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とくめー雑記(ハーレム万歳) このページをアンテナに追加

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2008-10-24

ハーレム系作品史 1991 GS美神 極楽大作戦!!

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前回紹介作の『うる星やつら』が実際にはハーレム作品ではないという結論だったので、今回がハーレム系作品史の事実上の本編第1回ということになります。なにを語るかといえば、『うる星』路線をかなり強く継承した作品である『GS美神』です。連載開始は91年でOVA『天地無用! 魎皇鬼』(92-)よりわずかに早い。だからといって、『GS美神』を「いちばん最初のハーレム作品」に認定するつもりはありません。ってーのは、『GS美神』がハーレム系の方向性を示すのは中盤以降、92年になってからの話だからです。


GS美神極楽大作戦!! 1 新装版 (1) (少年サンデーコミックスワイド版)


もともと、椎名高志は「短編の名手」として漫画界にデビューしました。その頃の作品は『(有)椎名百貨店』の名でまとめられています。GS美神の初期エピソードも、『椎名百貨店』に、あるいは『うる星やつら』に近い“短編連作”形式です。

諸星あたる系列のスケベキャラである横島忠夫が、ボディコンイケイケ霊能力者美神令子の色香に惑わされオカルトの世界に迷い込み、暴走式神使い六道冥子美神と同じくらい性格の悪い呪い屋小笠原エミ、ボケた元天才科学者Dr.カオスアンドロイドマリアなどに酷い目に合わされる(たぶんに自業自得要素強し)。

特筆すべきは初期の登場人物である冥子及びエミは、横島に対して単なる興味や利用価値を越えた感情を一切持っていないこと。彼女たちは美神令子の関係者であって、横島の関係者ではない。『うる星』の弁天・おユキの位置づけ。そして唯一横島に対して好意的に接してくれる幽霊のおキヌちゃんは肉体を(ついでに恋愛や性に関する知識も)持っていないっ。


この状況が変わりはじめるのは、ゴーストスイーパーの資格試験を舞台にした小竜姫さまチームとメドーサチームの抗争『誰がために鐘は鳴る』(単行本9〜11巻)。20話にものぼるこのエピソードの中で、横島はその才能に期待した小竜姫さまの口づけにより心眼を与えられ、戦いの中で実際に霊能力を開花させ、強敵伊達雪之丞と渡り合って勘違い含みながら実力を認められ、GSの資格も(仮免だけど)取り、ポップ系キャラとして成長の道を歩みだすのです。

いわばここからが、ハーレム系作品『GS美神』のスタート。


前回の『うる星』と同様に、ヒロインズについて考えてみましょう。

まずはメインヒロイン美神令子。美貌と肉体美で横島を引きずり回しながら、決して触れさせたりはしないひどい姐さん。のちに成長する横島に惹かれるものを感じても、それを認められない“早すぎたツンデレ”。そういえばルイズとサイトの関係は美神と横島にそっくりです。(横島が一方的にどつかれる)どつき漫才も含めて息は合ってるし、どうやら横島にとって彼女を支え自分を認めさせるというのがかなり重要な目標になっている模様。あれだけ暴力振るって邪険にして、西条なんつー「憧れのお兄さん」までいるのに、横島のいちばんでいられるってずるいなあ、などと、ハーレムスキーとしては思わないでもないのですが。

2番手ヒロイン、(氷室)キヌ。横島の不遇時代から好意を向け、天然ボケの性格と合わせてほんわかラブコメワールドを形成していた彼女。人間として復活(19巻。事務所に復帰は23巻)するも、色恋への鈍さや積極性に欠ける性格などから、ヒロインとしては脱落。横島との関係は兄妹のようなモノということにされてしまいます。

3人目、花戸小鳩(17巻より)は作中数少ない“ただの人間”で、貧乏仲間の横島に対する好意を見せ、貧乏神騒動の流れの中で横島と結婚式をあげたりするけれど、美神=横島ラインに圧倒される形でフェードアウト。

4人目、犬塚シロ(18巻より)は、横島を師匠と慕う人狼娘。素直で健気で好意もあけすけだし、ケモノっ娘なので防備も弱いが、年上好み・巨乳好みの横島には手のかかる妹分にしか見えない模様。

