行商レポート vol.26:GYOSHO REPORTS BY VISITORS

こちらの項目では、行商をご覧になったお客様が書かれたレポートを紹介して行きます。

中の人の個人的なご縁もあり、代表して子連れアート鑑賞日記のSeinaさんが書かれたレポートを全文掲載します。とても素敵な洞察のあるレポートを書かれている方は他にもいらっしゃると思いますので、見つけ次第ご本人のご許可を得られましたら、リンクを引用する形でご案内出来ればと思っています。

Seinaさんの文章は、震災が起きてから日が浅かったあの頃の状況を踏まえたうえで、全体的な纏めも素敵で良いなぁと思います。私も精進致しますデス、はい。Seinaさん、ご協力ありがとうございました!



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スパイラルガーデン スパイラル1F「行商 ギャラリー・サーカス」を観てきました。
(2011-04-01)

スパイラルガーデン スパイラル1Fにて

「行商 ギャラリー・サーカス」

を観てきました。


沢山のギャラリーを一度に沢山味わえるアートフェア大好きです。
今回は東日本大事震災以来ご無沙汰しているギャラリーさんも多かったので
とても楽しみに出かけました。


では楽しませて頂いたギャラリーさんの感想を。


neutron tokyo

大槻香奈さんの個展形式。
大きな作品が2つあったのだけど私はこちらの作品のすごさに圧倒されました。
1つ1つを細かく観ていくとろうそくがあったりプールがあったりなど
いろいろな小物がありそして繋がって行く様から長い物語を感じることが出来ました。
大槻香奈さんにもお話を伺うことが出来ました。
とても物語を感じたので「悲しい歌を聴いて自分を追い込んだりとかしたほうが描けたりしますか?」
と思わず伺ってしました。すると
「今はなるべく「普通な気持ち」で描くようにしています。いろいろな出来事が多いですから」
とのこと。
これからどんな作品に出会えるのでしょうか。興味津々です。


OUT of PLACE

大原舞さんの作品がとっても気になりました。
ギャラリーの方に「小さい時バービー人形を買ってもらえなかったことが人形作りのきかっけ」と
解説して頂いたらなんだか一気に親近感。すごく分かるその気持ち。
私も欲しいバック買ってもらえないから鞄とか作り始めたよなあと
思い出しました。
※私のストレス解消法は鞄作りです。


M7: MAQUIARTO 7TH FLOOR ART ROOM

国立新美術館「アーティストファイル」にてとても神秘的な気泡の作品を発表していた
斎藤ちさとさんの作品。何度観ても大好きです。
今回はプリントで大量に展示されている形式がとても泡の動きを体感出来て
すごくよかったです。
階段の場所にあるのもよかった。
動きながら鑑賞すると動きがより内面から感じることが出来ました。
斎藤ちさとさんともお話出来て嬉しかったです。


GALLERY MoMo

こちらはもう息子がくつろぎすぎでございました。
昔からお世話になってるスタッフさんに久しぶりに会えたということもあるのですが
今回のMoMoさんのブース。息子の超好み。
このように「迷い」や「破壊」を感じさせる作風大好きなんです。
(もうすぐ5歳なのに。。)
これは浮世絵好き、歌舞伎好き、日本画好きが影響している模様。
本人曰くとてもとても心地よかったとのこと。
いつもありがとうございます。


eitoeiko

こちらは以前伺った航空博物館の展示を息子が思い出すことが出来たので
親子でとても楽しめました。
沢山の紙飛行機綺麗だったなあ。。と飛行機の作品を眺めていたら
こちら「紙」ではありませんでした!
(許可を頂き触らせて頂きました。ありがとうございます)
こちら以前のウルトラでは女装に驚かされました。
(LAで大好評だったとのこと!さっすが!)
いつも驚かしていただきありがとうございます。


SANAGI FINE ARTS

気になったのは岩名泰岳さん。
化石を連想させるような質感あるタッチには
「生き物がそこに存在する証明」のような強い存在証明感を
感じることが出来て個人的になんか安心の気持ちを貰うことが出来ました。
存在証明、ほしいですよね。あまりに儚いものだと
感じることが多い日々ですもんね


