企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2018-01-16

[][]鹿島建設の勇気ある判断

昨年末、泣く子も黙る特捜部が唐突に動いて世の中を騒がせた「リニア入札談合」に関し、週末、あっと驚くような記事が出た。

リニア中央新幹線の建設工事を巡る談合事件で、大手ゼネコン「鹿島建設」(東京)が社内調査の結果、会社として受注調整には関与していなかったとする見解に至ったことが、関係者の話でわかった。このため、課徴金減免(リーニエンシー)制度に基づく公正取引委員会への違反の自主申告は行わない方針という。」(2018年1月13日12時13分配信、Yahooニュース、ソースは読売新聞Web)*1

その後、少し間隔はあいたが、今日になって産経新聞Webでも似たような報道がなされた。

リニア中央新幹線建設工事をめぐるゼネコン大手4社による談合事件で、鹿島建設が社内調査の結果、不正な受注調整に関与していなかったと結論付け、独占禁止法の課徴金減免制度(リーニエンシー)に基づく違反の自主申告を行わない方針を固めたことが15日、関係者への取材で分かった。公正取引委員会への申告期限となる22日までに最終決定する。大手4社のうち大林組はすでに公取委に違反を申告しており、対応が分かれた形だ。」(2018年1月16日7時05分配信、産経ニュース)*2

大林組が早々と事実を認めて公取委に課徴金減免申請したことは昨年のうちに報じられているし、清水建設も、検察筋からのリークか、「元幹部が東京地検特捜部の任意聴取に対し、大手ゼネコン四社による受注調整を認める趣旨の説明をしている」とされている*3

そんなふうに着々と検察の筋書きどおりに事が進んでいる中で、突如として予定調和な決着への反旗を翻すかのような鹿島建設のスタンスは、「立入調査→事実を認めてリーニエンシー」というお定まりのコースに辟易していた者としては非常に新鮮だし、過去の度重なる談合摘発禍を経て、「絶対に受注調整には関与しない」という強い意思が社内に根付いていた自信があるからこその対応であるように思えて、どうしても応援したくなってしまう。

もちろん、敵は天下の特捜部、既に大林組が白旗を挙げている状況だけに、いかに関与を否定しても、「共犯者」の供述調書で外堀を埋められて受注調整に関与した事実が「立証」されてしまう可能性は十分にある。そして、そうなった場合に、課徴金減免の自主申告をしていなかったことが、甚大なダメージにつながる可能性は否定できない*4

検察・公取委がどこまで立件するかにもよるが、極めて大きな額が動いているプロジェクトだけに、課徴金のスケール(ひいては減免が適用される場合とそうでない場合とのギャップ)も一段と大きくなる可能性はある。そうなれば、世間の批判は免れ得ないだろうし、ともすれば株主代表訴訟のようなアクションを起こされても不思議ではない。

しかし、捜査、調査が入れば、直ちに“クロ”と決めつけるような報道が依然として主流のこの世の中において、「やってないことはやってない」と主張することは非常に難しいことでもあるわけで、そんな逆境をはねのけて、「やっていない」と言い続け、最終的に疑惑を晴らすことができたなら、実に素晴らしい先例になると自分は思っている。

残念ながら日本では、当局が付けた先鞭の上に乗っかっているだけの報道が未だに主流を占めているし、今回の話題も、なぜか日経新聞は一顧だにしていないのだけれど*5、そんな状況だからこそ、「勇気ある判断」によって戦うことの重みは一段と増す。

そして、こういう時こそ、オフィシャルサイドの情報の受け売りや垂れ流しではなく、企業サイドの、実務に携わる者の声なき声を捉えて客観的に報道できるメディアがあれば、と思えてならない。

産経の記事によると、そう遠くないうち(見出しでは「22日」)には会社としての公式見解も出る、とのこと。

平行して捜査の手がさらに伸びる可能性もあるから事態は予断を許さないが、「自社に理あり、憶測報道に真実なし」と信じるのであれば、最後の最後まであきらめずに戦ってほしいな、と思わずにはいられないのである。

*1https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180113-00050019-yom-soci、強調筆者・以下同じ

*2http://www.sankei.com/affairs/news/180116/afr1801160005-n1.html

*3東京新聞Web・2017年12月29日、http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122902000106.html

*4:そもそも被疑者となっている会社は「4つ」しかないため、他の3社が減免申請をすれば、鹿島建設だけが100%制裁を受けることになってしまう、ということも十分考えられる。

*5:むしろ逆に、自主申告を行った大林組を持ち上げるような報道すらしている。

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