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とくめー雑記(ハーレム万歳) このページをアンテナに追加

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2008-11-30

ハーレム系作品史 1992 天地無用!の必"要"性

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えー、11月中にはやるというお話の、ハーレム系作品史『天地無用』の話。

とくめーにはとにかくそのとき出せる情報を全部叩き込まねば気がすまないという悪癖がありまして。アニメ史的な位置づけに注目して語っていったら、8kb。4000文字ぐらいの長文になってしまいました。


前回の『GS美神』のことはきれいさっぱり忘れて、先々月の『うる星』のアニメ版の話に戻りましょう。結局のところ。押井守は『うる星』を途中降板しています(84)。原作者との軋轢や映画版作成に伴うスケジュールの混乱など、好き放題の責任を取らされた。80's中頃から、地上波アニメでは、製作者の暴走が以前ほど許されなくなりました。たとえば富野なら『Zガンダム』(85-86)の次作が、暗いのダメよという会社の意向で『ガンダムZZ』(86-87)、その後しばらく地上波を離れていたり。

当時、漫画界で異常な強さを誇っていた集英社と、その相方である東映が、アニメ製作者による勝手な改変をあまり認めない方向だったらしく(原作追いつき対策など“企画としての改変”はアリ)、80's後半から90's前半、ジャンプの天下の下で育った私は「原作付アニメは原作通りが基本」という意識を今にいたるまで持っているのです。殺意を覚えるほどの原作レイプ作画崩壊を見ないで済んだという点ではいい時代でしたが、アニオタ的には退屈だったと思います。

参照:オタク第2世代が生き延びてきた80年代後半の「アニメ冬の時代」

で、そんな“つまらない”地上波アニメに馴染まなかった、クリエイター志向の方々が流れ込んだのが、その頃勃興しつつあったOVAという媒体。初期のOVAというメディア『日本アニメ史学研究序説』 *1によれば「商品にもなりきれず、かといって作品というにはあまりにも片輪な、どっちつかずのモノばかり」という状況だったけれど、会社もスタッフも次第に作品性と商品性を両立させる方法を身につけていきました。押井守の話の続きをするなら、『天使のたまご』(86)→『機動警察パトレイバー』(88)ってな具合。

その爛熟極まるOVAの中で、エポックメイキングな作品を5つ挙げるならまず間違いなく入るであろうものが、今回紹介する92年の『天地無用!』。“元祖ハーレムアニメです。


なにが新しかったのか、それは柾木天地という主人公の「発明」です。

柾木天地岡山県内に暮らすお人好しな高校生男子。宇宙からやってきた美女美少女に次々好意を持たれ、振り回されてさあ大変。実は「天地剣」なるライトセイバーを使う、星間国家の最強の戦士で未来の指導者。

再び『日本アニメ学研究序説』を引きましょう。「OVAにおいて、強くて可愛い女の子というのは必須の条件であったのだが、その核に、普段はサエないけれど、いざとなると一番強いという男の子をすえることで、この『天地無用』は、お色気ドタバタ路線から一転して、シリアス男の子闘い路線へ容易に転換できる設定を持ち得た」だそうで。んー、アニメ史的見方をすればこうなるんでしょうね。とくめーの見方としては、中心となる男性主人公の存在によって、「強くて可愛い女の子」のバトルやお色気シーンだけじゃなくて、恋愛感情とか、主人公との“関係性”を描けるようになったことに着目するべきだと思います。

加えて、“元祖ハーレムアニメ”たる所以は、「複数ヒロイン」を明確に打ち出したこと。ハーレムモノと見なされがちな同居モノの先達たち、たとえば『うる星』では、既に説明したように、ヒロインと呼べる(あたるに好意を持っている)のはラムだけ。『ああっ女神さま』(コミック版88-,OVAは93-94)でも、ウルドスクルドは「賑やかし」で、ベルダンディー以外とのエンドは想像することすら難しい。それに対して、『天地無用』では天地を挟んで魎呼と阿重霞が取り合いをするのが“いつもの風景”となっている。魎呼の優位というのはあるのだけれど、ラムやベルダンディーの「絶対優位」に較べれば相対的なものでしかない。世界設定的に重婚上等だし。

