企業法務戦士の雑感 このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2017-09-28

[]「給費制廃止」の不当さをどう争うか。

自分が当事者世代になることは免れたものの、一歩間違えば、というところもあっただけに、何とも言えない気分になる司法修習の「貸与制」化問題。

そして、“被害”を受けた元司法修習生たちが起こした訴訟の最初の判決が2つの地裁で出された。

「国が司法修習生に対し、給与に当たる月額約20万円を支給する給費制を廃止したのは違憲だとして、廃止後に返済義務のある貸与制の下で修習を受けた弁護士らが国に1人当たり1万円の損害賠償を求めた訴訟2件の判決で、東京、広島両地裁は27日、いずれも請求を棄却した。」(日本経済新聞2017年9月28日付朝刊・第43面)

「給費制廃止なんてけしからん」というのは簡単だが、それを「民事訴訟」の形で争うのは非常に難しい。

なぜなら、国家資格を与えるための養成制度をどう構築するか、などということは、まさに行政裁量が最大限に発揮される話だし、給費制か貸与制か、ということも、本来であればその裁量の枠内であっさり処理されてしまうような話だからだ。

今回の判決は、まだHP等では公表されていないようだし、当事者がどういう主張を行ったか、ということについても自分は関知する立場にない。

ただ、数年前にビラで読んだ原告側の主張は、確か「他の国家資格の養成制度に比して憲法14条1項に違反する」といった類のものだったと記憶していて、これだと、さすがに勝ち判決をもらうのは厳しいんじゃないかな、と思ったものだった。

もちろん、「じゃあどうするの?」と聞かれた時に、自分が他の方策を持ち合わせているわけではない。

過去に「給費制」の時代が長く続いていたこと、そして、今年に入ってから給費制の部分復活、と言えるような法改正もなされたことから、他の世代と比較した「谷間世代」の不平等性を論じる、ということも考えてみたが、それだけではやはり主張としては弱すぎるように思える。

それよりはむしろ「法科大学院は夜間でも通えるのに、司法修習は、(事実上)会社を辞めるか休職しなければ受けられないのはおかしい」、「そもそも、社会人が貴重なキャリアを1年も中断しなければいけないような意義が「司法修習」にあるのか?」といったところを前面に出して、「1年も無給かつフルタイムで人々を拘束するような制度を法曹養成プロセスに組み込むのは裁量の逸脱だ」という主張に持っていく方が、まだ筋が良いような気がするのだが・・・*1

個人的には、自分が経験した司法修習(特に実務修習)の数か月は何ものにも替えがたい経験で、自分を一回り成長させてくれたものだったと思っているし*2、今、原告で訴訟を提起している人々も、皆「司法修習」の制度自体にまで異議を唱えているわけではないのだろうから、上記のような主張に持っていくことには、なかなか難しいのかもしれない。

ただ、もし、自分が研修所に入所するタイミングが、「貸与制」の時期にぶつかっていたら、やはりすんなりと行く、ということにはならなかっただろうな、と思うだけに、「拘束するなら支給せよ」の原則をどこかで確立できないか、今も頭を悩ませているのである。

*1:過去の「貸与制」に関する自分の意見も、概ねその線に添ったものである(http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20100917/1285260586)。

*2:今でも、あの贅沢な時間の中で見つめ直した仕事の技法のディテールが、節々で生きていると感じる時はある。

2017-09-25

[][]またしても“AI煽り”

最近、そうでなくてもこの手の記事が多くて辟易しているところに掲載された、またか、という感じの記事。

人工知能(AI)の利用が広がるにつれ、弁護士や弁理士など企業法務に関わる士(サムライ)業が「定型的な独占業務はAIに取って代わられかねない」と危機感を強めている。起業して新事業を始めたり、いち早くAIを取り入れたりするなど、業務の見直しに取り組む動きも出始めた。」

「法律系サムライ業の代表ともいえる弁護士といえども、AIの影響からは逃れられそうにない。米国では訴訟での証拠収集や不祥事調査でAIが使われ始め、弁護士がAIを補助者として利用する事務所も登場した。」(日本経済新聞2017年9月25日付朝刊・第13面)

