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2018-08-19

[][]復活の狼煙と立ちはだかる「世代の壁」

ついこの前始まったと思った夏競馬も、あっという間に終盤に差し掛かりつつある。

この時期になると、「夏競馬」と言っても、下級条件戦(3歳馬の場合)からオープンクラスのレースまで、実質的には秋のG1シリーズに向けた前哨戦、という意味合いが強くなるのだが、今日のG2・札幌記念などは、まさにその典型のようなレースだった。

例年以上に重賞タイトルホルダーが揃う中でも、抜群の存在感を放つダービー馬・マカヒキ

一方で、3歳秋のフランス遠征以降、同馬が輝きを失っていたのも事実なわけで、この日も1番人気ながら、付いたオッズは観衆の“恐る恐る”感が如実に現れている「4.3倍」。

他の上位人気馬も、2番人気のサングレーザーは長らくマイルを本職としていた馬、4番人気のモズカッチャンはドバイ遠征以来の出走、ということで、個人的には、昨年の覇者、サクラアンプルール*1や、マイスタイル、スティッフェリオといった洋芝実績のあるこの夏の上がり馬の方が気になっていて、馬券的には非常に妙味のある一戦だな・・・という印象だった。

蓋を開けてみれば、最終的に上位を占めたのはG1馬2頭と、G1が手の届くところにまで来ているサングレーザーで、思いのほかつまらない結果になっているのだが、1番人気の組み合わせながら馬連が4ケタ配当になっていたり、ワイドもそれなりの高配当になっているところを見ると、筆者に限らず、皆頭を悩ませた一戦だった、ということなのだろう。

そして、そんな懐疑的ムードの中、ようやくマカヒキが“らしさ”を見せてくれたことで、胸をなでおろした関係者も多いはず。

稍重馬場とはいえ、タイム的には決して速い時計とはいえないし、ゴール前であれだけ豪快な差し脚を見せながら、最後の最後でサングレーザーを捕まえきれなかった、というあたりに、昨年来揶揄されている“世代の弱さ”を感じたのも確かなのだが、サトノダイヤモンドに全く復調の兆しが見えない中、世代の元看板馬が、秋の天皇賞、ジャパンCで「最強4歳世代」と互角に渡り合えそうな気配をようやく醸し出してくれた、ということにまずは感謝したいと思っている。

久々の騎乗で最後の脚を引き出したルメール騎手が、秋の大舞台でこの馬の手綱を取る可能性は決して高くないし、万が一、この日勝った馬に何かの弾みで乗り替わるようなことになれば、「世代の壁」は、ハナ差なんてものでは済まない高いものに再び逆戻りしてしまうような気もするのだが、今は“復活”に微かな希望をもって、眺めておくことにしたい。

*1:直前の函館記念でも2着に食い込む波乱を演出しているにもかかわらず、今回も7番人気に留まっていた。

2018-07-17

[][]「グッドルーザー」と称えるには惜しすぎた。

日本時間、7月16日午前0時から行われたW杯決勝。

延長戦そしてその先のPK戦まで見据えて準備万端で臨んでいたのだが、勝利祝いのシャンパンはもちろん、それまでのつなぎのつもりで用意した酒すら飲み切れないまま、あっけなく90分で終わってしまった。

14日付のエントリー*1で引用したのと同じ形式で、決勝の試合を表現するなら、以下のようになる。

勝者 決勝 対クロアチア 4-2

ボール支配率38%、シュート8本(うち枠内6本)/相手シュート13本(うち枠内4本)

シュート者上位:エムバペ3、グリーズマン2、ポグバ2

パス成功者上位:ポグバ29、エルナンデス24、ロリス21

敗者 決勝 対フランス 2-4

ボール支配率62%、シュート13本(うち枠内4本)/相手シュート8本(うち枠内6本)

シュート者上位:レビッチ3、ラキティッチ3、ブルサリコ2 ほか

パス成功者上位:ブロゾビッチ88、モドリッチ68、ブルサリコ61

今大会随所で見られた「矛&盾」対決の中でも、お互いが「攻められる盾」「守れる矛」であった分、極上のクオリティとなったこの戦い。そして、両者の持ち味が存分に発揮された、ということは、62:38というボール支配率の圧倒的な格差と、シュート数と枠内シュート数の優劣が見事に逆転する、というマジカルな結果が十分に物語っている。