それではいつものアレ、いきましょうか。ヒロイン紹介。基本OVA版で。


メインヒロイン魎呼宇宙戦艦〈魎皇鬼〉を駆り、銀河荒らしまわっていた、傍若無人な(元)宇宙海賊。祠の奥でミイラになってた彼女を解き放ってしまったのがある意味天地の運の尽き。ミイラで初登場するヒロインというのも稀かと。OVA1話後半丸ごと使っての鬼ごっこで飛ぶ・壁抜け・ビームなど強烈な能力を天地に見せ付けたのち柾木家に居つく。その日常は、食う、呑む、寝る、天地を追い回すの4項目で構成されている。

そのライバルキャラ…という立ち位置の柾木・阿重霞・樹雷。宇宙に覇を唱える樹雷星の第一皇女。見た目は正統派のお姫様で、物腰はおしとやか、中身は恋する乙女、戦闘能力は結界を使うサポート型、本来ならメインヒロインでもおかしくないヒトなんだが、魎呼と関わるとすぐプッツンして暴走わがまま姫になってしまう不遇キャラ。実は天地の先祖の遙照の妹で許嫁で――おばあちゃんと言わないで。

阿重霞の妹。柾木・砂沙美・樹雷。おばあちゃんと(ry)。人望厚き柾木家の食の番人。皇女のはずなのに家庭的ないい娘。天地を「天地兄ちゃん」と呼び慕い、ちゃっかりいいところを貰っていく。スピンオフ企画では主役。お子様キャラって得ね。阿重霞が「姫」なら、砂沙美は「巫女」で、天地世界の創造神である三女神の一人津名魅の寄り代として、ストーリー上も最後の収拾役に駆り出されることあり。……これは美味しいのか?

ギャラクシーポリスの宇宙刑事九羅密美星。頭が悪いわけではないのだが天然で、真面目なのだが集中力がなく、能天気なのに怖がりで泣き虫で、悪意はないのにトラブルをいっぱい呼び込んでくる、かなり大変なお姉さん。性格は癒し系だが、関わると苦労は耐えない。

天才科学者白眉鷲羽。見た目は少女だが実は何万歳っつー「ロリババア」。もしかしたら元祖かも。人工生命体である魎呼の“母親”でもある。天敵は美星。美星がトラブルを起こし、鷲羽が収拾するというのは、ドタバタ短編のお約束。実は三女神の一人。


成功した同居モノの例に漏れず、この主要キャラ勢は、たとえば魎呼は鷲羽にかなわず、鷲羽は美星に手を焼き、美星はよく魎呼に怒鳴られて目をうるうるさせているなど、天地を中心にして、絶妙なバランスの取れたひとつの「家族」を形成しています。わがままなおねーさんたちとの騒々しい日常。そして長編ストーリーだ劇場版だという大事になると、協力して敵に立ち向かうのです。

この複数のヒロインが並立する作品設定は、商業的にも旨みのある方策でした。ヒロインそれぞれについてファンの支持が見込め、それぞれについてCDやキャラクターグッズなどの商品展開を行うことができたのですから。同時期の地上波セーラームーン(92-)などでも行われた商売です。

それにしても。『天地』のヒロインは(砂砂美以外)つくづく問題児揃い。彼女たちに関わる厄介ごとは、軒並み天地のところに持ち込まれます。「ヒロイン絡みの面倒は全てお人好しな主人公のとこに降ってくる」、これも現在まで続くハーレムモノのひとつのお約束といっていいでしょう。美女美少女に振り回されるのも、いざというとき不思議な宇宙パワーで彼女たちを守るのも、男子の本懐ってなものです。