先端技術志向の強い人々が夢を語ること自体は否定しないし、そういう夢を持つ人々を盛り上げるために、多少色を付けた報道があってもいい、と個人的には思っている。

だが、実際に試験導入され、目の前で動き始めた「AI」と、メディアで語られ、煽られる「未来の姿」との間には、あまりにギャップがあり過ぎて、昨今の論調には、80年代のSFよりも現実感がない。

そして、日々の足元の仕事に目を移せば、定型性のかけらもない有象無象の相談事とかトラブルに取り囲まれ、間断なきビジネスジャッジを求められるわけで、AIでも何でも、手を借りられるなら借りたいけど、とてもとても・・・という状況である。

もちろん、企業の中で仕事をする人にも、外で“サムライ”を演じている人々にも、柔軟性のない定型的なアウトプットの出力が生業となってしまっている人は少なからずいるから、“進化型AI”の完成を待つまでもなく、自動化・システム化の波に飲まれてしまう層は必ず出てくるだろう。

一方で、人の手に、あるいは人の頭に代わるツールが出て来て、それまでやって来たことが置き換えられるたびに、浮いた労力を注ぎ込んでさらにプラスの価値を生み出せるのが知的労働者の特権だから、“サムライ”という職業の中の人をひとくくりにして、同じ理屈を当てはめようとするのは賢い論理とは思えない*1

ツールを使いこなしてさらに高みに上る人もいれば、そうでない人もいる。

それだけのことなんだから騒ぐなよ(笑)っていうのが、いつも思うこと。

あと、これだけ通信手段が発展して、あらゆるドキュメントをデジタルで作成できるような時代になっても、いまだに「手書き」文化も、「手紙」文化も根強く残っているわけで、社会全体が時代の先端に追いつくまでには膨大な時間がかかる、という現実もある。

自分の周りの狭い世界だけ見回して妄想を膨らませている人を、近頃、同業者の中にも見かけるようになってしまったのは、いささか残念なことではあるのだが、今必要なのは、現実を素直に眺める目と、地に足の着いた議論。そして、いつの時代にも変わらない仕事の本質を日々自覚し、見つめ直すことではなかろうか。

メディアが「AI時代の到来」を表層的な視点で取り上げれば取り上げるほど、そう思えてしまうのである。

*1弁護士の場合、仕事の中身以前に、法廷で訴訟代理ができるのが「人間」だけで、いかに優れた人工知能が開発されても、それは“補助者”として活用できるに過ぎない、という極めて大きな“参入障壁”があるだけに、なおさら職業としての地位が盤石、というところはあるのだが、それを捨象してもなお、である。

2017-09-13

[]「理想」にまた一歩近づいた(?)12回目の“新”司法試験

去年も書いたが*1、「1500」という数字を見ると、ちょっとした郷愁に襲われる。

法務省は12日、今年の司法試験に1543人が合格したと発表した。昨年より40人少ない。政府が2015年に下方修正した目標の年間1500人以上をわずかに上回ったが、法曹離れの傾向は続いている。法科大学院を経ないで受験資格を得る予備試験組の合格者が最多となり、募集停止が相次ぐ大学院の人気低下に拍車がかかる可能性がある。」(日本経済新聞2017年9月13日付朝刊・第39面)

受験者数の減少傾向や受験者層の薄まり等から、更なる合格者減、という事態も想定されていたことを考えると、今年の結果は「合格者1500人」時代の定着を印象づけるもので、利害関係者にとっては朗報、ということになるのだろう((データについては、法務省のサイトを参照(http://www.moj.go.jp/content/001236055.pdf)。

出願者数 6,716名(前年比 1,014名減)

受験者数 5,967名(前年比 932名減)

合格者数 1,543名(前年比 40名減)