GALLERY ZERO

こちら大阪のギャラリーさんとのこと。
高橋将貴さんのドローイングから目が離せなくなりました。
寡黙だけどでも雄弁な気持ちが垣間見える瞳。
ずっと見つめていたくなりました。


本当はもっと沢山のギャラリーをしっかり観たかったのですが
息子もいろいろ動いていたし(いつも騒がしくて申し訳ないです。。)
それよりもいろいろ話して元気を頂きたい気分だったので
お話も沢山させて頂きました。ありがとうございました。


★写真の撮影・掲載は主催者の許可を頂いております。
 写真はiPhoneのカメラでの撮影です。画質がいいものではございません。
 興味を感じて頂いたらぜひ実際に会場に足をお運び頂ければ幸いです。



この「行商?ギャラリー・サーカス」は
近年私が鑑賞させて頂いたアートフェアの中でダントツに
「鑑賞しやすさ」に満ちあふれた展覧会でした。
1つ1つの作品に「のびのび感」があるとでもいいましょうか。

作家さん、ギャラリストさんが
自分が作った作品を胸を張ってのびのびとした気分で人に披露する。
そして観る側が
その作品をのびのびとした気分で自由に楽しむ。

のびのび感を前提とした自由な気持ちの披露。
今の東京ではかなり難しいことになっているからでしょうか。
場そのものがとても心地よい空間でした。

作品を楽しんで鑑賞できることに感謝出来る空間がそこにありました。
アート好きで東京に今週末にいる人は
絶対行ったほうがいいと思うアートフェアです。
あと現在の情勢で元気がない人を呼ぶのもいいと思います。
この情勢、「次、どうしよう」と悩みでも行動に移せない自分に
強い自己嫌悪を感じる人も多いと思うのですがスパイラルのあの空間にいると

「行動しよう」

という前向きな気分に自分を持って行けるような気がします。

沢山の元気を頂きました。
ありがとうございました。


4月3日まで。
11:00-19:00までの開催です。終了時間がいつもより早めです。ご注意下さい。

行商レポート vol.25:roid works gallery

courtesy of each artist, roid works gallery, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

ロイドワークスギャラリーのギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から


スパイラルカフェ横に据えられたひとつの大きな壁で作品を紹介していたのが、ロイドワークスギャラリー。文京区湯島と上野からそう遠くはない場所で、現在は企画展開催時のみ不定期でギャラリースペースを開いているそうです(今後ギャラリーとして常設する予定)上野界隈と言えば、個人的には美術館鑑賞がメインになってしまっていましたが、行商に出展したギャラリーでロイドワークスに花影抄(根津)、他にはスカイ・ザ・バスハウスやギャラリー・ジン、ガレリア・デ・ムエルテ、ギャラリー空、勿論東京藝大のお膝元と、ハコのジャンルを問わない幅広い美術体験が出来る一帯である事を改めて確認した次第です。

今回ロイドワークスが出展したのは4名の作家、小川千尋さんに田守実夏さん、原田慎也さんに南正彦さんです。ブース左手に展示されていたのは原田さん。十字に展示された真ん中に明らかに釈迦と思しき御姿が。また、その他の作品もその立ち姿や装具から見ると神仏の表象ではあるようです。当ブログのギャラリー案内にもあるように、中心の作品はまさに釈迦なんですが、随分ハードコアな感じがしますね。ハードコアと言葉にすると、どこかフェティッシュだったり暴力的な表現を思い描きがちですが(私だけだったらスミマセン。。。)、感情的主観的な意味付けを排すればそれは「中核」を意味する訳で、原田さんのバックグラウンドが例えば作品に現れている様な世界観だったとして、それが神仏の形に繋がるのは何ら意外な事ではないんですよね。仏の頭がみっつにハトサブレと一見笑いを誘う世界に見えつつ、その実非常に思慮深い小川さん(小川さん自身の説明が良いのでこちら を読んでね!)の作品に、幻想的な物語が背景にありそうな感触を孕みつつ作家本人の好きが思いっきり詰まっているのか、画面から人となりまで感じる暖かさと面白見があった田守さんの作品、そして鉛筆や木炭で静謐な世界を描く南さんは筆を画面に置き描いてゆく様を想像しても、どれも相当「ハードコア」。そう言えばディレクターの井浦さんが纏う雰囲気もどことなくハードコア…かどうかはとにかく、美術を心より愛し誠実な活動を続けていける優れた作家を、今後とも紹介して頂きたいですね。