なんか、「今になってみれば当たり前のこと」ばかり語っていますね。現行のスタンダード自体の確立に大きく貢献した作品だから仕方がないのですが。

現在も量産されている後続作品群と異なる『天地』の特徴といえば、原案の梶島正樹が作画側出身であることからくる視覚面での“センスの良さ”でしょうか。メカメカしくなく「樹」をベースにした樹雷の技術体系や、和風なんだけどどことなく近未来風な服装(でも樹雷皇家の戦闘服はいただけない)、宙に浮かぶ露天風呂、ノックしないと湖に飛ばされる鷲羽の部屋など、大胆なのにどぎつくならない「宇宙」で「和風」なデザイン。

逆に設定面では、「銀河を支配する樹雷皇家」とか「数百歳? 近親? 気にしないよ、遺伝子とか調整できるし」とか「一夫多妻上等。樹雷皇(阿重霞パパ)も妃2人いるし」というとんでもない力技。これはいいことばかりでなく、むしろ『GXP』や『OVA第3期』で、梶島に加えて黒田・ナベシンという凶悪な面子で情報量の暴走を引き起こすんだけど。それすらも、近年のスタンダードって奴じゃありませんか?


このOVA版天地、地上波で放送(93)したところなかなか好評だったらしく、95年の4月から、近親設定など削って安っちく作り変えたテレビアニメ版が放送されることになります。95年の第2・第3クールといえば、ちょうど『スレイヤーズ』の放送期間と一緒。当時、富士見ファンタジア文庫では『天地無用』のノベライズが行われていて、つまり、『天地無用』と『スレイヤーズ』の2作が、富士見書房、ひいては角川書店グループによる「地上波進出」の事実上の第一弾。『スレイヤーズ』が飛車なら、『天地無用』は右の銀将ってとこ(とすると、先行した93年の『タイラー』は突き捨てられる飛車先の歩か)。よほど使い勝手のいい企画だったらしく、スピンオフも含めてテレビ放送5回映画3本と馬車馬のように使いまわされています。

角川書店グループによる「テレ東6時台アニメ枠」への進出は、アニメ業界、ひいてはオタク界自体をがらりと変えることになります。衰勢のジャンプに入れ替わるように急速に台頭してきた、角川・スターチャイルドテレビ東京のいびつな同盟。そこで用いられたのは、OVAから生まれた商業戦略や、OVAで経験を積んだスタッフでした。『新世紀エヴァンゲリオン』なんてのもその流れの中で生まれた作品です。

 

 

なんか『天地無用』についての話というより、アニメ史的なことばかり語っていたような気がします。各メディアごと、各製作者ごとに分裂した『天地』について、細々と語ってみる――というのを来月分にしてしまってもよろしいでしょうか。そうと決まれば長谷川版と奥田版を仕入れにブックオフへ出動です。(1月追記:結局12月には終わらず、1月に超長いエントリを書くことになりました)


同人の流行年表

http://grev.g.hatena.ne.jp/keyword/Dojin_chronicle


いま、『天地無用』まできたでしょ?

次もここから選ぶとすると、『サクラ大戦』か葉鍵系作品でゲームについて語るか、『エヴァ』をだしに二次創作について語るか、今回のアニメ史以上に長い内容になりかねないのですよ。ってわけで時間稼ぎさせてください。メディアミックスについての考察と言及を深めておくことは、ゲーム論、二次創作論を語るにも重要だと思うので。


それから皆さん、ちょっと質問。エヴァ葉鍵系みたいな「95年のパラダイムシフト」の話が終わったあと、ここ10年ほどの作品なら、なに取り上げるべきだと思います? 正直、葉鍵系時代終了後のオタク界隈って、分散しすぎて見通しできないんです。萌え要素も特異なものでなく、バトルモノとかに普通に含まれる要素になっちゃいましたし。

美少女文庫二次元文庫がハーレム路線を選択した理由についての考察とか、ファンタジー史とライトノベル史2つの側面から見たゼロの使い魔論とか、時系列順にこだわらなければ、ネタがないわけじゃないんですけど。

