書けなかった小説2題

微妙に書けなかったシリーズ。

  • 宇宙テロリストの話

21世紀後半の民間宇宙開発が割合できるようになった世界。
無軌道かつ資本の論理だけにとらわれた宇宙開発が徐々に大勢を占めようとしている中、「わざわざ宇宙でなければならない精神的な理由」を掲げたテロ組織が二足歩行ロボットを使って宇宙空間でドンパちしながら企業や国家などとわたりあう話を考えていました。
立花隆の「宇宙からの帰還」を読んだ後から考えていた、ある意味「宇宙教」ともいえるような妙な宗教感と、漁師が海を神聖視し、海に対する感謝を忘れないという話をもとに、「実利を求めない思想的テロ組織」と「宇宙空間でロボット同士がドンパチ」というエンターテインメント要素を微妙に組み合わせて書き始めたものでした。
いろいろとアクションシーンがあった末、企業(資本主義)+国家+地球上の宗教が自らの利益のためにケスラーシンドロームを起こそうとするのを必至に食い止める、本来反体制側のテロ組織というクライマックスへなだれこもう……と、構想していました。
プロットを立て、構成を決めて書き始めたあたりでなんか理由があって途中で止まったような。同時期に書いていた小説「Lives(1)」は最後までたどり着いたことを考えると、書いているうちに飽きたのかなぁ。


のちに、「プラネテス」を読んだとき、資本の論理+宗教+ケスラーシンドロームという舞台設定に「やられた」と思いましたとさ。みんな同じようなこと考えるよね。
ちなみにテーマまで何となく似てます。だから、今から書くともないですね、この話は。どうやっても「プラネテスの二番煎じ」になりますし。

  • 宇宙を見上げる小学生と同級生の女子と大学生の話

先の話の主人公の小学生時代の話。
初の民間宇宙観光客(世界最大の発明王)が、研究用宇宙ステーション滞在中に宇宙飛行士のテロに巻き込まれるのを地上から見上げる話。
小学4年生の主人公が、近所の大学生と望遠鏡で宇宙ステーションを見上げていたところ、地上からでも見える明らかな大事故を目撃。でも、それは事故ではなく、宇宙観光客を人質として拉致したうえでのステーションのスタッフ全員が起こした初の宇宙テロの光景だった。
「思想さえあれば過酷なはずの宇宙もテロの舞台となる」という事実をつきつけ、「行き過ぎた宇宙の商業化に反対する」要求を地上スタッフを含む全宇宙業界の関係者が反乱を開始。その声明を出したのはステーションの責任者である日本の航空宇宙事業団の主席技官であった。
主人公と大学生は、その一人娘である同級生と一緒に地上から望遠鏡ごしに世界が徐々に変わっていく現場を何をすることもできずに目にする。


……という話も同時にプロットを立てました。正確には、先のロボット小説を書いた際に、主人公の行動原理を考えていったらそういうエピソードが浮かんだというか。
狂信的な行動原理の向こうには、揺るがない経験ってやつがあるよね、という単純なネタではあるんですけど。


ちなみにクライマックスで、地上に捕虜の口を借りて要求を伝えようとしていた矢先に、捕虜がいきなり「私がどうなろうと世界の流れは止まることはない!」と叫び、直後にテロリストに殺され(都合悪いことに全世界生中継)、それが引き金となって宇宙業界の人間は間接的に殺されることになるんだけど、少なくとも主人公のこころには「何か」が残る……展開を考えていましたが、こっちはほとんど書かないうちに本編ともども没に。
地味っぽい話が好みだったんですね、このころの私は。
今なら「エンターテインメントじゃない」と切って捨てられそうですな。個人的に。