行商レポート vol.10:H-art Beat


courtesy of each artist, H-art Beat, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
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ハートビートのギャラリー紹介は こちら から
ハートビートに関しては撮影した全ての画像を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


建築や空間に相応しいアートワークを、顧客の要望に応えプランニングから納入までを請け負うハートビートは、現在はギャラリースペースを持たない営業を続けていますが、これまでの海外のアートフェアへの出展を含め、他の行商出展ギャラリーと同様に、より広いお客様に素晴らしい美術とその価値を訴えて行けるよう、活動の幅を広げています。国内のアートフェアは今回が初出展になります。って、出展者じゃないのにこんな文章書いちゃって、なんか済みません。美術をお客様の元に届ける仕事の在り方って、色んな形を取り得るんですよね。

出展作家は3名。今井龍満さん、坪田昌之さん、三田健志さんの3名。これから筆者なりのレビューを書いて行きますが、他の出展者と比べて、一見大人しくまたスタイリッシュだったハートビートの作家作品は、知れば知るほど良い意味でひと癖もふた癖もありました。勿論あるがまま見て楽しめる内容でしたけれども。床に置いた紙に絵具(主にエナメル塗料を使われるそうです)を垂らして動物や女性を描くのは今井さん。その技法により偶然性をも内包して描かれた自由な線は、その力強さや奔放さを十二分に表現しています…って書こうと思ったんですけど、会場では垂らして描かれたと気付かなかったので(自分だけなのか…自分だけなのか…)、ディレクターの西山さんに質問しなかったぐらい、高度なコントロール力に驚嘆です。色彩のバランスも相当グッドです。

坪田さんが彫刻に扱う木はシナノキ(Basswood)というそうですね。ちょっと調べたらフェンダーはエレキのボディに使われているそうです。いきなり余談から始まりましたが、上品なクラシックやジャズの調べが聴こえて来そうな坪田さんの作品の支持体が、エレキに使われる物と同じっていうのも、何だか意外な感じが。余談終了。大きな作品が幾重もの層から構成されている作品だからか、彫りのみで制作された作品も、遠目に層が積み重なっている様に見えました。ミニマルと言うには、手業の暖かさが強い気がするのですが、その豊かな色彩と色彩のパターンは、どこかミニマルアートを思い出させます。

全てのキャプションを覚えている訳ではないのですが、HPを確認する限り、三田さんの作品タイトルの多くには等高線という言葉が含まれています。当然ながら等高線は現実には引かれてはいないので、実世界では見えない線ということで無形線とも言うそうです。具体的な何かが映っていながら、現実味を欠いた面白い浮遊感がある作品にはうってつけのタイトルですね。作品画面の中にある曲線を捉えてのタイトルかもしれません。一体どこから何を撮っているのか、三田さんに聞けば分かるのですが、想像するのも楽しい懐の深さを感じる作品です。ちなみに、筆者が以前東京で見た三田さんの個展には、何かに反射して映る景色を撮影した作品もありました。それは一体虚像・実像のどちらなんでしょう?