2011-02-03 娯楽業界の苦しい今。「パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)

- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2011/01/08
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- 作者: 安藤健二
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2004/09
- メディア: 単行本
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ノンフィクションライター・安藤健二の新作「パチンコがアニメだらけになった理由(わけ)」を読んだ。タイトルがすべてを表しているが、パチンコ業界とアニメ業界の両方の現状を描き切った、安藤健二の新たな代表作だと思う。
「封印作品の謎」でセンセーショナルなデビューを果たした著者だが、デビュー当時からミステリファンの読者が多かった。表現の自由をむしろ潰すほうに回っていた事実に気づいた著者が、新聞記者という職を捨て、なぜ世間から封印される作品が生まれるのかを追ったデビュー作は、まるでヴァクスやルヘインといったネオ・ハードボイルド作品のようだった。円谷プロや藤子不二雄といった強大な敵にひとりでぶちあたるところは、いかにも己しか頼るものがない一匹狼の探偵という感じ。
こうなるとミステリ作品と同じで、敵が強大であればあるほど、読み手にとってはうれしい。今回はパチンコ業界という、秘密主義かつ複雑怪奇な利権がごちゃごちゃに絡む、めんどう極まりない世界が舞台。案の定、今回も度重なる取材拒否に打ちのめされる安藤探偵。しかしそれでも「パチンコがアニメだらけ」という状況から、パチとアニメという二つの業界ののっぴきならない「今」というものを浮かび上がらせることに成功している。それは、日本のエンターテインメント業界の「今」でもあるのだ。
「しかしなんだって、今のパチンコはアニメだらけなんだろうね。パチンコは18禁で、アニメは少年少女向けなのに」と、担当編集者の素朴な疑問から始まり、それを取材することになった安藤氏。しかし彼は戸惑いを隠せなかった。なぜならその謎を解明するどころか、パチンコをやったことさえないのだから……。
「パチンコとはそもそもなんなのか」という初歩中の初歩から始まるわけだが、お金を銀球に変え(店員に教わりながら)、球を打ってみるものの、あっという間に金をすってしまう安藤氏。アニメ云々の話をするよりも、まずこのパチンコという遊び自体が、いろいろと謎だらけではないかという指摘に、私はものすごく共感してしまった。
パチンコは、日本中どこにでもある娯楽であり、20兆円産業といわれる巨大な業界だが、やらない人は徹底してやらない。徹底してやらないからこそ、パチンコに対する偏見や憎悪もすさまじい。パチンコ側にも問題があって、その遊び自体が、はっきりと初心者を拒むような「一見さんお断り」な作りなのだ。初心者の安藤氏も戸惑う。「遊びたかったら、勝手にどうぞ」という雰囲気。液晶では派手にアニメが展開されるが、それと銀球の出具合がどう関係しているかは、初心者にはわからない。謎のボタンがあるが、いつ押していいのかわからない。攻略雑誌を買ってみても、「時短」「潜確」「電サポ」と謎の専門用語だけでわからない。わからないだらけのなかで、ただお金だけが理不尽ともいえる勢いで減っていく。アニメをパチンコ業界に引っ張りこんだからといって、こんなわかりにくい遊びを、アニメファンが飛びつくものだろうか……。
そんな素人丸出しな門外漢が手がけただけに、かえってフレッシュな取材に成功している。パチンコ業界は、アニメファンを客として取り込みたいのだろうか。有名な「エヴァ」「北斗の拳」だけでなく、「蒼穹のファフナー」とか「創聖のアクエリオン」とか、なんだってマニアックなアニメまでパチンコ化するのか……もしかすると、アニメファンなんか相手にしてないんじゃないか。そうした疑問が、安藤探偵の努力によってひとつひとつ氷解していく。
しかしただ疑問を解いていくだけなら、さしておもしろくはならなかっただろう。パチンコ業界が、アニメだろうと実写だろうと倖田來未だろうと、どの業界とつるもうが、基本的には知ったことではない。私もパチンコやらないし。だが、そうした疑問を一個一個丁寧につぶしていくことで、かつての「封印作品の謎」などがそうであったように、その業界の本質や問題点を炙り出している。そこに安藤作品のおもしろさがある。