そして、セットプレーからあっけなくフランスが先制したのは「青」の勝ちパターン通りだったし、クロアチアが10分後、怒涛のような波状攻撃で10分後にすかさず追いついた、というのも、まさに「赤白」の勝ちパターン通り。

今大会を象徴するようなVAR判定*2クロアチアのプランをちょっとだけ狂わせたが、後半に入ってからも、フランスの攻撃は全く形にならず*3、圧倒的に攻めていたのはクロアチアの方。

決勝トーナメントに入ってから3試合連続で120分を戦い、「もはやこれまでのようなパフォーマンスは期待すべくもない」という大方の想像をいい意味で裏切ってくれたクロアチアの不屈の魂をもってすれば、ちょっとしたきっかけで再逆転、という展開も十分に予想できたし、後半10分にフランスの守備の要、カンテ選手をベンチに追いやったところまでは、まさに「シナリオ通り」の展開になっていたはずだった・・・。

多くの識者は、その後、痛恨の2失点で勝負が決まったこの試合を「後半、クロアチアが力尽きた」と評している。

だが、真実は、カンテ選手という楔から解き放たれ、それまでは多少なりとも守備に比重を置いていたクロアチア中盤の名手たちが、名実ともに「美しく、攻めて、勝ちにいく」というマインドで統一されてしまったことが悲劇の始まりではなかったか。

90分を通じて、「これはやられるかも」というシーンを必ずきっちりと得点に結びつけたフランスイレブンの完成度の高さには、ただただ賛辞を贈るしかないのだが、ポグバ選手の3点目にしても、エムバペ選手のとどめの4点目にしても、守備陣の心がもう少し自軍寄りにあったら、そして、GKのスバシッチ選手がこれまで通りの集中力と反応の良さを発揮していてくれれば、と思いたくなるような代物。

幸いにも、終盤まで「2点」というセーフティリードを保ち続けることができたことで、勝者は準決勝とは打って変わって「誇り高き勝者」のプライドを最後まで保つことができたし、敗者も過度にヒートアップすることなく、「グッドルーザー」としての印象を残すことができた。

だが、それまでの拮抗した戦いの中で、クロアチア人のハートに心打たれ、姑息なフランス人の立ち回りを憎んだ者からすれば、「W杯決勝、あと一つ勝てば優勝」という舞台にしては、時間が過ぎれば過ぎるほど試合が大味なものになっていたことは否めないわけで、振り返れば振り返るほど、この千載一遇のチャンスを逃したクロアチア代表の“惜しさ”に目を向けずにはいられない。

大会が最後まで終わってしまえば、いかに代表チームとはいえ、もう全く同じメンバーで試合をすることはできない。

そして、それが分かっていたからこそ、とことん勝利にはこだわってほしかった。

それが、“にわか”でクロアチア代表のここ数週の試合を見続けた者が抱いた、率直な思いである。

*1http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20180714/1531595336

*2:いろいろと批判している人は多いが、個人的にはあの「手」は、DFの選手が自分の「意思」で瞬間的に出したもののように見えたし、それまでの「ハンド」に対する今大会の判定と比較しても、「誤審」といわれるレベルのものでは決してなかったと思う。

*3:これまでフランスの攻撃の鍵になっていたジル―選手にしてもパバール選手にしても、味方へのパスはことごとくカットされ、ほとんど機能していなかったに等しかった。

2018-07-14

[][] 必然の頂上対決

先ほど、ベルギーとイングランドの3位決定戦が順当にベルギーの勝利、という結果で終わり*1、約1カ月にわたったロシアW杯も残すは決勝戦、フランスクロアチアのカードのみ、ということになった。

グループリーグでドイツが韓国に敗れて大会を去ったことに象徴されるように、世界各地域の実力が拮抗した結果、日本を筆頭にアジア、アフリカ、北中米のチームも決して“安牌”にはならず、ささやか以上の存在感を示した。

どんなビッグネームを擁するチームでも、当のエースがコンディション不良だったり、チームとしてちょっとでも隙があれば、前評判とは無関係に消えていく、という厳しさは、第1回のW杯から88年経って、フットボールが世界の隅々まで行き渡ったという証でもある。

