は決して一流とは言えない戦績にとどまっているカレンブラックヒルミッキーアイルと同じ運命を辿るのだろう、と思わずには得られない。

中距離を中心とした世界に通じるレース体系が整備され、真に能力に秀でた馬が、産まれの内・外を問わず*2皐月賞、ダービーから世界に羽ばたくというローテーションが確立された、ということの方を喜ぶべきなのかもしれないけれど、自分には、どうしても年月を経たことによるレース自体のくすみが感じられてしまって、残念な気持ちの方が強かった。

こうなったら、王道のクラシックで、よりレベルの高いレースを見せてもらうしかないのだけれど、果たしてどうなるか。
牝馬は2週間後、牡馬は3週間後に明らかになる“世代の頂点”が、よりスッキリとした形で決まることを、自分は願っている。

*1:おそらく、前回の雪辱に賭けるルメール騎手の絶妙な手綱さばきがなければ、あっさり差し切られても不思議ではなかっただろうし、20年前のレベルでレースが行われていたら、当時のファビラスラフィンのように、強烈な切れ味を持つ馬たちの餌食になっても不思議ではない展開だった。最初の1000mの通過が57秒7で、前に行った他の馬はほとんどが潰れている、という状況を考えれば、この馬が良く頑張った、ということは間違いないのだが・・・。

*2:そもそも、外国産馬自体が、かつてに比べると激減している、という事情も当然ある。

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