企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

この日記のはてなブックマーク数

2017-06-18

[][][]総会シーズンの真っただ中で、空を仰いでため息をつく。

今年に限った話ではないが、6月も中盤に差し掛かると、4月-3月を一区切りとする日本企業の多くは、否応なしに「株主総会」というフレーズを意識せざるを得なくなる。

そして、この季節は、どこまで実際に総会の運営にかかわっているかにかかわらず、連動した役員人事やら何やらで、どことなくそわそわする人間が多くなる湿っぽいシーズンでもある。

これまでこのブログでも、明に暗に触れてきたとおり、現場でビジネスを回して支えてナンボ、という信条の下で生きている者にとっては、

株主総会なんて、ただの儀式」

に過ぎない。

だが、会社の内にも、そんな「儀式」に過剰に神経を尖らせる人々は決して少なくないし、外に目を向ければ、ここ数年増殖一途の“コーポレート・ガバナンス厨”の輩たちが、上から目線で「儀式」にことさらに意味を持たせようとする。

すっかり“厨”のスポークスマンになってしまった感のある日経新聞などは、「株主提案の増加」を好意的なトーンで取り上げ、最近では「相談役・顧問制度」に疑問を唱える株主提案にスポットライトを当ててみたり、と、話題作りに必死なのだが、当の大手製薬会社株主提案をよく読めば(&セットで提案されている議案と並べて読めば)、提案の背景に建前論と異なる理由や思惑があることは明白なわけで、そういった部分を捨象して、あたかも高尚な企業統治体制の議論に持ち込もうとするメディアには正直辟易する。

また、本来は資産運用の一手段として株式を保有しているに過ぎない機関投資家に対して、“熟慮して議決権行使をせよ”というプレッシャーをかける昨今の風潮にも解せないところは多い。

自分はひねくれ者だから、一個人投資家の立場で議決権行使しようと思ったときに、デフォルトが「会社提案賛成、株主提案反対」となっているのを見てしまうと、思わず、一つや二つは逆の投票行動をしたくなってしまうし、現に自分の中で基準を立てて、ヒットした場合には“会社が嫌がる”方向での議決権行使をすることもあるのだけれど、それが対象企業の統治体制に何らかのインパクトを与えることまで望んでいるわけではないし、ましてや、企業のパフォーマンス向上に寄与するなどと考えたことすらない。

企業の業績を左右するのは、専ら客観的な市場環境と現場での一つひとつの地道な取引の積み重ね、そしてちょっとした「運」であって、上のレベルでの経営判断がああだったからこうなった、というのは、ほとんど後付けの理屈に過ぎない。仮に「上の判断」が命運を分けるようなことがあったとしても、それは「執行」レベルでの話。

だから総会で雛壇に並ぶ取締役に対しては、通り一遍の「説明義務」を果たさせ、万が一の場合には一身をもって「責任」を取る役回りを果たさせればそれで十分なのであって、それを超えて何かにコミットさせようとするのは大いなる無駄だし、投資目的で株式を保有する株主予定調和を超えた行動を求めるのは、もっと無駄なことだと思うわけである*1

年々、役所も含めた「声の大きい人々」と、実際に企業の活動を支える現場の感覚との乖離が大きくなっている現状、そして、コポガバをネタにして私企業の箸の上げ下ろしにまで“口先介入”しようとする、世界でもあまり類を見ないムードが日増しに強まっている現状を前に、今は溜息しか出てこないのだけれど、「いつかブームは去る」と念じつつこの佳境を乗り切ろう・・・そんな気持ちでやっている。

*1:そもそも、投資家には、株式を好きな時に売却する自由が与えられているわけだから、賢明な投資家であれば、効果の薄い「株主としてのアクション」に労力をつぎ込む前に、企業のパフォーマンスの良し悪しを見抜いてポートフォリオを組み替える、というのが常識的に求められる行動であるはずだ。

2017-02-10

[][]そしてまた会社法改正の季節。

最近、ひっきりなしに基本法の見直しを議論している感がある法制審議会に、今度は「会社法改正」が諮問された。

http://www.moj.go.jp/content/001216452.pdf

諮問された内容をそのまま引用すると、

「近年における社会経済情勢の変化等に鑑み、株主総会に関する手続の合理化や、役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備、社債の管理の在り方の見直し、社外取締役を置くことの義務付けなど、企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討の上、当該規律の見直しを要する場合にはその要綱を示されたい。」(強調筆者)