そして、そんな中、今大会の価値を高めているのは、大会の中で大きなインパクトを残したチームがトーナメントを順当に勝ち上がってきた、ということ。

4年に一度、世界の頂点を決める舞台では、どうしても冷酷なリアリズムが先に立つから、グループリーグ、ラウンド16で魅力的な試合をしたチームも、準々決勝、準決勝と駒を進める中で力尽きる、というパターンがこれまでは多かったし、観る側も「それがW杯だ」と半ばあきらめていたところがあったのだけど、今大会に関して言えば「もう一つ先を見たいチーム」が順当に勝ち上がってくれて*2、大きなフラストレーションを感じずに済んでいるところはある。

試合後の主力選手の発言が話題になった準決勝、フランス対ベルギーの試合にしても、言われるほどフランスが守備的だったわけではないし、最後の10数分の見苦しさを除けば、「アンチ・フットボール」とまで言われてしまうのはちょっと気の毒なくらい、フランスの試合運びが洗練されていたのも事実だから、どちらが勝ちあがっても良かった、と個人的には思っているところ。

そういう意味で、フランスクロアチア、という決勝戦は、「攻守一体」という今大会最大のテーマをここまで実践してきたチーム同士が、それぞれ「スピード&守備の堅牢さ」と「技術&多彩な攻撃」という、それぞれが磨き上げた突出した個性を武器にぶつかり合う、という、実に見どころの多いカードだと言えるだろう。

そして、以下では、明日の試合を控え、これまでの決勝トーナメントでの戦いぶりを数字で見ながら*3、ちょっとだけ“未来予想図”を書いてみることにしたい。

フランス〜鉄壁の守備と切り替えの速さ、試合運びのしたたかさ

1回戦 対アルゼンチン 4-3

ボール支配率40%、シュート8本(うち枠内4本)/相手シュート11本(うち枠内4本)

シュート者上位:エムバペ2、グリーズマン2、パバール1 ほか

パス成功者上位:カンテ47、ウムティティ42、ヴァラン34

準々決勝 対ウルグアイ 2-0

ボール支配率59%、シュート10本(うち枠内2本)/相手シュート12本(うち枠内4本)

シュート者上位:グリーズマン2、ヴァラン2、トリソ1

パス成功者上位:パバール73、ポグパ60、エルナンデス51

準決勝 対ベルギー1-0

ボール支配率39%、シュート18本(うち枠内5本)/相手シュート9本(うち枠内3本)

シュート者上位:ジル―7、グリーズマン5、マティイディ2

パス成功者上位:パバール45、カンテ39、ヴァラン35

カバーニ選手の負傷欠場でワンサイド気味の試合になったウルグアイ戦を除けば、決勝ラウンドに入ってから専ら相手チームを「受けて」いる印象が強いのだが、それでいて、今回のフランス代表は、(シュート数では相手を圧倒したベルギー戦に象徴されるように)ひとたびボールを奪えば一瞬で決定機に持ち込める力を持っているから見ていて飽きない。

攻守の役割分担も明確で迷いがなく、特に守備能力の高いカンテ、ポグバの両選手が奪ったボールをグリーズマンが運ぶ、あるいは、一段飛ばして飛び道具のエムパベで一気に決めに行く、という必殺パターンが確立されている上に、セットプレーからも点を奪える、というのは相当な脅威。

今大会、グループリーグから一度も先制点を許していない、というのも特筆すべき事柄で、先制してからの試合運びにも心憎いばかりのしたたかさがある。

一方で、ジル―選手が未だにゴールを決められていないこと。そして、役割分担の明確さは、裏返せば流れの中での得点パターンが固定化している、ということでもあり、抑え込むターゲットを絞られやすい、というのが難点はある*4

クロアチア〜高い技術と多彩な攻撃パターン、そして魂の守り。

1回戦 対デンマーク 1-1

ボール支配率53%、シュート21本(うち枠内6本)/相手シュート15本(うち枠内3本)

シュート者上位:ペリシッチ7、ラキティッチ3、モドリッチ3 ほか

パス成功者上位:ラキティッチ70、モドリッチ67、ビダ62

準々決勝 対ロシア 2-2

ボール支配率65%、シュート17本(うち枠内3本)/相手シュート11本(うち枠内3本)

