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2010-09-07
ハーレム系作品史1996 サクラ大戦/語られない90年代 (4) 承前
このエントリは、
『ハーレム系作品史1996 サクラ大戦/語られない90年代 (1)』
『ハーレム系作品史1996 サクラ大戦/語られない90年代 (2)』
『ハーレム系作品史1996 サクラ大戦/語られない90年代 (3)』
の続きです。
まずはそちらからお読みください。
もう4回だよ、どうしよう。
ゲーム形式:AVG+SLG(SRPG)
ようやく、『サクラ大戦』本体の話に入りました。
公式には「ドラマティックアドベンチャー」などという恥ずかしいジャンル名が冠されていますが、ゲーム形式はよーするに、戦闘パート付のアドベンチャーゲームですな。
ま、一話の流れを追っていく形で説明していきましょう。
『サクラ大戦』というゲームを起動すると、ロゴのあとに出てくるのは美麗なOPムービー。田中公平渾身の『檄・帝国華撃団』、人呼んで「ゲキテイ」。
素直にゲームを始めれば、第一話開始後間もなくまたムービーが。帝都の街並み、そこに潜む魔物。ヒロイン真宮寺さくらの顔見せシーンでもあるのですが、それだけでなく「世界観の提示」にムービーを使っているのが広井王子のセンスの良さです。
で、その「世界観」というのが、「太正」という、蒸気技術が史実より発展したスチームパンクな大正時代。英米系のフィクション作品では、ホームズ・ドラキュラ・ウェルズ作品の舞台でもある“ヴィクトリア期ロンドン”がよく舞台として用いられるのですが、その日本版というわけです。実はたっぷりと用意された裏設定を、ひけらかさないのが後のゼロ年代的作品群にはない慎み。
主人公、大神一郎は、新任海軍少尉。海軍士官学校*1を主席で卒業後、秘密部隊「帝国華撃団」の隊長として銀座“大帝国劇場”に送り込まれる。
ところが、劇場の支配人、日露戦争の英雄米田中将は日の出てるうちから酔っ払う昼行灯、彼に与えられた仕事は、帝国“歌劇団”の雑用係。エリートの矜持を打ち砕かれた大神さんが、劇に情熱を燃やす少女たちと出会い、それでも今できることをするしかないと覚悟を決めたところで、実は歌劇団は歌と踊りで帝都を鎮護する仮の姿、本当は帝都を守護する秘密部隊だったのだ! 出撃! と。
これ以降、『サクラ大戦』という作品は、“帝国歌劇団”を舞台にして隊員と触れ合うADVパートと、“帝国華撃団”を舞台にして敵と戦うSLGパートの繰り返しで進行することになります。
日常パートとバトルパートの繰り返し。ヒロインたちとの日常が戦う力の源となり、主人公の奮闘がハーレムシチュに正当性を与えるという、元祖ハーレムアニメ『天地無用』から、『ゼロ魔』『禁書』といったラノベ発のヒット作まで、バトル要素を含むハーレム系作品に脈々と続いていく黄金律です。
しかも、1話ごとのエピソードが日常とバトルのセットになっているだけでなく、ソフト1本全体を通して見れば、序盤から中盤にかけてがヒロインと触れ合う「日常パート」、クライマックスがヒロインとともに戦う「バトルパート」の役割を果たしてます。日常とバトルの構図を二重に使っているわけです。
んで、『サクラ』の日常パートたるADV要素についていいますと――
後の(現在の)美少女ゲームと較べて、まず「選択」の多さが目立ちます。事あるごとに劇場を歩き回らされ、会話では選択肢を問われます。しかも時間制限付だったり、シナリオ途中ではセーブできないセーブポイント方式なので、エロゲのように適当に選んで選択肢に戻るとかいうのもできません。正直、ADVゲームとしては冗長かつ面倒です。
まあ、安心してください。『サクラ大戦』の選択肢は、ミスってもバッドエンドに突っ込んで補習授業を受けさせられるようなものではありませんので。
選択により変化するのは、主にヒロインの好感度(音がなるのですぐわかる)。最近の美少女ゲームではヒロインごとに個別のストーリーがあるのが普通ですが、『サクラ』の本筋は基本一本道でどのヒロインでも変わりません。
数多い選択の本当の意義は、テキストを見るだけで受身になりがちなプレイヤーと、大神一郎という主人公、ひいては『サクラ大戦』の作品世界を接続することでしょう。
この手の美少女ゲームの中でも、大神一郎という主人公の評価の高さは異例の域です。本編だけで13本旗を立ててもハーレム属性を持たない人たちから非難されず、外伝や続編を「主人公が大神さんでないからダメ/買わない」と言う人がいるほど。
基本は真面目で硬派な海軍軍人で誠実にヒロインたちと向き合うかっこいいヒーローなんだけど、(ロリコン)お兄さん役やいじられ役から、はては風呂場で「身体が勝手に…」なんてネタもプレイヤーの選択次第で自在にこなし、それでいて、キャラに分裂した印象を抱かせない。(インパクトのある髪型のおかげもあって)“顔のない主人公”にもなってませんし。