ということで、上記強調部分がこれから審議されることになる。

前回、法制審議会に会社法改正の諮問がなされたのは、まだ民主党が政権を握っていた平成22年で、気が付けばもうあれから7年も経ってしまっているから、経済社会を規律する法律の改正審議のタイミングとしては、決して“早い”とは言えないのかもしれない。

ただ、前回は社外取締役の義務づけ等をめぐって法制審部会での審議が難航した、ということもあったし、要綱が出た後も国会での法案審議で一悶着あって、改正法が成立したのは平成26年になってからだった。施行に至っては平成27年5月だから、何となく、ついこの前改正したばかりなのになぜ? という思いもこみあげてくる。

前の改正要綱がまとめられてからの5年弱の間に、世の中(というか、会社の機関をめぐる状況)がそれなりに大きく動いた、ということは否定しないものの、だからこそもう少し様子を見た方が良いのでは? というところもあるわけで・・・。

ちなみに、日経紙の1面では、「株主提案権の濫用を防ぐ」ための改正審議が今回の目玉のような取り上げられ方をしているが*1、今回の改正の前段階として公益社団法人商事法務研究会に設置されていた「会社法研究会」での議論等を見る限り*2、この論点でドラスティックな法改正が行われるとはちょっと考えにくいような気がするし、「社外取締役義務付けの要否」についてもあまり手を付けずに終わるのでは・・・という印象が強い。

そうでなくても大型法改正が相次いでいる今、再び会社法まで大幅改正、ということになってしまうと、国会法案審議も、実務サイドの対応も消化不良なものに終わってしまう可能性が高いだけに、個人的には、小幅にひっそりと審議が進むことを願うばかりである*3

*1日本経済新聞2017年2月10日付朝刊・第1面。

*2https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/corporatelaw

*3:生の制度に手を付けるより、テクニカルな論点に関してテクニカルな議論をとことん突き詰めた上で結果は鼠一匹、くらいの方が、みんな幸せだと思うのである・・・。

2015-08-06

[][][]こんな時代だからこそ光る、第一人者の一言。

会社法改正やら、「コーポレートガバナンスコード」制定やら、という動きもあり、最近、メディアで(特に某経済新聞で)「社外取締役が必要だ!」的な報道に接しない日はない、といってよいくらい偏向した世の中になってしまっているのであるが、そんな中、労働経済学の世界では“巨匠”ともいうべき小池和男・法政大学名誉教授が、現状に対する強烈な批判を込めた論稿を「経済教室」に寄せられている。

「日本の競争力を高めているのはブルーカラーだ」等々、長年の持論である“(旧)日本型雇用システム”の素晴らしさをひとしきり強調した上で、「課題」として、会社における「働きの担い手の発言権の確保」を挙げ、

「企業の役員会への従業員代表の参加」

を提案されている。

そして、欧州における従業員代表制度の定着状況と、その効用を一通り紹介した上で、以下のように述べて、論稿を締めくくっておられるのである。

「日本は米国にならってか、一切そうした議論さえない。」

(略)

「いまの日本では、社外取締役の重用のみ強調される。社外取締役の識見を疑うわけではないが、非常勤でしかもその業種の経験のとぼしい人たちである。他方、長年その企業で働き、また取引先との折衝をとおして業界を知り、海外を知る従業員代表の役割を軽視するわけにはいくまい。」

「米国で社外取締役は結局、社長の『お友達』が多いという。従業員代表は、社長が選ぶことはできない。その知恵を考えれば、それこそ尊重すべきではないだろうか。」

日本経済新聞2015年8月6日付朝刊・第29面、強調筆者)

これは、世の中を席巻する「成長戦略」論者にカウンターパンチを食らわすような、「競争力強化」という観点からの従業員代表制度の提案であり、読み終わった時に、何とも言えないようなシュールな気持ちに陥ってしまった。

ガバナンス体制をいくらいじくったところで、『企業の競争力/成長力』といったものには何ら影響しない」ということを自分は確信していて、それは「社外取締役」だろうが「従業員代表」だろうが同じだと思っているので、大嫌いな“米国型ガバナンスモデル推進論者”を真っ向から批判するコメントだからといって、それに直ちに飛び付こうとはさすがに思わない。

そもそも「会社、業界を知る」ということに重きを置くのであれば、「従業員代表」などという迂遠な制度を設けずとも「内部昇格」で取締役の人材を供給すればよいのだし、「社長が選ぶことはできない」という点についても、今の社内外の取締役の人選とどれだけ実質的な違いがあるのか、疑わしいところはある*1