受験者が900名以上減少したにもかかわらず、合格者数は“微減”、よって、合格率は25.86%にまで上昇。

40%台だった初期の新司法試験のレベルにこそ及ばないものの、母集団のバックグラウンド*2を考慮すれば、既に試験の難易度は、“理想”とされた第1回、第2回新司法試験の時代に限りなく近づいているようにすら思える。

以下の受験回数ごとの合格者数を見ても、これまで3度、4度と、壁に阻まれてきた受験者の合格者数が顕著に増加しており、初挑戦の受験者の合格率も飛躍的に上がっていて*3、そこに傾向の変化が透けて見える*4

1回目 870人( 3名増)

2回目 292人(41名減)

3回目 180人(26名減)

4回目 140人(16名増)

5回目 61人 ( 8名増)

あくまでただの資格、それも、今や将来をまるで保証してくれない資格になってしまったとはいえ、持っておけば損はない。

そういったステータスの現状を考慮すると、減ったといっても夢の数字「1500」、しかも一発勝負に徹すれば4割近くは合格できる、という状況は、ある意味理想的とも言えるわけで、この瞬間だけ捉えれば、いい制度になったものだね(笑)、と皮肉の一つも言いたくなる*5

なお、そんな状況でも、社会人組が報われているとは決して言えない状況で、予備試験合格者が過去最高の「290名」(前年比55名増)*6に達した状況でも、増えた分の内訳は、ほとんど30歳未満の世代に持って行かれてしまっている。

20〜24歳 155名(+25名)

25〜29歳 49名( +9名)

30〜34歳 19名( +2名)

35〜39歳 27名( +6名)

40〜44歳 14名( +5名)

45〜49歳 13名( +6名)

50歳以上 13名( +2名)

数字の絶対数をみれば、30歳以上の世代でも予備試験ルートで相当合格するようになってきているし、今や稀少な存在となってしまった社会人向け法科大学院出身者の朗報も耳にしたところなので、ここでも、“新”制度創設当初のDreamが再び蘇りつつあるのかもしれない。

ただ、長らく「弁護士」の世界しか知らなかった企業法務系事務所からの転職者が、組織内で戦力として役に立たないことも稀ではない、という現実*7を見せつけられると、社会人としてのバックグラウンドのある人に法曹資格を与える制度設計の方が優れているように思えるし、法曹資格が、「職業」に直結するものではなくなってきている今、経験を積んだ社会人が「キャリアパス」として気軽に資格に挑めるような環境をもっと整えていかないと、実務の世界ではもちろん、学問の世界でも「法律」というカテゴリーが沈没してしまうように思えてしまうだけに*8、試験の仕組み的にも、内容的にも、“背伸び”せずに社会人が挑戦できるような形にもっていくことを、そろそろ考えてほしいな、と思う次第である*9

*1http://d.hatena.ne.jp/FJneo1994/20160907/1473349599

*2:少なくとも最初の4〜5年は、旧試験から転向してきた兵どもが受験者の中で一定の比重を占めていた。

*3:あくまで受験予定者数ベースでの比較となるが、昨年度の試験が2,669人中867人(32.4%)だったのに対し、本年度は2,269人中870人(38.3%)だから、新試験1年目、2年目の数字にかなり近づいてきた、と言えるだろう。

*4:逆に、2回目、3回目については、受験予定者数ベースでそれぞれ300名弱減、500名弱減、となっており、そもそも「司法試験」というものに執着しない傾向がより強まっているようにも見受けられる。

*5:もちろん、足元では更なる受験者の減少、優秀な学部生の法科大学院進学回避、という現象が着実に進行しているから、「1500人」を維持しようと思えば、いずれ「5年以内」制限の遡及的廃止だとか、予備試験枠の拡大、といった方向に舵を切らないといけなくなるとは思うのだけれど。

