2016年9月16日のメモ

パラリンピックもいよいよ終盤、ということで、連日メダルの報が日本にも届いてくる。
“金メダル確実”といった下馬評も流れていた選手たちが、銀、銅に留まっていたり、ゴールボール車椅子バスケのように上位進出が期待されていた団体競技で壁に阻まれたり、と、思惑どおりに行かないのは健常者スポーツの世界と何ら変わるところはないのだが、「東京」の4年前、というタイミングでプレーヤーも観る側も、“あと一歩”の悔しい経験をしたことが、様々な意味での「底上げ」につながることを期待して。

プラットフォーマー企業」の取引実態についての報告書

昨日から日経紙で報道され始めた「『プラットフォーマー企業』の取引実態についての報告書」。

経産省のサイトを見てもそれらしきものが見当たらないので、何でだろう?と思っていたのだが、よく見ると、「第四次産業革命に向けた横断的制度研究会 報告書」(http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915001/20160915001-3.pdf)というのがそれらしい*1

非常に大きなボリュームを割いて書かれているのが、アプリ決済に関する問題について。

スマートフォン上でアプリストアを運営する事業者は、自らのアプリストアをアプリ提供事業者に利用させる条件として、自らが提供する決済方式以外の方式による決済を制限するとともに、自らが提供する決済方式を利用した場合には、収入の30%程度の手数料を徴収している場合がある。具体的には、アプリストア上でアプリを購入する場合や、アプリストアからダウンロードしたアプリの内部でデータ等を購入する場合には、アプリストア事業者の提供する決済方式を利用しなければならないこととしている。また、リアルの市場で販売している商品に記載されたシリアルナンバーをアプリ内で入力することでデータ等を入手する形式も禁じられている場合があり、この場合には、単なる決済手段の拘束にとどまらない販売促進活動(商品とアプリとのコラボレーション等)も事実上制限されている。」
「なお、研究会において、決済手段の拘束については、「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」(平成 18 年 公正取引委員会)における記載との類似性を指摘する意見があった。すなわち、同報告書では、合理的理由なく、電子商店街への出店事業者が直接クレジットカード会社との間で決済を行うことを禁止し、電子商店街の運営事業者がクレジットカード会社との決済を行う方法を義務付け、その結果、直接決済を行う際の手数料率を上回る手数料率を設定することにより出店事業者に不当な不利益を課す場合には、優越的地位の濫用として独占禁止法上の問題につながるおそれがある旨が指摘されているところ、決済手段を拘束することで事業者に不当な不利益を与えている点では同じではないかとの意見があった。他方で、アプリストア事業者が課す手数料率について合理的と考えている事業者も存在するなかで、当該手数料率が不当な不利益に該当するのかは検討を要するとの意見もあった。」(報告書9頁)

書かれていることは、だいぶ前から公に言われていることばかりで新鮮味はないし、現在の状況が「優越的地位の濫用」に該当するかどうかについても、ストレートに見解が示されているわけではない。
それは他の論点についても同様で、最終的な結論も、

これらの取引実態が独占禁止法等の法令違反に当たるかは、詳細かつ精緻な検討が必要であり、一概に結論付けることはできない。例えば、アプリストア事業者が設けている審査基準について、露骨な性的表現のあるコンテンツや、賭博等の法令に違反するコンテンツを禁止すること自体は、アプリストア事業者として当然の配慮であるし、この規定を運用して個別の事案に対して適切に対処していくためには、ある程度抽象的な規定としておかざるを得ないとも考えられる。他方、研究会での議論では、決済手段の拘束や、不透明な返金処理については、優越的な地位の濫用等にあたり得るという指摘があった。」(11〜12頁)

と、どっちつかずな感じになってしまっている。

いろんな立場の方々が入って議論して、玉虫色の報告書を作ろうとすればそうならざるを得ないのは分かるのだが、プラットフォームの寡占化が続いている現状では、どう見ても優越的地位の・・・だろう、という実態は既に存在しているわけで、コンテンツ産業を所管する役所が主催する研究会なら、それくらいのことは書いてほしかったな、と思うところ*2

なお、今日の日経のコラムでは、

公取委経産省守秘義務契約に阻まれ、プラットフォーマーの取引先から情報を引き出すのに四苦八苦した」(日本経済新聞2016年9月16日付朝刊・第2面)

として、独禁法40条調査の活用云々にも言及されているのだが、行政のオフィシャルな調査への対応で、「民・民の契約の守秘義務があるから回答(協力)したいけど回答できない」ということになってしまうカルチャーは少なくとも自分の周りにはない(笑)ので、眉唾だなぁ、と思いながら読んでいた*3

「相変わらず横暴だなぁ、できれば付き合いたくない会社だなぁ」と思っていても、取引することでそれなりのメリットを手に入れられるのであれば我慢して付き合う、というのは良くある話なわけで、産業育成的視点から切り込むにしても、競争政策の観点から切り込むにしても、そういったビジネスの世界の機微を汲み取っていかないと、ピント外れな方向に向かっていく懸念はあるような気がしている。

欧州委、著作権制度見直し提案

これも日経紙の記事からなのだが、これまでの欧州界隈での議論状況からすれば、

「新聞などの発行元に対し、ニュース記事を掲載したネット企業に使用料を請求できる権利を新たに認めるのが柱」日本経済新聞2016年9月16日付朝刊・第7面)

という記事はかなり胡散臭いので、ここはちょっと原文に当たってみることにしたい。

民進党代表選

結局、蓮舫氏の圧勝で決着、ということで何よりであった。
少なくともコアな旧民主党支持者の中に、ネトウヨに同調して「二重国籍」云々を問題視するような人々はいなかった、ということだと思うし、その判断は間違っていないと思う。

あとは、未だに耳慣れない「民進党」という名前を、良い意味でも悪い意味でも注目度の高い代表の言動で、世の中にどこまで浸透させられるか、だろう。
個人的には、さっさと“民主党”に戻してもらった方が分かりやすいと思うんだけど・・・。

*1:タイトルがあまりにバカバカしい感じだったので、スルーしてしまっていたのだが・・・。最近の経産省系のプロジェクトには、こういうネーミングが目立つ・・・。

*2:もっとも、永久に今の寡占状況が続くとも思えない中で、まさに今この瞬間だけを捉えてプラットフォーマーに制裁を課すことにどれだけの意味があるのか?という問題は別途考慮されなければならない。

*3:もちろん「守秘義務」を口実に面倒な調査への対応を断ることはよくある(笑)。

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