恋愛感情とまでいえるかは微妙ですが、人造人間マリアや、机妖怪の愛子も、横島に対して好意を持っていることは間違いなく、また小竜姫さまもなにかと横島を買ってくれています。化け猫の美衣、文珠で惚れさせたグーラーなんてゲストキャラもいました。ホントに横島クンは人外からもてますね。

――と、ここまで説明してみればわかるでしょうが、『GS美神』という作品では、美神令子というメインヒロインの地位が、かなり特権的に守られています。キヌと小鳩は直接戦闘能力がないのでバトル展開になれば自然に脱落しますし、シロは終盤まで横島のそばに常駐していない。サブヒロインとのイベントは、フラグを立てるところまではいくのだけれど、ギャルゲーでいえば個別ルートとの分岐点に入るあたりで、強制的に打ち切りにされてしまいます。

このあたり、いまだハーレム系作品という形態が確立されていない過渡期の作品という時代的限界と、少年誌という媒体の制約があらわれています。

この限界と制約に真正面から勝負を挑み、一時はメインヒロイン美神令子さえ圧倒するも、作品・作者の都合により退場を余儀なくされた悲劇のヒロイン。それが横島に恋愛感情を抱いた5人目の女性、ルシオラです。


とくめー版ルシオラ問題

『GS美神』という作品には、富士見ラノベと似たところがありまして。物語は、美神令子と仲間たちが関わる依頼や騒動の顛末を1話から数話かけて描く短編連作作品群と、世界の趨勢とかに関わる長編バトルの2つに分かれています。

長編バトルの基本的な構図は、神界の地上利益代表である小竜姫の依頼や支援を受けて、美神や横島が、魔族陣営の跳ね返り(現場担当者はだいたいメドーサ)と戦うというもの。このメドーサが月面で破れてさようならした(25巻)後、美神・横島と前世の因縁を持つ魔族反乱勢力頭目アシュタロスが、次の現場部隊として送り出してきたのがルシオラ・ベスパ・パビリオの三姉妹(29巻)。彼女たちは妙神山の小竜姫たちを一蹴し、神界側改め人類側の指揮官になったのが美神美智恵。これまでメドーサVS小竜姫チームで行われていたゲームは、アシュタロス+昆虫三姉妹VS美神美智恵率いるGSチームという形に再編成され、最終決戦のスタートです。

で、この最終決戦初期における横島くんの居場所はというと――三姉妹の一人パビリオのペットで、GS側のスパイ。美智絵の奇策で三姉妹の乗る兵鬼“逆天号”ごと吹き飛ばされそうになった横島は、ルシオラとベスパを救い策を破る。横島と心通わせたルシオラ(たち)にはアシュタロスの制約がかかっていて、ヤったら死ぬ、ヤらなくても1年で死ぬ、それでも横島のために全てを捨てる覚悟のルシオラに、彼は誓うのです。アシュタロスは俺が倒す!

チキン横島のこんな台詞が白々しくならないのは、ルシオラがそれだけ一途に横島のことを想っているからでしょう。命懸けるほどの情熱的な想い、自らすすんで一夜の契りを交わそうとするほどの積極性、横島と肩を並べて戦える戦闘能力(戦闘でおキヌちゃんが何度ハブられたことか)、寿命1年という悲劇的な設定。いずれにおいてもルシオラというヒロインは強力すぎました。しかも短編連作サイドのキャラではないので、コメディのノリでうやむやにすることもできない。恋愛モノの論理で美神がルシオラと渡り合おうと思ったら、「告白イベント」でもするしかないけど、そんなことしたら美神と横島の半端な関係は決定的に変わってしまう。

「恋愛要素を前面には出さないコメディ作品」という枠組みと、美神令子のメインヒロインという地位を守るためには、ルシオラは退場しなければならなかったのです。だいたい、ヨコシマのためなら死ねるなんてヒロイン、しかも美神・横島以外のレギュラー全員相手にできるほどの化け物が、決戦を生き延びて短編連作サイドに参加しても立ち位置が難しすぎる!

