深町秋生の序二段日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-05-17 Perfumeの肉体言語@代々木体育館WOWOW

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Perfume 『BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!』

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トライアングル(初回限定盤)

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やっと会えたね。


なんつって。気分は辻仁成である。


そりゃそうだろう。5月9日10日に代々木体育館Perfumeの単独ライブが行われたわけだが、七生報国ならぬ七生報Perfumeで生きている私がなぜそこにいないのか。もう当事者である私自身が不思議でしょうがないと頭抱えていた一週間でありました。


タイミング悪く、ある編集者から「深町さん、ライブで東京にいらっしゃったのではないでしょうか。また東京にいらっしゃることがございましたら……」とまったくKYなメールが届いて悶絶していたところであったが(私信。気になさらないで!)、とにかく仕事なのだからしょうがないと唇をかみ締めておりました。


なぜ私が代々木にいられないのか。なぜだ。(自業自得だとわかっていても)と、玉音放送を聴いている軍人みたいな気分だったのだけれど、老舗BSのWOWOWが間髪入れずにそのライブを放送したのだった。最近はマニー・パッキャオボクシング史に残るような伝説的なパンチをお送りした男前な放送局であるが、やってくれましたね。


WOWOWでの放送で七ヶ月ぶりに彼女らのパフォーマンスを目撃したわけだが、なぜこうも彼女たちに痺れるのかということを書いておこうと思う。


これまで何百回といろんなところで「どうしてそんなにPerfumeが好きなんですか」という質問を受けた。そのたびに私は「いや、音楽がいいから」とまず答えているのだが、一度として納得してもらえたことがない。たいがいは「またまた〜、かっこつけて」という歪んだ笑顔。もっとひどいと「正直に言いなさいよ」という感じの、カウンセラーか神父きどり。「さあどうぞ告白しなさい。あなたの変態的な性癖を!」みたいな態度で待ち構えていたりする。「いやだから、音楽がよくて、ライブのパフォーマンスがもごもご」と私も適当に答えたが、思考をまとめるとこんな感じだ。


80年代ぐらいからだろうか、ずっと日本ポップスカラオケとともに歩んできたと思う。「自分も歌ってみたい」と想わせるのがヒットのコツなのかは知らないけれど、たとえばクレイジーケンバンドの曲が保有する「カラオケで歌ってみたい度数」はかなり高く、私もカラオケでよく歌っている。あとサザン男性が歌った場合、みんなクワタ化するのもおもしろかった。90年代に入って小室の時代が到来し、このカラオケポップスの濃密な関係は行き着くところまで行ってしまった。正直、そこから生み出される歌い手たちの上昇志向や自己愛がちょっとしんどかった。


Perfumeの魅力のひとつは、カラオケというある種の呪縛から解き放たれたところにある。まあ酔っ払うと歌うのだけれど。(いつぞや高橋ヨシキ所長の前で「Perfumeメドレー」を歌って、心底嫌な顔をされたのを覚えている)しかし歌ってみるとわかるのだが、Perfumeカラオケで歌うのはじつはすごくつまらない。元々、楽曲自体がカラオケ用に作られているわけではない。声はがんがん加工され、起伏に富まない調子。歌い手本人が快感を得られるようにもなっていない。歌詞だって最近はそうでもないけれど、昔はそれこそ「リニアモーターガール」の連呼。本当は、あ〜ちゃんは黒人シンガーばりのソウルフルな歌声の持ち主だが、そうした個人の素敵な能力というものを軽く踏み潰したのが中田ヤスタカという暴君であった。「うぬ、もっと機械みたいに歌え」「歌詞は『リニアモーターガール』これのみ!」みたいな。


今回の代々木ライブを見てつくづく思ったのが、歌声至上主義という考えから解放された自由さだろう。Perfumeは喉で感情を訴える代わりに、全身の肉体を使って語るパフォーマーだ。私が初めて彼女たちを見たのはタワレコ渋谷店のイベント会場である。キャパは300人ぐらいだろうか。ものすごく強烈だった。新鮮だった。以来、それが忘れられなくて今日までファンを続けているようなものだ。彼女たちのボーカルが「口パクだ」という批判が未だにつきまとうが、それはプロレスが「八百長だ」というくらい意味がない。プロレスファンが別にシュート試合を望んでいないのと同様に、Perfumeに生の歌声を望んではいないのだ。少なくとも私はそうだ。


基本的に男の子というのは、ときとして肉体や表情で激しく語る人間を神のように崇めるところがある。ブルース・リージャッキー・チェンアントニオ猪木千葉真一土方巽、梶芽衣子などなど。全日本プロレスを率いていたジャイアント馬場やノアの三沢光晴マイクパフォーマンスをことのほか嫌い、口を閉じつつ肉体で激しく語らせるのを是としていた。


まあじっさいのPerfumeマイクパフォーマンス自体はじつに多弁なのだけれど、男たちの熱狂の根本にあるのは、誰も到達できない唯一無二にまで高めた無言の肉体表現に対する尊敬だろう。熱狂すべきポイントはいろいろと他にもあるけれど、やっぱりそこが最大のポイントのように思える。無言のままひたすらダンスを踊り続ける「Perfumeの掟」がいい見本だ。


Perfumeのライブを見ていると、失いかけた童心が再び戻ってくるような感じがする。猪木に憧れて卍固めをクラスメイトにかけたり、ヌンチャクを振り回してドラゴンしてしまったりロビンマスクが好きでアルゼンチンバックブリーカーをやって腰を痛めたころのような。巨大スクリーンとミラーボールが輝くダンスホールと化した代々木体育館テレビ画面を通じて見ながら、そんなふうに考えていた。うう、それにしてもなんで「ナイトフライト」がねえんだよ……。(いろいろ語ったけれど、今日言いたいのはこれである。うう……)


関連

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20081223(到達の物語 NHK−BS「Perfumeスーパーライブ」)

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20081107(多幸感あふれる平和なライブ Perfume武道館

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20081016(豊穣のとき Perfume DVD「GAME」)

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20080810(光の果てにある壁。Perfumeサマソニ

http://d.hatena.ne.jp/FUKAMACHI/20080516(私は地獄を見た Perfume仙台ジャンクボックス)



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新曲「NIGHT FLIGHT」がちょこっと聴けるピノのCM。



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おまけ。Perfumeのことが好きすぎて頭のおかしくなったどっかの外人。Perfumeファンの鑑である。


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