たとえば上野にあるパチンコ博物館館長のインタビューが、かなり膝ポンだった。現在のパチンコというのは、警察サイドが管理しやすいように、球が出る確率をすべてコンピューターで統制。パチンコの遊び方をひどく限定してしまっている。ゲーム性は皆無であり、いわばそれぞれの台が抽選箱みたいなもの。釘の具合とか、客の実力とか、そんなものは関係がない。そうなれば、客の目をひきつける液晶画面ぐらいしかウリがないという、業界の苦しさがまず浮かび上がる。その苦しい事情が「パチンコのアニメ化」へと進ませる第一歩となったらしい。
また一方のアニメ業界も苦しい。とくに資金面だ。高画質の地デジ化にともなって、DVDの売り上げの落ち込み(よっぽどお気に入りの作品ならともかく、そうでないものはテレビの録画で充分だとファンから判断されてしまった)が激しくなり、とにかく経営が苦しいという。パチンコとタッグを組むということは、どうしても「ギャンブル業界と結びつく」というダーティなイメージがつきまとう。それを拒むような体力が、業界にはもはや残されていないのだ。ジブリみたいな会社でもないかぎり。
格闘技番組などを見ているといつも思う。みんなが知っているあのアニメが、パチンコと組んで、そしてテレビで大々的に宣伝される。それは大変華やかに見える。「パチンコ業界、なんだかんだいっても娯楽の帝王やで。やることがいちいち派手やなあ」と。しかしそれは警察によって、液晶画面ぐらいしかいじれなくなったパチンコ業界と、売り上げ不振のアニメ業界による苦肉の策と読むこともできる。
一見すると、CMがばんばん流れる派手な世界に映るが、じっさいは自分の脚を喰らう蛸のようである。たとえば名作アニメ「マクロス」のパチンコのCMががんがん流れていた時期があったが、パチンコ台の発売自体はCMの二ヶ月後だったのだという。つまりパチンコファンのためのCMではなく、パチンコ店の経営者に台を買ってもらうためのCMなのだ。これはかなり異常なことに思える。流通させるための内輪向けのコマーシャル。お客さんのためのCMではないのだ。「CMをがんがん流した台だから」といって並べたところで、肝心のファンからそっぽを向かれたら終わりである。けっきょくマクロスのパチンコも、それほど大ヒットすることなく終わってしまった。
2004年にパチンコCMが流れた回数は2758回(在京キー局)。08年にはそれが17822回と6倍にふくれあがっている。ゲーム性のなくしたパチンコが、話題性を作りあがるために費やした回数である。しかしその莫大な宣伝費を回収するために、一体どこの誰が損を押しつけられてきたのかが、本書でもたっぷり描かれている。これが本当におそろしい。
たとえば大ヒットした『エヴァ』系パチンコ。その5作目で09年発売の『最後のシ者』は売り上げに伸び悩んだという。若手パチンコライターの証言によれば、とにかく出球が少なすぎて、客付きが悪くなってしまったらしい。しかしゲーム性はないし、球の出具合が厳しく管理されているのだから、宣伝と演出に大金をつぎ込むしか手段は残されていないのだろう。たとえ客がそれで離れることになっても。
そんなパチンコ業界の浮き沈みにつきあう羽目となった杉作J太郎先生が、この本では一服の清涼剤となって登場する。そのあたりはぜひ購入して確認していただきたい。重苦しい話ばかりのなかで、思いっきり爆笑させてもらいました。お勧め。
参照サイト
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51563351.html(404 Blog Not Found:国辱 - 書評 - なぜ韓国は、パチンコを全廃できたのか)
http://d.hatena.ne.jp/chnpk/20101222/1292945197(そろそろネット住民の反パチンコ論についてひとこと言っておくか よそ行きの妄想)
- 作者: アンドリューヴァクス,Andrew Vachss,佐々田雅子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1995/04
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- 出版社/メーカー: 角川書店
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