*6:当初の勢いを考慮すると、これでもまだまだ少ないと個人的には思うし、予備試験の受験者数が相変わらず伸び悩んでいるのも問題だと思うのだが・・・。

*7:全ての人がそうだとは言わないが、同じような悩みを抱える「受け入れ側」の担当者の話を、最近は至るところで聞かされる。

*8:既に、一時は独立した職域を築きつつあった「法務部門」が、組織のスリム化の過程で隣接職種に吸収されていく事例も最近ではよく耳にするところだし、書店の法律書のコーナーは、ここ数年狭くなることはあっても広がることはほとんどない。そして、登録弁護士の人数も、あと数年で減少に転じることになりそうな予感がしている。自分は預言者ではないので、当たるも八卦・・・ではあるのだけれど。

*9:これは、決して試験の難易度を下げる、ということを意味しているわけではない。大事なのは「知識」(今や記憶することの意味すら薄れてきている)ではなく、経験に根差した「発想力」「問題解決力」を問う方向に舵を切ることだと思っている(もちろん、一定の論理を組み立てる力は必要だが、これまで、法曹になる過程で(+一部の領域では法曹になってからも)「知識」と「論理力」をあまりに強調しすぎた結果、実務との距離がどうしても生まれてきてしまっているのではないかと思えてならない)。

2017-08-23

[][]企業内弁護士の「人材不足」問題

今週月曜の日経新聞の法務面に掲載された「インハウス(企業内)弁護士」に関する記事*1がじわじわと波紋を広げているようだ。

自分も記事の紹介から伝わってくる情報に断片的に接し、若干気がかりな記述はありそうだな、と思っていたのだが、改めて記事を読んでみた時に一番違和感を抱いたのは、やはり次のような論旨で問題が語られているところだろう。

「こうした需要増に、人材供給は追いついていないのが現状だ。」

(中略)

一因には、司法試験合格者数の減少がある。司法試験合格者が司法修習を終えた後の就職先をジュリナビが調べたところ、08年以降、法律事務所に所属するのは毎年1400〜1700人程度。これに対し司法試験合格者は14年から2千人を割り込み、16年は1583人に落ち込んだ。」(日本経済新聞2017年8月21日付朝刊・第13面、強調筆者)

おそらく、「司法試験合格者3000人」主義から未だに脱却できていない何者かが語ったコメントが下敷きになった分析なのだろうが、世の中は「事務所に就職できないから企業へ」というマインドで動いている修習生ばかりではないし、最近は多くの企業が修習前や修習初期から採用に食指を伸ばしているから、就職活動の順番も、事務所→企業、ということには必ずしもなっていない。

要は「有名企業のインハウスになれなかったからやむなく事務所に入った」という修習生も今では相応のボリュームになっているわけで、結果的に“余った人”が少ないからと言って、それを企業サイドから見た「人材不足」の理由、とするのは、いささか無理があるように思う*2

そもそも、合格者が2000人前後で推移していた時代が、企業の中からの視点で見て「人材が豊富」と言えるような状況だったわけでもない。

会社の顧問弁護士の経験はあっても会社の中で働いたことがない人、会社の中で少し働いたことはあっても「法務」という立場で働いたことのない人に、「企業の法務部門に求められる人物像」を説明して理解してもらうのは絶望的なくらいに骨が折れる作業だし、それゆえに、分かり合えていない層の人々からは、「就職に苦労している弁護士がこんなにたくさんいるのに、『人材不足』とは何事だ」という声も上がってしまうのであるが、長く会社の中にいる者として、おおざっぱに言わせていただくなら、

「法律知識」がいくらあってもそれだけでは仕事にならないし、法曹の世界では高い評価につながりやすい「法的思考力」とか「法的分析力」をいかに備えていたとしても、それが社内で仕事をする上での決定打となるわけではない。

というのが全ての出発点で、それを理解していただかないことには、永久に議論が噛み合うことはないだろう*3

それなりに歴史のある事業部門を抱える会社の中で、「法務」という部門はいわば鬼っ子のような存在なのであって、「一定の敬意は払われるが、その存在が常に尊重されるわけではない」というマインドで動いている組織は未だに多い・・・、というか、大手企業の法務部門の多くは、そういう立場に置かれている、と言っても過言ではない*4