行商レポート vol.24:neutron

courtesy of Kana Ohtsuki, neutron, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

ニュートロンのギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から


京都と東京にふたつの拠点を構えるニュートロン。5月末をもって京都の店舗を一旦閉店し移転する運びとなっており、変化の時期を迎えるギャラリーが個展形式で紹介するのは、大槻香奈さんです。今回出展された作品のようにアクリルを用いた絵画を中心として、写真や文章、イラストレーションなどジャンルに囚われない表現を続けている作家です。展覧会だけでなく、本の装丁や各種アートワークも手掛けています。作品に込めた思いについて、詳しくは比較的新しいステイトメントが大槻さんのHPのプロフィールに載っているのでそちらをご確認頂ければ。

制服を着ておらずより抽象的な作品もあったのですが、今回出展された作品の多くで制服を着ている少女が描かれています。その制服は少女らしさを現わすのではなく、個性を打ち消す為に用いられているのかな?作品によっては何かを纏っていたり、同化しないまでも体が薄れていたり、その白い肌、ある時はこちらを強く見据え、ある時は俯いているその視線なども、そういった意味を持っているような。ただ、一見そういった要素から、個としての主張をなくし、他者との関わりの拒絶しているポーズにも見えるのですが、その拒絶は、感情的な嫌悪や不寛容ではなく、精神においても肉体においても本質までは触れ得ない他者がそこに本当に存在しているのか、ということを意味しているように思いました。触れるってどれぐらいのことを指すのだろう、家族や友人、恋人など誰よりも愛するひとりのことだって分からない事ばかり。像が結ばれたと思った瞬間に霧となってまた触れられぬ相手を、どうすれば信じて、どうすれば無償の愛で接していけるのか。大きく開いた窓から射した光を浴び、冷たさと暖かさを帯びる大槻さんの作品を鑑賞しながらも、そんな事を考えていました。

行商レポート vol.23:Ten Thousand Gallery

courtesy of Tomohiro Nakagawa, Ten Thousand Gallery, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

テン・サウザンド・ギャラリーのギャラリー紹介は こちら から
※中川さんのブログ等によると、母体である万画廊とテン・サウザンド・ギャラリーの出展内容を設営当日に入れ替えたようで、それでギャラリー紹介の画像が万画廊と逆になっています。
テン・サウザンド・ギャラリーに関しては撮影した全ての画像を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


万画廊の新しいレーベルであり、直前に出展の決まったTen Thousand Galleryからは、只今万画廊で個展開催中の中川知洋さんが出展。曇っている様で光を孕んでいるような不思議な色彩、不思議な体格を持ったひとや動物、その中でも一角獣など象徴的な存在も描かれているのですが、キュートにデフォルメしたような幻想的な世界だなぁと思っていたら、中川さんご自身は国際幻想芸術協会なる組織に名前を連ねているので、幻想世界をキャンバスにアクリル絵具で現出させているのは間違いないようです。

ぶたちゃん可愛い〜〜〜!!!(写真4枚目参照)

「幻想芸術」(=ファンタスティックアート)をウィキペディアで調べると、「幻想絵画」ページの中に載っているファンタスティックの意味に、「極めて良いこと。魅力的で楽しいこと」と載っています。確かに「極めて奇妙で魔術的」に見える、「想像上の生き物や場所、あるいはそういったことに関する物語」(ウィキペディア同ページより)が描かれているようにも見えるんですが、中川さんのく作品群はシュールな存在感という限定された枠組みを超えて、また、落ち着いた色彩からは意外な程に、鑑る側の想像力を喚起し、誰でも楽しめるものとなっているように感じました。画面の中にいるそれぞれの存在は、もしかしたら下敷きに宗教芸術があるかもしれませんが、アイコンという言葉を用いる程にはキャラクター性を持っているとは個人的には感じませんでした。でも、それが却って効果的だったのか、某かの価値観に縛られず、それぞれが、キャンバスの中を動き回りこちらに語りかけてくる自由さを持っているようにも思えたりも。中部圏にお住まいの方は個展まだ続いていますので(5月1日まで)、是非ご覧あれ。ぶたちゃん可愛いなぁ。