二の線でも三の線でも、きっちりプレイヤーの期待に応える主人公っぷりは大神さんの魅力です。ADVゲーム形式(主人公視点)の作品の主人公になにより重要なのがこの点でして、エロゲ媒体などでヘイトを稼ぐ主人公といえば、なにより「肝心な時にヘタレる」「プレイヤーの選択を無視する」など、プレイヤーの期待を裏切る奴。
先ほど、『サクラ大戦』のADVパートは、“ADVゲームとしては”冗長かつ面倒だといいました。
しかし、大神さんと共に(あるいは大神さんとなって)劇場を歩き回り、ヒロインたちと会話する、サクラ大戦のADVパートは、プレイヤーと作品世界を接続する“インターフェイスとしては”非常に良く出来ています。
戦闘シーンはSLG、最近はSRPGなんて言い方もしますな。
マス目を区切ったマップの上で、大神さんや指揮下の美少女たちの機体を動かし攻撃させ敵を倒す。ここでも、指揮官である大神さんの立場と、機体に指示を出すプレイヤーの操作が、きちんとシンクロしています。
SRPGというゲーム形式は、RPGよりもキャラ要素との適合性が高く、特定のキャラに愛を注いで贔屓しやすいシステムになってます。RPGではだいたい均等割の経験値もSRPGでは特定キャラでとどめを刺させて集中させられますし、装備がシナリオ進度に制約されがちなRPGより資金やアイテムの重点配分もしやすい。SRPGスタイルのシリーズには、『POWER DOLLS』『ファイアーエムブレム』『ラングリッサー』『スーパーロボット大戦』など、女性キャラが人気を博した例が多く見られます。アダルトゲームでも『うたわれるもの』という成功作があり、またエウシュリーが好んでこの形式を採用しています。
『サクラ大戦』の場合、これらのシリーズのような経験値や改造のシステムはありません。代わりにユニットの強さを決めるのが、ADVパートでの大神さんと各ヒロインの好感度。大神さんがきちんとヒロインみんなに目を配ることで部隊が全力を発揮でき、中でも好感度の高い一押し娘は攻防性能が上がって戦闘でも特に活躍できる。機体は霊力≒意志の力で動くという設定の反映であると同時に、また例のあれ、日常の中で培う想いが戦う力になるという構図の反映なわけです。
大神さんとヒロインの心が通じ合うと、合体技なんて真似までやってのけます。破壊力は抜群です。主にプレイヤーの腹筋への。さあ、見ろ、そして吹け。→サクラ大戦合体技集 in ニコニコ動画
ちなみに。『サクラ大戦』シリーズのSLGパートの難易度はかなり低いです。SLGになれない人でも、2〜3回でクリアできるでしょう。
さらに未熟なプレイヤーをサポートするのが大神さんの特殊コマンド「かばう」。敵の攻撃を大神さんが受け止めダメージを無効化し、さらにヒロインの好感度も稼げるというありがた救済措置。これのおかげでADV・SLGとも安心してぬるプレイができます。大神さん、ヒロインにとってだけでなく、プレイヤーにとってもマジヒーロー。
そういうわけで、SLGパートもまた、ただの詰め将棋のゲームではなく(むしろ「ゲーム」と解釈するには展開が平板で難易度が低すぎる)、ADVの選択肢同様、作品世界とプレイヤーを接続するインターフェイスの役割を果たしているわけです。
戦闘で勝利すると、「勝利のポーズ、決めっ!」という小っ恥ずかしい決め台詞があって、大神さんもプレイヤーも戸惑ったりするのですが、ゲーム1周プレイして、10回くらい繰り返すと、これも当たり前に思えてくるから不思議なものです。





・期せずして始まる同居生活(「最初は」必ずしも良好でない)→ラブひな・とらハ2
・ADVとマップSRPGを兼ねる→StugeoEgo(IZUMOなど)
・選択肢時間制限→とらハ3・Schooldays
・ヒロインのテンション=戦闘力→ギャラクシーエンジェル(少なくとも漫画版)
合体攻撃か……。随分前、もしかして今もかもしれないが、週少ジャンプ・Vジャンプあたりで特集記事を見た気がする。推定「ラブラブ天驚拳」が先立って現在へ至り、「ロイヤルハートブレイカー」へと連なる……っ。さあ見に逝くか。
「合体攻撃」については仮面ライダーのWライダーキックから綿々とつながっているわけですが、それを美少女ゲーに応用してして、しかもあんな演出を挟んで、美少女ゲームの演出として昇華してまったのが凄いといえるでしょうね。
良いんじゃないの? 空想科学世界とかあの辺も出てたでしょ?
そもそも何が縁なのってことならまた別の話だけど。
『サクラ』の諸要素自体は、先例もあればその後も各地で散見されてるので、特殊というほど特殊ではないようです。やってることは、自体ふつーのことばかりなんですよ。あの完成度と、あの規模の企画でやったってことが珍しいだけで。
横山智佐と広井王子の馴れ初めはよくわかりませんが、ジャンプ放送局絡みもあるかもしれません。というのは、ジャンプ放送局のさくまあきらと、広井王子は、ともにハドソン人脈の人だからです。