そういうわけで。ルシオラというヒロインは横島を守って戦死、単行本29〜35巻まで、連載期間にして1年以上続いたアシュタロス編は幕を閉じました。


ところが。このアシュタロス編終了後、ルシオラの代わりというわけでもないでしょうがタマモという新キャラとシロを事務所に迎えたものの、連載自体がわずか39話(過去編9話を差し引くと30話)で終了してしまいました。崩れたバランスと区切りのついたストーリーを再構築するのは名手椎名でも荷が重かったか。30話くらいなら、ルシオラという爆弾を抱えたまま乗り切れたんじゃないでしょうかねえ。

その後、椎名さんは『MISTERジパング(00-01。萌えなしバトルなしギャグ弱めの地味な歴史ネタ作品。悪くはなかったが人気は低迷したようで、梃入れにことごとく失敗してバースト)、『一番湯のカナタ』(02-03。ベテラン優遇のサンデーで半年打ち切り。ジャンプなら「10週突き抜け」、チャンピオンなら「単行本出ない」レベル)と2つも連載をコカしてしまいます。雷句裁判の流れで、椎名さんが編集部に冷遇されてるとかいう人がいたけれど、連載2度しくじった作家の次に慎重にならない編集がいたらそっちの方がおかしいでしょう。

次の『絶対可憐チルドレン』(05-)でようよう少年漫画家として復帰するのですが、この作品の構成が、わがままヒロインズに振り回される皆本以下男キャラ、ミッション型の短編連作とテーマの大きいメインストーリーの併用と、かなり『GS美神』に近い。それだけこのスタイルが、椎名さんにとって完成されたものだった、ということでしょう。


その後の話という点でいえば、より注目するべきは、”Night Talker”などいくつかのサイトで、いまだに『GS美神』の二次創作が書かれていたりすること。『エヴァ』(95)や『Kanon』(99)を考えればありえないでもないけれど、その辺の一時代作っちゃった作品と同格に並べてよいものか。

私が思うに、その原因は、横島という主人公役の存在です。諸星あたる―横島忠夫系の好色・小細工型男性キャラの系譜って、ここでほとんど途切れちゃってるのですよ。読者やSS作家が“次”にいくことができなかった。現在存在する「女の子いっぱい型(ラブ)コメディ作品」の主人公は、横島ではなく、次回紹介予定の柾木天地の系列なんです。

良い面でも悪い面でも、GS美神は現在のハーレム系作品のテンプレートができる以前の作品でした。


はあ、長かった。読んでくれた方、ありがとうございました。

hatikadukihatikaduki 2008/10/25 09:36 >『一番湯のカナタ』
これ凄く面白いですけどね。女の子可愛いし。セイリュートとアニーは人外好きにはたまらんです。
ただ、濃いネームと過剰なエフェクトと作者のテンションの高さが若年読者を置いてきぼりにした予感と言うか。主人公の設定もなんか似てるし、『重機人間ユンボル』を連想させるマンガですね。

FXMCFXMC 2008/10/25 11:18 やっぱりジャンプなら突きぬけレベルじゃないですかw
私の『一番湯のカナタ』への評価は散々です。まず、SF(笑)。主人公がちっともサンデーでない。お色気ネタがジャンプお色気枠がぬーべー(93-99)だった時代のノリ(02年というとスクランと同世代ですよ)。同居モノと見せかけてバトル展開……椎名さん殺陣とかどうでもいいと後に『椎名大百貨店』あとがきで告白。
私は作家の自主性や主体性をあまり尊重しない人なので、作者の作りたいモノと読者の見たいモノを一致/両立させる努力が見られない代物には厳しいです。特に三大少年誌は読者100万人ですから。また例の「上下分離問題」ですよ。コアな漫画読みから評価されるような作品を作りたかったら、クオリティ維持のことを考えても、月刊誌でやった方がみんな幸せ。
この分裂はサンデーよりジャンプ読者の間に顕著で。その辺のすり合わせをがんばって達成できなかった『武装錬金』は残念に思うけれど、『ユンボル』打ち切りは当然だと思います。