行商レポート vol.22:展現舎

courtesy of each artist, TENGENSYA, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

展現舎のギャラリー紹介は こちら から
展現舎に関しては撮影した全ての画像を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


行商会場である青山スパイラルのスパイラルガーデンに入ってすぐ、受付隣にブースがあった展現舎は、大阪は江戸川橋に居を構えるギャラリーで、新しいジャンルの女性作家を世に紹介すべく、女性作家のみの取り扱いというユニークな活動形態を取っています。新しいジャンルを、というだけあって取扱作家のプロフィールを見ると、そのバックグラウンドは多岐に渡り、ギャラリーのアンテナが捉える範囲の広さと感度の高さが伺えます。今回紹介した作家は4名、倉澤梢さん、倉澤梓さん、momoさんにたつみさんです。倉澤さんおふたりは双子の姉妹です。この記事最初の写真は引きで撮ったブース全景になっていると思うので、そちらを引用して各作家の紹介をば。ブースは全体的にポップですね!どポップと言えるぐらいのポップ。キャプションを確認しなくても全員女性作家だろうなぁと分かる可愛らしさも備えています。

さて、ブース壁左から順番に行きます。どことなくレトロな女性像を描くのは倉澤梢さんです。顔を構成するパーツのバランスなのか、透明感もある色使いながら良い意味でモッタリしていて、ある種の女性内面に潜む情念の強さや在り方を感じさせたり。情念系の絵の典型から外れているかもしれませんが、それとは分からない表情や行動をしている女性が本性を現わした方が怖いんですって。私の全くの妄想なのですが。倉澤さんスミマセン。姉妹的な順番で、真ん中下半分から逆L字型(分かりづらい?)に展示されていたのは、倉澤梓さん。特徴的な表情を持った猫がキャンバスに、立体に縦横無尽に動き回っていますね。可愛いです。二足歩行なので人間の行動や感情のメタファーとしての猫なのかもしれませんが、孤独や囚われを表現している様な作品も、猫だと何となく柔らかく伝わってくるから不思議です。オブラートに包む事で、受け入れ難いモノゴトをそれとなく相手に届けてしまっているなら、実は攻撃的な手練なのかもしれませんが。

真ん中上半分はmomoさんの作品です。ヘッドホンを付けたふたりの女の子に、うさぎの被り物をした女の子ふたり、カバンからうさぎがチラ見している女の子がひとり。女の子のファッションはよく分かりませんが、原宿的にシャレオツな女の子の横顔を眺めている様な作品でした。短冊形と言えばいいのか細長いキャンバスに描かれた作品のうさぎは、女の子が持つ何かしらのオブセッションを現わしている様にも見えました。最後はたつみさん。ジェリービーンズなどのお菓子や人形などが女の子の周りを埋め尽くさんが如く、あるいは女の子にもかぶせて描かれています。どの作家も素直に絵を描いている感じはしますが、なかでも特に屈託のないポジティブな世界が可愛らしく広がっている気がします。また、どの作家も共通言語としての「カワイイ」を無理に追いかける事なく、伸びやかに生きていて良いなぁと思いました。

行商レポート vol.21:SANAGI FINE ARTS

courtesy of each artist, SANAGI FINE ARTS, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

サナギファインアーツのギャラリー紹介は こちら から
サナギファインアーツに関しては撮影した全ての画像を当記事に掲載しています(出展者リストとして PHOTOSTREAM にも載せています)


写真作家を多く取り扱うギャラリーのイメージが強いのですが、開廊以来ペインターも少なからず紹介して来たサナギファインアーツ、今回の行商出展にも油画の岩名泰岳さんが出品されています。写真は2名、西澤諭志さんに武田陽介さんと、ギャラリーの看板を張れる様な作家達による充実した内容になっていたんではないでしょうか。