また、企業統治強化、とか、利益一辺倒主義からの脱却、という視点で「従業員代表制度」を提唱する声はかねてからあり、自分も一時期そのような方向にシンパシーを感じたことはあったが、残念ながら、そのような方向性には忌まわしき民主党政権時代の「色」が染みつきすぎていて*2、このような見地からも到底推す気にはなれない。

経営層と労働者層の格差が固定化されてしまっている国(欧州などはその典型だろう)であればともかく、一現場の社員からボードメンバーにまで上り詰める、という道がまだ残されている間は、この国で「従業員代表」による経営参加を制度化する必要はない、というのが、今の自分の意見であり、上記記事を読んだ読者の方も、多くは同様の感想を持たれたのではないかと思う。

ただ・・・

やっぱり今の時代に「社外取締役」の効能に対して、真っ向から喧嘩を売るような論稿というのは、それ自体貴重なわけで、「日本型雇用システム/経営モデル」にシンパシーを感じているはずの経済学者、経営学者も、大衆メディアでは何となく声を潜めているように見受けられる中、これをあえて今書いた小池名誉教授と、この原稿をあえて載せた日経紙の編集者には、心から敬意を表しなければならないと思っている。

一方的な“押し付け”の議論だけでは何も変わらないわけで、願わくば産業界の中からも、最近とみに調子に乗っている連中に“ガツンと”くらわすような論客が出てきてくれることを期待したい。

*1:社内取締役であっても、社長の意向だけで全て人選がなされているような会社は、今の日本の大企業では皆無だと思うし(様々な派閥力学や“天の声”が影響してくるので・・・)、指名委員会等の機関を用いれば制度的にもそれを担保できる。逆に「従業員代表」といっても、現在の労使関係の実態を踏まえれば、多くの会社では会社の息のかかった人物が選ばれることになることは避けられないだろう。

*2http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20090723/1248581543のエントリーを参照。会社法改正が始まった時も、いろいろときな臭い動きがあったのは記憶に新しい。

2015-04-17

[][]「監査等委員会設置会社」移行ラッシュの報に接して。

すったもんだの末に昨年改正法案が可決成立した会社法が、間もなく施行の時を迎えようとしている。

そして、そんな中、期せずして、「平成26年改正会社法」の目玉となりつつあるのが、「監査等委員会設置会社」制度である。

某法律雑誌社のメルマガを見ながら、随分、「移行」のリリースが出ているなぁ、とぼんやり思っていたら、遂に日経紙も、まとめ的な記事を載せてきた。

「監査役会を廃止する上場企業が増えている。社外取締役が経営を監視する新たな制度が5月に誕生するのにあわせて、三菱重工業やアンリツなど80社超が移行を表明した。」(日本経済新聞2015年4月17日付朝刊・第3面、強調筆者、以下同じ。)

「社外取締役義務付け」をめぐって激しい攻防が繰り広げられた結果、平成24年9月に決定された「会社法制の見直しに関する要綱」の一丁目一番地、「企業統治の在り方」の章は、「監査・監督委員会設置会社制度(仮称)」創設、という記載から始まることとなった。

そして、法案において、法399条の2以降にひとつの節を立てて埋め込まれたところから、「監査等委員会」に名を変えたこの制度は、独特の存在感を発揮することになる。

これまでの「委員会設置会社」(改正法施行後は「指名委員会等設置会社」)に移行する場合と比べると、物理的、心理的な負担感が少なく、既存の「監査役会制度」に馴染んだ会社にとっても比較的違和感が小さいのではないか、というのは当初から言われていたことで、それでも、監査権限を有する(社外)取締役が、取締役会のメンバーとして、他の取締役と同等の権限を行使できるようになるのであれば、会社のガバナンスとしては良い方向に向かうはず、というのが、この制度を設けた人々の本来の思いだったはずである。

だが、皮肉なことに、この制度が真に脚光を浴びたのは、改正会社法成立後の更なる動きの中で、“ソフトロー”の名の下に、上場を維持するためには「社外取締役」を選任しなければならない、という状況が作り出されてからであろう。

一部の法律家の積極的なPRもあって、「今受け入れている社外役員をそのままスライドさせることで、最小限の労力で『社外取締役の複数選任』という要請を満たすことができる」(仮にうまく行かなくても、任期が短い分後々のリカバリーは可能)、「仮に新たな人材を『社外取締役』として迎え入れることになったとしても、社外役員に要するコストに大きな変動はない」という魔法のような制度に、多くの関係者が目を向けた。

その結果、あれよあれよ、という間に、移行を表明する会社が「82社」まで達するに至り、これまではもっぱら、前向きな側面からしか新制度を報じてこなかった日経紙も、この日の記事では、とうとう、