シュート者上位:クラマリッチ3、モドリッチ3、マンジュキッチ3

パス成功者上位:モドリッチ93、ロブレン81、ラキティッチ76

準決勝 対イングランド 2-1

ボール支配率54%、シュート21本(うち枠内7本)/相手シュート10本(うち枠内1本)

シュート者上位:ペリシッチ7、マンジュキッチ3、レビッチ3

パス成功者上位:ブロゾビッチ76、ラキティッチ69、モドリッチ63

数字だけ見ると、クロアチアが決勝トーナメントに入って以降の全ての試合で、ボール支配率、シュート数ともに相手チームを圧倒していることが良く分かる。

チームのスタイルとしてはフランスとは対極で、各人の高い個人技をベースに手数をかけて攻める、スペインや近年のドイツのような戦い方をするのだが、そこに“緩”を“急”に変えられるモドリッチ、というスーパースターが絡むことで、敗退したチーム達とは大きな違いを生み出すことができたのだろう。

相手に合わせてシステムも微妙に変えてくるし、攻撃パターンもマンジュキッチ、ペリシッチ、クラマリッチといった選手たちがフレキシブルに動き回り、レビッチのドリブル突破等によりアクセントを付けるオプションもある等、実に多彩。

パスの出しどころすら、モドリッチラキティッチ、ブロゾビッチ、と、相手やコンディションによりいろいろと変えてくるから、明日の試合も、実際に始まるまでは、誰がどこで仕事をするのか、相手が捕捉するのは難しい。

一方で、内容的に圧倒しているにもかかわらず、3試合とも120分戦わないといけなくなったことからも分かるように、クロアチアの試合運びはフランスやベルギーほど洗練されたものではない。いずれの試合も、相手チームに先制点を許し、それを追いかける展開になっていたために、余計にハラハラさせられることも多かった*5

決勝戦も、ひとたび相手に先制を許せば、攻めても攻めてもゴールが遠い、という蟻地獄に嵌る可能性は否定できない。

逆に、点が取れなくても膠着した状況に持ち込めば、あとはGK・スバシッチ選手を中心に、気持ちの入った激しい守備で耐え抜くこともできる。とにかく先に点をやってしまって追いかけるような展開にしないことが一番である。

                                                           なお、最後に、各メディアでは圧倒的に「フランス有利」という前評判になっているが、今大会での両チームの共通の対戦相手、アルゼンチンとの試合を基準に考えると、自分は各選手万全ならクロアチアの方が一枚上だと見ている。、

だからこそ、変なところで足元をすくわれないように、と今はただ願うのみ。

最後の最後に、最高峰の舞台での、最高峰の戦いを目撃できると信じて、それまでゆっくり鋭気を養うことにしたい。

*1:最後の最後までベルギーのカウンターは速く、鋭く、そして美しかった。アザール選手のドリブルとデブライネ選手の糸を引くようなスルーパスを決勝の舞台で見ることができなかったのがつくづく悔やまれる。

*2:日本対ベルギーに関しては、まぁ日本にも勝ち上がってほしかったところはあるが、その次の試合、よりグレードを上げた高速カウンターでブラジルを葬り去った赤い悪魔たちの姿を見たら、やっぱりあの結果で良かった、と思わずにはいられなかったところはある。尻上がりに調子を上げていたウルグアイ、コロンビアは、主力選手が万全な状態で見たかったところもあるが、仮に万全だったとしても「トップ3」に入るのは難しかっただろう、と思う。

*3:データは「スポーツナビ」で毎試合公表されているスタッツからの引用。

*4:流れの中で意表をついて得点を生み出せる選手はパバール選手くらいかな、というのがこれまで見た中での印象である。

*5:その分、ドラマティカルな試合が続き、視聴者の支持、共感を集めることになったのも、また事実なのだが・・・

2018-07-06

[][]夢から醒めた後に残るもの。

午前3時前からテレビにかじりつき、防戦一方の展開に「1点取られたら寝るぞ」と心に決めていたのに、後半早々、立て続けに決まったゴールに酔いしれ、ひとしきりあり得ない妄想すら抱いた後に本物の欧州サッカーのクオリティを見せつけられ、それでも体を張って守り続ける青いサムライ達を涙ながらに応援し、「こうなったら延長戦、最後の最後まで見届けるぞ」という覚悟を決めたところで襲ってきた一瞬の歓喜と深い落胆。