そのような環境の下で求められるのは、

6割くらいは筋の悪い方向に押し切られて譲歩しても、残りの2割で「おっ」と思わせて踏みとどまらせ、最後の2割のところで『法務の立場でそうさせたい方向』に持っていけるスキル

に他ならないわけで、企業の中で「法務」担当者としての役割を全う譲るべきところは我慢する「忍耐力」、相手の関心を引き付ける「機転」とか「説得力」、そして、自ら描いたシナリオに沿って社内外の関係者を誘導する「演出力」「駆け引き力」&「決め切る(決めさせる)力」といった要素が、法曹としての一般的な能力以前に欠かせないのである*5

そして、今も昔も、「法曹」というカテゴリーの中にいる人々の中で、そのような資質をふんだんに発揮できている人(あるいは、将来そういう資質を発揮できるという潜在能力を感じさせる人)は、決して多いとは言えず*6、それゆえ、いくら弁護士の絶対数が増えても、求められている人物像に一致する弁護士はそう簡単には増えず、『人材不足』という印象だけが強く残ることになる*7

さらに言えば、社会人経験のない司法修習生であれば、同世代の社員と比べたスタートの遅れを取り戻せるだけの「柔軟性」が求められるし*8、事務所での職務経験がある弁護士ともなれば、それまでの仕事のやり方をガラッと変えられるだけの「可塑性」という条件がさらに課されることにもなる。

こうなると、司法試験の合格者が2000人になろうが、3000人になろうが、それよりもっと多くなろうが、採用する側から見たときの『人材不足』の認識は一向に解消されない、ということが、容易に想像できることだろう。

もちろん、今高い評価を受けている法務担当者だって、最初から要求される能力を全て備えていたわけではないはずだし、「法務」現役を自負する人々の中で、そういった能力を全て完璧に備えている、と胸を張れる者は決して多くはない(自分ももちろん胸を張って言えるわけではない)はず。

ただ、入社の時点で全てを兼ね備えていなくても、その先に成長カーブを描いて、理想とされる形に近付けるかどうか、という点に関しては、今の若い世代の有資格者から、そこまでの資質とか、それを補うだけのひたむきさ、といったものが感じられにくい傾向があるのも事実で*9、法曹資格を持たない同世代の叩き上げ若手法務担当者や、他の職種から転進してきた新卒生え抜き入社組と比較して大きく見劣りすることも、決して珍しいことではない。

データ上は既に社内弁護士の「頭打ち」感も指摘される中で、原因を「司法試験合格者数」に見出そうとした今回の記事の背景に、誰かのなにがしかの思惑が働いているのかどうか、自分は知る由もないのだが(笑)、司法制度改革からはや10年以上の歳月が流れ、「とにかく弁護士を取っておけば安心」という時代では既になくなっている(その意味で、法務の現場にいる者からすれば、当該記事時代がアウトデートな視点に立脚しているように見える)、ということは、最後に指摘しておかねばならないだろう。

これから「会社の中」を目指そうとする人たちにとっても、今様々な会社の中で「法務」という弱い部門の屋台骨を支えている人たちにとっても、この先の10年が不幸な時代にならないように。そして、採用する側もされる側も、ムードや「弁護士」という未だ根強く残るブランドに流されて、重大な選択を誤ることのないように・・・。

それだけである。

*1日本経済新聞2017年8月21日付朝刊・第13面。

*2:そもそも、「新卒」という立場で有資格者を採用する企業は決して主流ではない(統計を見たわけではないが、経験弁護士の中途採用で対応している会社の方が絶対数としては遥かに多いと思われる)ということにも留意が必要だろう。また、合格者数が絞られ、“美しいスペック”の司法修習生や経験弁護士の就職状況が比較的好転したことで、送られてくる履歴書の中に、大手企業が好むタイプのものが減った、という状況はあるのかもしれないが、「ハイスペックの履歴書の枚数の多さ」が、「人材の豊富さ」に直結しない、というのは後述の説明を読んでいただければ分かることだろう。

