深町秋生のベテラン日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-01-02 悪酔い番組TBSの格闘技

自伝乙 (スコラムック)

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青木真也 跳関十段3 [DVD]

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また見てしまった。TBSの大みそか格闘技である。


国民を悪酔いさせる罪深きコンテンツ。もう感覚としては、最低な三増酒とやばめなシメサバを出す安居酒屋に出向くような感じ。「ひでえ店だなあ」とボロクソにぼやているわりには、しっかり常連。そういうアレであります。


出だしが猪木のパフォーマンスというのもすごい。もう何度も大火傷させられているというのに、飽きることなく彼が起用されるところに日本格闘技界の異様な新陳代謝の悪さを感じるのだけれど(日テレの大みそか猪木底抜け祭り@神戸も昔の話か)、停滞という言葉ではおっつかない妖しさが、やっぱり今回もあった。


北関東&国道16号線&ドンキホーテな匂い。相模原の巨大パチンコ店のタバコ臭さというか、ヤンキー的なやさぐれ感を堪能した。チープでずさんで獰猛。興行もメディアも、普通はどんどん洗練されてスマート化していくものだが、TBSの格闘技放送はなぜか見世物小屋的なうさん臭さと得体の知れなさが変わらず漂ってくるのだった。漂ってくるからまた見てしまうという悪循環である。しかもそのかぐわしい香りは年々強くなっているように思える。


しかしこれだってもう十周年というのだから月日が経つのは早い。今までも本当にいろんな事故と奇跡を目撃してきた。モチのように崩れる曙、ヌルヌルと滑る秋山、人の腕を折ってもケロっと中指を突きつける元おまわりと、ギチギチなリハーサルを繰り返す徹底管理な歌番組が行われている一方、こちらは泥酔したテキヤが仕切る縁日みたいな風景である。


一番盛り上がったのは、やはり話題のコスプレファイター自演乙対寝技マスター青木の対決で、なんだか梶原一騎劇画みたいな展開で、見ているこっちが「ホゲー!」となってしまったけれど、これもまあ女装趣味のオタVS人でなしの元おまわりという、なんとも異様な取り組みではあった。しかもルールそのものが変。立ち技と総合のミックス。「そういうルールなんだ」と受け入れて見てはいるけれど、「格闘技なんてこんなもんでいいじゃん」という、日本的な曖昧さと、見せる側の甘えをどうしても感じてしまう。1ラウンドはK−1立ち技ルール、2ラウンドは総合格闘技ルール……改めて考えるとかなり変な試合形式だ。寝技の男に「まず立ち技だけでやれ!」ってのもね。引き受けたからには仕方ないだろうが、今回の青木は、この奇妙極まりないルールの犠牲者ともいえる。


ズサンで曖昧といえば、アリスターの存在もよくわからない。例によって筋肉男ぶりを見せつけていたけれど、あの筋肉モリモリすぎるさまは、「松嶋×町山未公開映画を観るテレビ」でやっていた「ビッガー、ストロンガー、ファスター」というドキュメント映画に出てきたステロイド中毒の男たちとそっくりだ。


解説の元気さんは、去年「オーガニックフードだけじゃ作れない身体」とポロリ発言したが、今年も「アリスター選手『バキ』にたとえるなら、ジャック・ハンマーですね!」と仰った。全然確信犯なのだ。ちなみにジャック・ハンマーは超大量のドーピングを敢行する怪物ファイター。元気さん、全然アリスターに敬意払ってない様子。


「その身体おかしいだろう」というツッコミはなく「どうですかこの筋肉」とテレビもむしろ褒めそやすのだから格闘技の立場は微妙である。「格闘技はまっとうなスポーツじゃねえんですよ、しょせん」と宣告をされているような気分になる。格闘技バブルを経て、これほど長く格闘技というものが行われているにもかかわらず、こうした薬物疑惑だの、どたばたしたマッチメイク、視聴者もよくわからない場当たり的なルールが横行している。


まあUFCのアスリート感あふれるハイレベルなファイト楽しいかというと……試合によっては、ものすごくつまらなく、ミノワマン的な試合が恋しくなるときがある。そんなUFCも、最初の最初は飯場のケンカみたいなヤマっ気丸出しな試合ばかりだった。得体のしれない馬の骨の自称道場主や用心棒が、グローブもつけずにステゴファイト。極道格闘家ゴルドーが、床を這いつくばってるやつの顔をローキックして、歯を吹き飛ばした、なんてこともあった。


あれからかなり長い年月が経った。昔は「日本格闘技ファンは目が肥えてる」と言われた。アメリカイギリスのファンといえば、ちょっと寝転がると、すぐにブーイングをあげる。「退屈だ!」とわめく。酒かっくらう。日本ではグラウンドの攻防さえもちゃんと受け止める下地ができている。なにせ格闘技に関しては老舗中の老舗の国だ。猪木がいて、前田がいて、高田がいて……格闘技に対する教養が違うのだよと、誇りみたいなものを持っていた時期があった。まあただじっと見ているだけなのだが。


青木がバッドボーイなのは認めるが、彼が世界レベルの寝技マスターであることは変わらず、彼の存在ごとスポイルするような(脱糞したうんぬんとか)罵詈雑言まで出てくると(解説からして、仲間のケンカを見守るゾクのあんちゃんのようだったのだから仕方ないかもしれんが)、果たしてあのとき私が持っていた誇りとはなんだったんだろうとさみしく感じるときはある。


私は廃墟とか、衰退していく地方都市を見に行くのがけっこう好きだが、TBSの格闘技を見るというのは、わりとそれに似ている。タレントのにわか格闘技路線、計量無視の無差別ファイト立ち技総合格闘技の無理めなミックス、あやしい薬物の香り。そして毎度の焼畑農業のような番組構成の果てに、劣化や退廃やモラルなしのアナーキーな世界が広がっている。滅びゆくなにかが、確実にそこにはある。


歌に国民を巻き込むほどの魔力がなくなっている時代に、歌合戦をやるのもたいがい無理があると思うけれど、一方の格闘技も無数の無理がひしめいている。毎度毎度思うけれど、もう本当に限界が見えている。見えているからこそ、悲しいくらいにおもしろいのだ。勝者の石井慧に浴びせられるブーイングを聞きながら、そんなふうに思った。


関連サイト

http://d.hatena.ne.jp/Dersu/20110102#p1(12.31 Dynamite!!勇気のチカラ2010〜 挑戦者トロング)


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