そのまま仕事に行き、とめどなく語りたい気持ちを抑えつつ、時々いくつかのシーンを思い返しながら余韻に浸る。

でもその日の夜くらいから、あちこちで繰り返される“称賛の嵐”にだんだん辟易するようになってセルジオ越後の辛口コメントを見てほっとした気分になったり、その一方で、数日経って始まった準々決勝の試合を眺めながら、この舞台に立ち続けていてほしい、という願いが今回も叶わなかったことに空しさを感じていたりする。

そんな日々を過ごすと、自分も普通の日本人なんだな、ということを改めて感じるわけで・・・。

もちろん、元来ひねくれ者の自分としては、あちこちで言われているような「ラウンド16のベストゲーム」という評価には、どうしても首を傾げたくなる。

ベルギーの攻撃のレベルは、フランスの速さやクロアチアの美しさ、ブラジルの狡猾さに比べると一レベル低かったし、守る側の日本にも、スペインを葬り去ったロシアのような安定感も打たれ強さはなかった。世界最高レベルのスピードと技巧がぶつかり合ったフランス×アルゼンチン戦や、最強の矛盾対決だったスペイン×ロシア戦、そして、最後の最後まで決着が見えなかったクロアチア×デンマーク戦やコロンビア×イングランド戦の方が、試合のレベルとしては遥かに高かった・・・等々。

それでも世界の観戦者がこの試合に価値を認めるのだとしたら、余計な笛がほとんど鳴らなかったクリーンさと、両極端の状況が90分、というか後半の45分間+αの間にギュッと凝縮された密度の濃さゆえだろうが、それは裏返せば、序盤から攻められ続けていたにもかかわらず、ハーフタイムを挟んで2点先行する、というこれ以上ない展開、優位性をその後の僅か40分で覆されてしまった日本代表のナイーブさが試合を魅力的なものにしてしまった、ということでもある。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

青いユニフォームを着て先発した11人、特にフィールドの10人が、今大会グループリーグからこの試合まで一貫して素晴らしかったことは疑いようもない。

吉田選手、昌子選手の両CBは、安定した守備力を発揮するにとどまらず、積極的に攻撃の起点となって中盤の負担軽減に大いに貢献。両サイドの長友選手、酒井宏樹選手は豊富な運動量で、何度となく敵陣を切り裂いたし、守勢に回ったときの戻るスピード、体の張り方ともに申し分ない安定感だった。

長谷部選手はベテランならではの味で柴崎選手の仕事の場を作ったし、原口選手の体を張ったディフェンスと献身的な上下動は、サッカーの神様から決勝トーナメントでの先制点、というプレゼントを受け取るにふさわしいだけのものだった。

前線の大迫選手へのマークは、試合を経るごとにキツイものになっていったが、それでも「ザ・ポストプレー」と言えるだけのパフォーマンスは最後まで維持されていた。

そして、中盤を構成した柴崎選手、乾選手、香川選手の働きには、陳腐な言葉では到底語りつくせないくらいの価値があった。

ベルギーを一転して地獄に追い込んだ柴崎選手のスルーパスは、彼の一世一代の偉業として語り継がれるだろうし、4試合すべてに先発して細やかな攻撃を組み立て続ける彼の存在がなければ、ラウンド16の舞台すら遠い夢のまま終わったはず。また、乾選手と香川選手の組み合わせは、「得点力不足」を長年批判されてきた日本代表が出した最良の回答だった。

だが、残念ながら、「最初の10人」が素晴らしすぎたことが、後半リードした後の試合の流れをキープする上で致命的な、選手交代の遅れを招くことになってしまった。

試合の結果だけを見れば、勝敗を分けたのは、2点のビハインドを負って窮地に追い込まれたロベルト・マルティネス監督が後半20分に切ったフェライニ選手、シャドリ選手という交代カードであり、受け身に回った日本代表が後半36分まで決定的な手を打てずに時間を浪費したことが、カードの効果を決定的なものにしてしまったことも全く否定できない事実である。