*3:その意味で、日経紙の21日付の記事の中で、あたかも「企業側」の発言であるかのように取り上げられているいくつかのコメントは、現実の感覚とはちょっとずれていて、それがなおさら誤解や批判を招く原因になっていることは否めないように思う。

*4:それでも「敬意」を払われるだけまだましで、一片の敬意も払われず、ルーティンワーク(例えば契約書のレビュー等)以外に役割を与えられていない、という法務部門だって、決して少数ではないはずである。

*5:特に最後の「決める力」「決めさせる力」は、中途半端に“企業法務”系の事務所にいた弁護士ほど失っているものではないかと思うわけで(クライアントに「後は決めてください」と投げることも多いから)、同じ「企業法務」だと思って会社の中に入ってきた弁護士の多くが戸惑うところでもあるのではないかと推察している。また、限られた情報だけで瞬時に判断する、といった対応も不得手にしている弁護士は多いが、会社内の法務担当者に「じっくり調べます」というような余裕が常に与えられるわけではない。

*6:経験弁護士でこういった資質を全て備えている人がいたら、間違いなく事務所の中でも、独立してもかなりの確率で成功できるだろうから、そもそも企業内弁護士の求職市場には流れてこないし、新卒の修習生にしても状況は似たようなものだろうと思っている。

*7:もし、ここ数年で変わったことがあるとしたら、最初は「とにかく数が欲しい」という思いで、来るものは拒まず、状態で有資格者を採用していた会社が、いろいろと苦い経験を経て、採用者のスペックを引き上げてきている(結果的に求めているような人材は『不足』している、という実感をより抱きやすくなる)といったことくらいだろう。

*8:だからといって、司法研修所で企業内での就職を意識したカリキュラムを組む必要はないし、そこまでやるようになってはいけない、と自分は思っているのではあるが。

*9:法曹という職業の人気が失われつつある時代に、法曹養成過程に足を踏み入れ、散々後ろ向きなノイズに晒されてきたせいなのだろうか・・・と同情せざるを得ない面もあるのだけど。

2016-12-19

[][]そして、今年も波乱なき年の瀬。

毎年年末の恒例となっている日本経済新聞法務面の「企業法務・弁護士調査」*1

肝心の調査の中身の方は、そんなに有意義なテーマも見当たらず*2、唯一目を引くのが、

「匿名加工情報を『活用する』と回答した企業がわずか5%」

というシュールなネタくらい*3

そして、多くの読者が脇目も振らずに視線を移したであろう「企業が選ぶ弁護士ランキング」もまた、今年もほとんど波乱なし、という状況であった。

<企業法務分野>

1.中村直人(中村・角田・松本)19票

2.野村晋右(野村綜合)14票

2.沢口実(森・濱田松本)14票

4.太田洋(西村あさひ)13票

5.柳田一宏(柳田国際)10票

回答企業は189社と、2年前と比較してもさらに増えており、その影響か、掲載されるためのボーダーラインが「2桁」票まで引き上げられている、という変化はあるものの、上位陣の顔ぶれはここ数年ほとんど変わっていないし、トップの中村弁護士にすら総回答企業の1割しか票が入っていない、という状況も変わらず、である。

どんなに中身が薄くなっても、紅白歌合戦を見ると何となく安心して年を越せる日本人が多いのと同様に、このランキングを見ると安心して年を越せる、という企業関係者や弁護士が多いからこそ、この薄い企画が長年生き残っているのだと思うけど、そろそろいい加減、誰かが違う切り口でより客観的な「優れた弁護士」の評価を始めても良い頃ではないだろうか*4

時代はもう大きく変わり始めているのだから。

*1日本経済新聞2016年12月19日付朝刊・第19面。

*2:コーポレートガバナンスコードの話なんて、ここでアンケート取ってどうするのよ・・・という感ありありである。

*3:アンケートの時期等を考慮すると当然予想された結果で、現時点で数字を取ったらまた違う結果になるかもしれないが、今回の法改正をポジティブに捉えている会社はそんなにない、ということの良い証明と言えるのではなかろうか。

*4:これと似たようなことは、10年くらい前から言っているような気がするが・・・。

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