“伸び盛り”の迫力。

昨シーズン、滑るたびにスコアを伸ばし、年末の全日本フィギュアで堂々の五輪切符を掴んだ坂本花織選手。
全日本の演技だけ見れば、文句なしの選考だったと思うが、如何せん今シーズンシニアに転向したばかり、ということもあって、世界での実績云々を指摘する声もまだ残っていた。

だが、四大陸選手権のフリー、ほぼ全てのジャンプを完璧に飛びきった彼女の演技は、そんな雑音を封じるに十分なものだったといえるだろう。

ショートプログラムを終えた時点で、宮原知子選手に次ぐ2位ながらパーソナルベストを更新。
そして、フリーでは、最初の3回転フリップ+3回転トゥループを加点1.50点で決めたのを皮切りに、単発の3回転サルコウ、ルッツ、ループ、そして2種類のコンビネーションジャンプまで一切の減点要素なく回り切った。

演技の完成度は依然として高く、ジャンプも一見終盤のサルコウの転倒以外はキレイにまとめてきたように見えた女王・宮原選手がまさかの3位に転落し*1、昨年の覇者、三原舞依選手*2の後塵をも拝する悔しい結果になってしまったのを横目に、トータルスコアの自己新記録も再び更新した坂本選手は、これで、“日本の中のシンデレラガール”から「四大陸女王」として、堂々と五輪へと向かうことになったのである。

今大会の女子は、男子とは異なり、日本勢以外の他の大陸勢やアジア勢の出場選手にどうしても物足りなさが残ったし、スコアで比較しても、欧州選手権で優勝したザギトワ選手のTES(なんと82.67点!)、TSS(157.97点)に比べるとどうしても見劣りしてしまう*3。坂本選手にまだまだ伸びしろがある*4といっても、バレエダンスの伝統を承継した演技力に、自然体で跳べるジャンプ技術が上乗せされているロシア勢*5に現時点で太刀打ちできるとは到底思えない。

ただ、それでも、表彰台に残された最後の「1」枠に最も近いのは、そして、オリンピックの本番で、見守る日本のファンですら想像できなかったような超絶演技をやってのけるのは、やっぱり坂本選手しかいないんじゃないかな、と思うだけに、残されたあと数週間、が、彼女の勢いを止めないように、と今は祈り続けるのみである。

*1:2度のコンビネーションジャンプで回転不足を取られたのが響いた。

*2:冒頭の3回転ルッツ+3回転トゥループは見事。演技自体にも胸を打つものがあって、彼女が五輪に出場出られないのが惜しくて仕方なかった。

*3:ザギトワ選手だけでなく、負傷上がりだった2位のメドベージェワ選手も坂本選手を遥かに上回るスコアを叩き出している。

*4:例えば、スピンでレベル4を取れるようにするだけでも1.4点くらいはTESが上がるし、演技構成点もまだまだ伸ばせる余地はありそうである。

*5:特にザギトワ選手は、まるで普通に息をするように、軽くステップを踏むようななタイミングで3回転を跳んでしまう(だからプログラムの後半でジャンプを固め打ちするような一見ぎょっとするような演技構成でも見る者は全く違和感を抱かずに済む)。SPもFSも今のプログラムで五輪を制したら、間違いなく彼女は「革命者」になれる。

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