T 2008/10/25 13:09 MISTERジパングは打ち切りじゃないと椎名先生が当時サイトで言ってたはずですけど。
アンケートはともかくコミックスはそこそこ売れてたみたいですし。
椎名先生が冷遇されていたと言われてるのは、当時からサンデー編集部の方向性に何かとおかしなことが多かったからです。
カナタ打ち切りから絶チル連載までに始まった新連載は現在残っている結界師とハヤテ以外はほぼ壊滅状態でした(しかも後者は読者受けを狙った作風で早くから結果を出したにも関わらず初期は冷遇気味)。
あの悪名高き怪奇千万十五郎の短期連載版と、絶チル読み切りを含めた椎名先生の短編連作は同時期にサンデー増刊号に載りましたが、即連載が決まったのは前者。
それから一年経ってようやく絶チルが短期連載にこぎつけたと思ったら、同時期に連載されたのが雷句先生の話の中でも問題になった冠編集担当の東遊記。
そもそも打ち切りになったカナタも、同時期に連載されていたもう一つのサンデー黒歴史である旋風の橘より連載期間が短く、あの頃の椎名先生はいくらなんでも扱いが悪過ぎましたよ。

系譜系譜 2008/10/25 14:58 「まじもじるるも」の主人公・柴木は、横島の系譜かなって思って注目しています。
小細工系男の復活に、期待したいな。

hatikadukihatikaduki 2008/10/25 20:29 当時カナタの作品としての価値と椎名の努力が評価されなかったことは不幸なことだなあと思いますけど、別に打ち切りが不当だとは思わんです。けど、いまになって単行本で読むぶんには関係ないすからね。
ちょっと読み返してみましたけど、全29話で一度もテンションが下がらないし、セイリュートはかわいいし、迷走してるわりに妙にまとまりがいいし、全3巻と手短だし、オススメしやすい良いマンガだと思いますよ。

FXMCFXMC 2008/10/25 21:53 サンデー編集部が、自社の古参作家の方針の踏襲と、他所の売れ線のパクリを、延々と繰り返してるのは87年以来ずっとだから、あそこがおかしいのはなんら否定するつもりはありません。
でも、『MISTERジパング』の地味さ(それを打開するべくタイムスリップネタや有名大名を投入して梃入れをはかった後半の展開は正直見ていて痛々しい)や、『一番湯のカナタ』の外しっぷり(テンションの高さが私には逆に置いてきぼり感)は、どのみち三大誌で生き残れるものではなかったと思います。
底辺争いしてるほかの作品や、代わりの新連載の話を持ち出したら、どんな打ち切り作品だって擁護できちゃうわけで。サンデー編集部が、マトモに機能していたとしたら、今度は純粋に地力でほかの作品に負けていたんじゃないでしょうか。

まじもじるるもって、シリウス? わたしゃ知らんとです、チェックしてみようかなと。

FXMCFXMC 2008/10/25 22:07 とくめーの考えでは、漫画家・椎名高志の最大の特長は「短編の名手」という点で、長編よりも短編か短編連作的要素を持った作品の方が向いていたんだと思います。同時期の、GSホームズや椎名大百貨店収録の短編は文句なく出来がいいですから。

naijelnaijel 2008/10/28 13:12 征木天地と横島忠夫の融合点として「ひぐらしのなく頃に」の前原圭一はいかがでしょうか
ちょいエロでヘタレで鈍感だけど頭の回転
速くて分野限定だけど悪知恵が利いて最後の最後にはその知恵と勇気できっちり主役の任をこなす、という。

FXMCFXMC 2008/10/29 12:03 確かに最近珍しい小細工型の主人公ではありますな。いまいちメンタルが脆かないかと思うのですが、後ろ弾に弱いのもある意味お約束。
メフィスト系の「天才型」の影響も見られますが、性格の面でそっちの人たちとも違いがある。
彼はもともと「昭和」の人物だから当然か。あれもある意味「古き良き昭和」を缶詰めにして閉じ込めようというアプローチだったのかもしれません。で、その村がダムに沈められるとか謀略の舞台になるとか、なんだか意味深ですね。
http://d.hatena.ne.jp/FXMC/20061119/p2