誰が監督でも、あのフィールドの10人をゲームの途中で替える、という選択をする勇気はなかなか持てなかっただろうし*1、グループリーグの最終戦で先発組とベンチ組の「格差」を嫌というほど味合わされた後では、切れるカードもあの2枚(本田選手と原口選手の交代と、山口蛍選手と柴崎選手の交代*2)くらいしか思いつかなかったはず*3

ただ「切り札」として、ベンチに久保裕也選手や中島翔哉選手がいてくれれば、せめて浅野拓磨選手くらいはいてくれれば・・・という思いも、「解任」前の時代から代表を見つめていたサポーターなら当然抱くわけで、フィールドで即興でゲームをコントロールできる“大人な選手たち”を揃えた代償が、あの「美しい敗戦」だというのは、何と言う皮肉か、と思わずにはいられない。


今回のW杯前の、ハリルホジッチ監督の解任、西野朗「暫定」監督の登板、そして23人の代表選手の選考、といった過程を極めて批判的に眺めていた自分としては、ここまでの日本代表の勝ち上がりに半分心湧き立ちつつも、複雑な思いで眺めていたところはある。

特に、グループリーグ突破が決まって、西野朗監督の“選手ファースト”的なスタンスが称賛され始め出したときは、このまま行くと、日本サッカー、ひいては日本社会の将来に誤ったメッセージを与えてしまうんじゃないか、ということすら危惧していた*4

だから、敗戦から数日経った今となっては、歴史を塗り替えることなく終幕を迎えた、という今大会の結果にちょっとした安堵すら覚えているし、アップしたエントリーも、上記のとおり、どうしてもシニカルな評価が先行することになる。

それでも、あの夜、既に功成り名を遂げている日本代表のプロ選手たちが、代表最後になるかもしれない試合で体を投げ出して必死さをフィールドで表現していた*5のをリアルタイムで見て、ただただ「幸運の女神よ微笑んでくれ」と祈っていたことは正直に自白しなければなるまい。

後半48分、本田選手が蹴ったフリーキックの弾道に8年前の記憶を重ね、その後、悲劇の導線となったあのCKのシーンですら、ハリルホジッチ監督であれば決して許さなかったであろう、ゴール目がけた大きな弾道に微かな期待を寄せてしまっていたことも。

それくらい、あの90分とちょっとの時間は、様々な理屈を超えたところにあった。

あの世界のアザールを鬼気迫る形相に追い込み、クールなデ・ブライネやクルトワの顔さえ歪ませた、要は世界ランク3位のスター軍団からそこまでの本気を引き出した一世一代の試合を演出した、という事実を「良く頑張った」だけで終わらせてしまうのはあまりにもったいないから、「(そこそこ)勝てば官軍」ではなくて、冷徹にここに至るまでの経緯とロシアでの19日間を振り返らないといけないし、今後の強化の方向は、逆流した流れを止められなかった代表チームのナイーブさ、選手層の薄さ(遡ればそれを招いた選手選考の問題)や、「プラス30分」に持ち込めなかったしたたかさの欠如*6を克服することに徹底的に向けてほしいところなのだけど*7、せめて、7月15日の決勝の日を迎えるまでは、夢と現実と行き来しつつ、薄れゆく「余韻」にしがみついていたい、と思うのである。

フットボールをささやかな楽しみとする一日本人として。

*1:交代で入った本田選手が、近年の代表の試合では見たことがないくらいキレキレの良いデキだっただけに、もう少し早く投入していれば、ベルギーの怒涛の反撃の流れを少しは止められたのではないか・・・という思いはあるが、あくまで結果論。フィールドに出るまでパフォーマンスの優劣を予測できないタイプの選手を投入できるような試合展開ではなかった、ということは記憶にとどめておく必要があるように思う。

*2:個人的には替えるなら長谷部選手の方ではなかったか、と思うが、あれだけ押される展開の中ではやむを得ない選択だったというほかない。

*3:結果的に、交代カードを1枚残す形で試合を終えることになってしまったが、宇佐美選手も武藤選手も世界レベルの戦いでフィールドに出すのは厳しい(岡崎選手も負傷で長い時間使うのは無理)、という現実があった以上、仮に延長戦に入ったとしてもオプションはほとんどなかった、と言わざるを得ない。自分は一点返されたシーンを見て、「真っ先にGKを替えろ」と心の中で叫んでしまったが、それはもう交代カード以前の問題だから、いずれにしてもどうしようもなかった。

