深町秋生のベテラン日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-12-18 史上最強の王。長谷川穂積 このエントリーを含むブックマーク


本物のボクシングがここにある。


……という、日テレアナの実況の一声で始まった長谷川の防衛戦。どこに対するあてつけなんだ。


いやはや緊張しながら見ていたけれど、やはり長谷川。またも最強ぶりを発揮して、ニカラグアのイキのいい挑戦者ペレスをおねんねさせた。今年はポストゴールデンボーイとして大注目された帝拳リナレス日本で凱旋試合したら、あっという間に秒殺されてしまった例もあって、心臓がばくばくしてしまった。TBSのは鼻ほじりながら見ているのだけれど。


ペレスはゴングと同時に襲いかかる無礼かつアグレッシブなサウスポー。大振りも目立つが、スピードのあるジャブとフック。足も軽快で9位というランクとは思えないいいボクサーであった。


動きのいいペレスに対して、どことなく長谷川は動きがもっさりしているように見えた。解説の飯田さんがしきりに「リーチがある」「いいボクサーだ」と挑戦者を褒めまくり長谷川を「パンチが雑」「足をもっと使うべき」と辛口に批評しては、視聴者の不安をあおるようなノストラダムス系解説をくわえるものだからさらにどきどきものであった。たいこもちのようなTBS系の解説と正反対だけれど、これはこれでありがたくない喋りだったなと。嘘でもいいからちょっと褒めろよと。「これは効きましたよ〜」(語尾はアッパーのように高々とあがる)という浜田さんのいつもの口調がこれほどありがたいと思ったのははじめてかも。


日本チャンプの防衛戦というと、どうしても動きが硬くなってアグレッシブな攻撃にさらされると、もろもろに切り崩される……なんて例を山ほど見てきたので、ちょっと不安だった。なにしろ1ラウンド決着が続いていたので、チャンピオンが過酷な減量に苛まれていることもあって、ラウンドを重ねるごとに「スタミナは大丈夫だろうか」と。長谷川の調子がよさそうにも見えなかった。足をほとんど使わないうえに、ガードが低い。ジャブもそれほど出ているとは思えない。


しかし回を進めるごとに動きがほぐれていった。やっぱりカウンターの切れ味がすごい。相手のパンチを誘い、観客の目では追いきれないような日本刀のような切れ味の(こういう凡庸な比喩を使うのはよくないと思いつつ)カウンターの左ストレートをぐさり。相手が前のめりになってうつ伏せで大の字という危険かつマンガのような劇的なKOで勝利した。


今後は階級をあげるのではと噂されているが、どんどん挑戦していってほしいなと私も思う。地味に防衛を重ねたいとも言っていたけれど。あれだけド派手な勝ち方をしていても「地味に」と言っちゃうところも赤坂方面への挑戦状か。ウェイトを増した長谷川も観てみたいなと。


もっとも憂慮すべきは人気面であろうか。中継してくれた日テレには感謝だけれど(もう無料でスポーツが見られる時代は終わるんじゃないかとハラハラしている)、長谷川の試合が終わったあとのCMが、みんなACの啓蒙広告で埋まっていたのが悲しかった。たしかに試合が終わっちゃったら誰も見なくなるだろうし、やっぱり長谷川と比べると後に放送された粟生がかなり見劣り(まあ9ラウンドから放送すりゃ精彩もクソもあったもんじゃないが)することを考えると、スポンサーがつかないってのもわかるけれど、やっぱり厳しい世のなかだなあと。


早いラウンドで試合を決めちゃうとかえってスポンサーがつきにくいのかしら、などと大人の事情にも想いを馳せながら試合を満喫したのだった。頼むからみんな見てほしい。テレビ局があっさり放送を止めちゃうことはノアの例だけでも証明済みだから。亀田の試合を観たがるのもわかるが、なにせこっちには本物のボクシングがある。(おれが言ったんじゃないぞ)。というわけでぜひ。


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