*1:1998年発行。前に私は漫画の専門ではないと言ったが、実はアニメの専門でもないので、アニメ史については幾つかのアンチョコに頼っている。そのうちのひとつがこれで、中身は『ヤマト』から『エヴァ』まで20年の日本アニメのよくできた通史。巻末には98年までのテレビアニメ・ムービーの総覧と主要OVAの紹介があって、Wikipediaなんて便利なモノができるまで辞典代わりに使っていた

hatikadukihatikaduki 2008/12/01 00:57 ゼロ魔論!読みたい!
シャナ論とか阿智太郎論とかもあまり見ないですね。あとハーレムでないけどキノ論とかも。
あとはギャルゲ、深夜アニメ、ラノベ、少年マンガエロコメ枠、文庫系児童書等、各ジャンルにおける萌え化の進行つーかキャラデザの推移とかどうでしょうか。よくわからんで言ってますが。

FXMCFXMC 2008/12/01 01:34 とくめーさんはそんな物知りじゃなかとですよ! 取材期間も含めての月刊企画なわけで。漫画あたりについて幅広い知識を求められると悶絶してしまいます!。

FXMCFXMC 2008/12/01 15:25 児童書といえば、昨今の青い鳥文庫はすごく「ライトノベル化」してますね。イラストもアニメ塗りのモノ増えましたし。講談社の持ってる他レーベル――メフィストやX文庫、下手すりゃマガジンの漫画なぞより、よほどアニメ化向きなんじゃないでしょうか。

hatikadukihatikaduki 2008/12/02 01:27 マンガ絵の表紙の児童書って以前から(特に青い鳥文庫には)ありましたし、いっぽうで最近の青い鳥文庫にも昔ながらの国産児童文学ぽい表紙も結構あるんで、ライトノベル化が進んでるとはそれほどかんじないんですよね。あんまりストレートな萌え絵も他よりすくない気がします。
いっぽうで理論社のフォア文庫の表紙はだいぶんラノベ側に傾いてる感じ。いまの公式サイトのトップとかいきなり「LOVE!」とか言っててすげえ笑えます。おまえはどこの富士ミスか。
で、もうちょっと本好きの子供向けに講談社の「YA!ENTERTAINMENT」やちょっと硬派な「ミステリーランド」、理論社の「ミステリーYA」、ジャイブの「ピュアフル文庫」とかがあって、そこに従来のラオタを「メディアワークス文庫」で切り離して低年齢化を果たした電撃が殴りこみ、と言う構図になるんではないかと楽しみにしてます。
新書版のラノベも最近元気ですし(幻狼ファンタジアの『翼の帰る処』とか面白かった!)、来年あたりに今までのラノベの中核がいきなり消滅したりするかも知んないすね。

hatikadukihatikaduki 2008/12/02 01:39 って、フォア文庫は理論社(だけ)じゃなかったよ!
“フォア文庫(フォア ぶんこ)は、岩崎書店、金の星社、童心社、理論社が協力出版している児童書のブランドである。名称にある「フォア(FOUR)」はその4つの出版社をあらわしている”(ウィキペディアより)だって。俺間抜けすぎる!

FXMCFXMC 2008/12/02 16:20 青い鳥にしてもフォアにしても、なにがしたかったのか心底理解に苦しむ一昔前の富士ミスよりは、よほどライトノベルですねっ。挙げられたようなレーベルが、萌えオタ向けか中二病患者向けの尖がった方向性に特化されつつある“いわゆるライトノベルレーベル”に代わって、小学校高学年〜中学生くらいの若年読者を持っていってしまう可能性は十分あると思います。
ラノベの中核…って、今のラノベの中核ってどこでしょう。そんなもんは既に消失してるような気がしないでもありません。岡田の言うオタクの分裂の話はまさに深刻で、いまやラノベ読みといっても一枚岩ではありませんからねー。私は積極的に分派運動を主張しちゃってますしw 月厨直系の中二病小説とか、東大閥がプッシュしてるようなブンガク気取りなんて興味ねーやー。

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