*4:高度な戦術を練る余裕もないような状況で、目の前の大きな大会に向き合わないといけない立場の監督が、経験豊富な選手達を選んで彼らに多くを委ねた、というのは、当座を乗り切るための苦肉の策に過ぎない。海外での経験も代表での経験も豊富な選手たちが揃っていた、という巡りあわせゆえに一応の結果を出すことはできたが、この先、4年、8年同じことをやっていたら、そこには「停滞」しかないわけだから、今回の西野監督の采配も指導法も、そして選手選考も、決して将来の“模範”としてはならないと自分は思う。それをやってしまうと、本来、世界の先頭を目指してもっとも尖った存在でなければならない「日本代表」が、職場の馴れ合いの構図の中で生産性を上げられずに停滞している多くの日本の大企業と同じ轍に陥ってしまうことになる。

*5:もちろん、敵方ベルギーも4年前に比べれば決して「若い」チームではなく、コンパニ、フェライニ、メルテンス、といった30歳代の選手も混じるチーム構成で、彼ら自身の必死さも相当のものだった、ということは忘れてはいけないと思うけど。

*6:それを「潔さ」といってしまえば、あたかも良いことのようにも思えるし、グループリーグ最終戦の“ボール回し”が批判されたからなおさらそういう論調もあり得るのかもしれないが、やはり自分たちがボールを持っていながら、最後の最後で電撃カウンターを食らった、という結果は重く受け止めないといけない。

*7:今大会が「ベスト16でも批判される」大会となって初めて、日本のサッカーはその先に進めるのだと思っている。

2018-07-01

[][]称えられるべき結果と、顧みられるべき伏線と。

日本代表のW杯グループH最終戦、ポーランド戦での“負け逃げ”を見て、このモヤモヤした気分をどう表現しようか・・・と悩んでいる間に、あっという間に日は流れ、とうとうノックアウトステージ突入。しかも最初の試合からW杯の歴史を塗り替えるような壮絶なゲームを見せられた余韻に浸っていたこともあり後手後手に。

その間、世論は大いに盛り上がったが、何となく「決勝トーナメント進出、という結果を出したんだから西野監督の勝ち」、「一歩間違えたら大恥をかく状況でも肝を据えて作戦を遂行した西野監督はすごい!」といった論調で収束しつつある*1

サッカーのこの種の大会においては、グループリーグの最終戦で、同時に行われる他会場の結果を見ながら「リスクを冒さない」戦い方をすることは決して珍しいことではない。今大会でも、負けるとオーストラリアの結果次第で敗退の可能性も残っていたデンマークが、勝ち抜けが決まっていたフランス相手に繰り広げたゆるい試合などは、あくびが出るくらい退屈な試合だった*2し、遡れば日韓W杯の時にポルトガルの「和平提案」を一方的に打ち砕いた隣の国は、むしろ“ならず者”としてサッカーメディアのバッシングを浴びたくらいだ。

ただ、今回の日本代表の「最後の10分」が異質だったのは、「負けている状況」での選択だったこと。

先述した「取引」の多くは、試合が拮抗して、「双方が勝ち点1でいいや」と思った時に成立するものだし、ネットでネタとして拡散されていた修哲FCの“鳥かご”は勝ち越した後の「逃げ切り策」として繰り出されるものである。

そういった「勝者の策」を、「このまま試合が終われば勝ち点を積み増せない」という状況で遂行する、というケースは、自分は他の大会でもあまり見たことはないし、それこそが海外メディアが想像以上に厳しい論調になっている一因でもあると思われる。

西野監督自身も認めているように、他会場の展開が変われば“策に溺れる”結果となってしまう状況で策を遂行するのは、合理的なリスク管理の範疇を超えた“ギャンブル”でしかない*3

ましてや、最後の試合で、本田選手、香川選手をベンチに温存したまま敗退する、ということになればまさに大恥。

だからこそ、攻撃のカードを捨ててでも「ギャンブル」を遂行し、決勝トーナメント進出を勝ち取った西野監督の胆力が今称えられているわけだし、自分も「一大会おきのラウンド16進出」という日本サッカー界の歴史を絶やさなかった、という“結果”そのものを否定するつもりは全くないのだが・・・。