「新制度に移行する企業が増えているのは、社外役員を確保する負担が小さいという側面もある。」

「社外役員を確保する手間や費用を減らすためだけに移行する企業が増えれば企業統治の質がかえって低下する恐れがある。」(同上)

と警鐘を鳴らさざるを得ないような状況になってしまった。


この問題に関しては、昨年、ブログで有名な山口利昭弁護士が出された「ビジネス法務の部屋からみた 会社法改正のグレーゾーン」という書籍の中でも、「監査等委員会設置会社への移行に対する危惧」というタイトルの項で、「監査等委員会設置会社への移行のどこにリスクが潜んでいるか」ということが、比較的詳細に分析されている*1

「社外取締役が少なくてよいというのは、社内常識優先、有事になっても有事と気づかない経営環境がそのまま維持される可能性が高く、人事政策や人件費の問題をメリットとして取り上げることは、裏を返せば、そもそも監査業務軽視の現れである」(同書138頁)

というところまでは日経紙の指摘と同じなのだが、山口弁護士の指摘は、さらに、監査等委員会設置会社に「取締役会の決議によって重要な業務執行の決定の全部又は一部を取締役に委任することができる旨を定款で定めることができる」(法399条の13・第6項)という「スピード経営の実現」のための特権が与えられ、監査等委員会の承認によって、利益相反取引の承認決議に賛成した取締役の任務懈怠の推定規定を排除できる(法423条4項)という「リーガルリスクの低減」といったメリットを享受できる、という制度になっていることにも及び、

「スピード経営の実現は社長の暴走を許すことになり、任務懈怠の推定排除は、責任逃れのためのアリバイ工作にも活用できることになる。」(同書138頁)

として、“暴走を止められなくなるリスク”にまで言及しているところに特徴がある、と言える。


読んでいくと、いろいろと興味深い記述が登場するのだが、その一方で、曲がりなりにも会社の中で20年近く飯を食い、ここ数年は、ガバナンス周りのあれこれもつぶさに見てきた者としては、仮に「監査等委員会設置会社」に移行したとしても、山口弁護士が書かれているような“最悪シナリオ”に至る可能性は、決して高くない、と思ってしまうのも確かである。

「権限の委譲」ひとつとっても非常に慎重な人が多い、というのが伝統的な日本企業の経営者の特徴だけに、(誰かが焚き付けでもしない限り)安易に委任事項を増やす、という方向には向かわないだろうし、その意味で、↑で紹介した様々な危惧や懸念は、杞憂に終わる可能性が高いだろう、と自分は思う。

ただ、視点を変えて、法令上「常勤の監査役」を置かなければならない監査役会設置会社(法390条2項参照)とは異なり、非常勤であっても「社外取締役」であれば要件を満たせてしまう「監査等委員会設置会社」が、真に求められる機能を発揮できるのか、と問われれば、自分も首を傾げざるを得ないわけで、移行後の事務方の体制も含め、よほど丁寧に制度設計を行わないと、中途半端なガバナンス体制になってしまうことは否めない。

ここからまさに始まろうとしている「制度間競争」の行方がどうなるのか、今先々まで見通すことは極めて難しいことなのだけれど、あの時飛びついた“魔法”のような制度が悪夢の始まりだった、ということにならないように、制度を使う側も、それを見守る側も、緊張感をもって、“実務の在り方”を考えて行かねばならないなぁ、と思うところである。

*1:山口利昭『ビジネス法務の部屋からみた 会社法改正のグレーゾーン』138頁〜142頁(レクシスネクシス・ジャパン、2014年)

2015-03-27

[][]壮絶な親子喧嘩に決着は付いたのか。

同族企業の“親子の愛憎劇”が、定時株主総会における委任状争奪戦、と結びついて、利害関係のない野次馬にとっては、格好の“見世物”になってしまった感がある、「大塚家具」事件。

不幸にも、同社が「12月期」決算の会社で、記者の取材にも余裕がある(?)時期に総会が巡ってきてしまった、ということもあってか、父・大塚勝久会長側から株主提案が出されることが明らかになってからは、ほぼ連日のように、「誰がどっちに付く」的なネタが連日、日経紙の紙面を飾るような状況にもなってしまった。

とはいえ、蓋を開けてみれば、結果は至極順当。

「親子間で経営権を巡る対立が続いていた大塚家具は、27日開いた定時株主総会で大塚久美子会長らを取締役に選任する会社提案を可決した。父親で創業者の筆頭株主、大塚勝久会長らを取締役に選任する株主提案は否決した。」