自分は、そもそもこんな物議を醸すような“窮余の一策”を繰り出さないといけなくなった伏線としての「先発メンバー6人替え」の方に、もっと目が向けられるべきだと思っている。

セネガル戦でピッチに投入された瞬間に勝ち越しムードを消滅させた宇佐美貴史選手は、先発で起用されてもやはり同じことだったし、コンディション不良がささやかれていた岡崎慎司選手は50分持たなかった。

決して出来は悪くなかったものの、代表ではほとんど試されたことがない攻撃的ポジションで起用され、戸惑いも感じられた酒井高徳選手、前半の動きは良かったものの後半に入って試合から消されてしまった武藤嘉紀選手。

そして、極めつけは、お馴染みのなんちゃってオーバーヘッドでチャンスを潰し、挙句の果てには自陣ゴールに「とどめ」の一発をぶち込もうとした槙野智章選手・・・。

山口蛍選手のように、個人的には最初から使って欲しかった選手まで結果を出せなかったのは残念だったが、それ以外の選手に関しては、起用した時点でこうなることは分かっていたわけで、本来勝つか引き分けがマストの試合、しかも交代枠が3人分しかない中で、あの先発メンバーはあり得ない。

それでも“西野采配”を熱狂的に支持する人たちは、「結果的には、本田選手や香川選手を万全の状態で決勝トーナメントに臨ませることができるようになったのだからいいだろう」とか、「これで今大会の代表に欠かせない選手が明確になった」とか、いろいろと褒め称えているのだけど、あんな状況で試合に出て孤軍奮闘を余儀なくされた柴崎選手のストレスとダメージは如何ばかりか、と思うし、オプションを増やせたならともかく、結果的に交代のオプションを減らしてしまったわけだから、後者の観点からも結果的には大失敗*4

岡崎選手負傷、宇佐美選手不調*5、という状況で本来のカードを2枚切っても、同点に追いつくどころか、点差を広げられないようにするのが精いっぱい、という状況だったからこその「ギャンブル」だった、ということから目をそらしてはいけない。

3日未明に行われるベルギー戦で、香川選手、本田選手が躍動してベスト8進出、なんてことになれば*6、「西野監督は日本サッカー史に残る名監督」ということになるのだろうけど、その前にまず、先発メンバーにしても、交代選手にしても、現時点でベストの選択を!というのが、今の自分の切実な願いである。

*1:元代表監督の岡田武史氏など、関係者がいち早くこの線でコメントした影響も大きかったと思われる。https://www.nikkansports.com/soccer/russia2018/news/201806300000133.html

*2:今大会中、最大の凡戦と言っても良いだろう。

*3:例えば今大会のデンマークはオーストラリアとの勝ち点差が「3」あったから、ドローで1つでも勝ち点を取れば相手の試合展開に関わらず決勝トーナメントに進むことが可能だった。そういう状況で「引き分け狙い」の緩い試合をするのはリスク管理の範疇。一方、勝ち点差が1つ、2つしかない状況で同じことをして、競り合っているチームが大差で勝ち点3を獲れば当然プランは狂う。そしてポーランド戦開始時点の日本代表の勝ち点はセネガルと全く同じ。セネガルが1点でもとれば敗退の危機を迎える状況だったのだから、そこで同点すら狙わずに試合を終わらせる、というのは、博打以外の何ものでもない。

*4:それなら、遠藤選手とか大島僚太選手を試した方がまだ先々に希望が持てたのに・・・と思わずには得られない。

*5:というか、普通にやってあれが限界・・・。

*6:個人的には、16年前のイメージとここまでのトーナメントの流れで延長戦まで戦ってドロー、そしてPK戦で奇跡的勝利、というのが良い方の一番現実的なストーリーだと思っているのだが、今のベルギーは16年前日本で戦ったチームと比べて遥かに強い。付け込む余地があるとしたら、唯一の弱点である本戦トーナメントでのチームとしての経験の乏しさとか勝負弱さだが、それは日本も同じだから、強調できる要素は少ない。

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