「16万5340の議決権行使数に対し、会社提案への賛成票が61%と過半を占めた。」

日本経済新聞2015年3月27日付夕刊・第1面)

元々、会社と株主が対決するような構図の争いになった場合、現経営陣があまりに酷いことをやっている、というようなケースでない限り、通常の機関投資家は会社側に付く。

ましてや、本件は、報じられている情報による限り、「現代的な経営を志向する現経営陣」と、「過去の成功体験に固執する創業者」という対決構図になっており、騒動勃発後の会社側からの情報開示も適切、かつ効果的になされていたように見えた*1、ということもあったから、創業一族以外の株主があえて会社提案に反対し、会長側に付くということは考えにくい状況だったと言えるだろう*2

その意味で、「親子喧嘩」の決着は、今年1月の取締役会で、現会長が社長から解任され、大塚久美子氏が社長に復帰した時点で事実上付いていた。

そして、会社側が、総会終了直後にHPに掲載した、大塚勝久会長退任(http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-3-27-2.pdf)というリリースが、この勝負に名実ともに決着が付いた、ということをより強く印象づける結果になっている。


もちろん、これまでの会長側の動きを見ていると、然るべき専門家から法的助言を受けながら様々な対抗手段を講じてきていることは明らかで、この種の話においては、舞台を法廷に変えて争いを継続しようと思えばできる材料も事欠かない*3から、「泥沼」の争いに持ち込もうと思えばできる、というのは事実。

ステークホルダーにしてみれば、「会社の置かれている状況を考慮して、矛を収めてくれ・・・」という思いで一杯だろうが*4、人の“情”が絡んだ話になると、どうしても理性的な解決に至るまでに、時間がかかってしまうのは世の常。

会社側が自画自賛するとおり*5取締役10名中6名が社外取締役、監査役も3名全員が社外監査役、と、ガバナンス体制としては「国内最高レベル」の体制が整っただけに、あとは「業績」という目に見える形を残すことが、“雪解け”に向かうための一番の早道だと思うのだが・・・。


なお、様々なソースからの情報が飛び交っていて、見えづらくなっている現社長の人物像だが、自分は、ネット上で見つけた一橋大の広報誌(HQ)に掲載されていた彼女のインタビュー記事(http://www.hit-u.ac.jp/hq/vol013/pdf/13-all.pdf、43〜48頁)を読んで共感するところが多かったし、経営者、というより、同じように企業社会の中で働いてきた「人」としての魅力を強く感じた。

ちょうど10年務めた大塚家具を離れて、自分の会社を興した頃のインタビュー記事のようだから、なおさら人間味がストレートに出ているのかもしれないが、法律を学ぶために筑波大の法科大学院に入った動機なども、理解できるところは非常に多かった。

プレイヤーとしての優秀さや魅力と、経営者としてのそれ、には、異なるところが多いし、仮に経営者として優れた人物だったとしても、それが常に良い「結果」に結び付くわけではない。

それゆえ、この先の彼女の未来が輝きに満ちているのかどうか、今の時点で断言することはできないのだが、人間関係が密な環境で10年どっぷりと仕事に漬かった後に、一呼吸置いて外の世界を見てから戻ってきた、というキャリアは、こういう会社であればあるほど貴重だと思えるだけに、1年後の今頃には、良いニュースが聞けることを、ただ、願うのみである。

*1:例えば、株主提案に対する取締役会意見を示した、http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-2-17.pdfや、コーポレートガバナンスコードへの考え方を表明した、http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-3-12.pdfなど。

*2:総会直前に、大口取引先のフランスベッドが会長側を支持する、と表明した旨の報道に接した時は、「え?」と思ったが、それが主流の動きではなかった、ということは、総会での議決権行使結果の数字が、明快に証明している(http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-3-27-1.pdf参照)。

*3:例えば、既に話題になっている一族の資産管理会社(約10%の株式を保有)の支配権の問題はあるし、今回の総会の委任状勧誘に伴う手続きや、総会当日の議事運営等を問題にすることもありうるだろう。

*4:景気回復基調にあるとはいえ、小売事業者が置かれている競争環境は、決して内紛にあけくれられるほど悠長なものではない。特に、まだ時代に合わせたビジネスモデルが確立していないように見えるこの会社の場合、早急に“成功モデル”に辿り着かない限り、かつての同族大手小売事業者と同じ道を辿ることになってしまうだろう。

*5http://www.idc-otsuka.jp/company/ir/tanshin/h-27/h27-3-12.pdf参照。

カスタム検索