白と黒という色の対比が印象的で、かつザックリと壁に立て掛けた設置でさえ映える作品の力強さが魅力的だったのは、西澤さん。部分として切り取られた作品に映る風景は、作家にとってありふれたモノなんでしょうかね。そういう風景が見せ方によって美術としての性質を帯びるのは面白いんですが、西澤さんの今回の作品については、個人的にペインティング作品として見て来たミニマルな空間の作られ方も反映されている様な気がして、どういうポリシーで制作されているのか思わず気になってしまいました。武田さんの作品はギャラリー個展でも見た事があるのですが、コンセプトというより、より「自分にしか切り取れない色」を探求している作家なのかなぁという印象を持っていたので、作品のサイズ感も併せてポップな感じが新しいなぁと。個人的な経験による言及で済みません(汗)武田さんの作品について感じる色彩への探求は、写真だからとか絵画だからとかいうジャンル分けを無効にして、普遍的にいっこの美術作品として面白いんじゃないんでしょうか。なんか撮れば撮る程面白い作品が撮れそう。今後の活躍を期待する所です。

どこかハードコアにミニマルな強さを感じる写真作家2人が並んでいるだけに、岩名さんのペインティングがまた鮮明に印象に残るサナギファインアーツの出展内容でした。おとなりのアウトオブプレイス、関さんについても同じ事を書いていましたが、花が開いた様な画面を見てもその色彩から「血だな」と考えてしまう、短絡的な自分の思考回路が恨めしく思えてしまうのです。厚手の絵具の迫力は、絵を描く時の無邪気なまでの筆の動きを想像してしまうのですが、無邪気に血…やっぱり違うね。当ブログのギャラリー紹介に載っている岩名さんの作品、タイトルは「冬の花」なので、もっと素直に楽しんで良いみたいです。ただ、花って色んな事のメタファーになり得ますよね。岩名さんの花を見てあなたは何を感じますか?考えますか?現代美術を初めて見た時に、自然に自分の中に生まれた問いを思い出しました。

行商レポート vol.20:fabre8710

courtesy of each artist, fabre8710, gemba-firm and SPIRAL/Wacoal Art Center
※当ブログで使用している画像の無断転載を禁じます。

fabre8710のギャラリー紹介は こちら から
他の展示風景・作品画像は こちら から


この4月に今まで活動の拠点としていた大阪から東京に移転し、さらなる活躍が期待されるfabre8710。セサミスペースという名で写真家として活動する澤田さんがディレクターとして参加したアートフェアのウルトラや、昨年から始まったアートブックフェアへの出展など、東京での活動も記憶に新しい所でした。展覧会で取り扱ってきた作家の表現の幅の広さが物語るように、ギャラリーとしても、そのセンスが活かせる媒体であれば積極的にジャンルを超えた活動をしています。

今回行商でfabre8710が紹介した作家は4組、のだよしこさん、末むつみさん、杉浦藍さんにセサミスペースです。皆さん女性ですね。どの作家どの作品も、色んな価値色んな造形がうんまいことミックスされていて、一見何が描かれているのか分からない作品もあったりしましたが、それでいてどれもキャッチー。何故キャッチーだと思うのか、作品と自分とを接続する理由を思わず探してしまうのですが、個人的に数度見て来たこちらのアートフェアへの出展、得意技なのか、賑やかなブースを眺めている内に、頭を働かせるものいいけれどもっと楽天的に、難しく考えなくて、見たままを楽しめば良いかという、明るい気持ちになったりしました。

セサミスペースの作品は動物、特に羊がモチーフに取り入れられている物が多く、今回は一匹の羊を連続させてラインストーンで可愛く彩った作品が印象的でした。その作品について、色彩だけ取って引きで見れば内臓の壁面にも見えるなぁとか、いくら妄想好きでも程度があるだろうと言われそうな事を考えたりしていましたが、ウィッグを被った羊の作品の捻りのあるビジュアルからも明らかなように、一筋縄では行かない可愛さがそこにはあります。杉浦さんは鏡面だったり画面に渡した木の棒が印象的な平面作品を併せて6点に、「山!」(個人的な叫びです)を3点出展。ちょいと調べると、対象の輪郭なり線を抽出しそれを合わせて進化させていく事で、新しい造形を作り出していく作家さんだそうですが、今回はそんなに大きくない作品という事もあってか、コンセプチュアルな部分より可愛かったりファニーだったりする部分の方が際立っていた様に思います。末さんは、細かい線の積み重ねによるドローイングやペインティングが魅力的。ある意味根性を感じる作品から感じる暖かさは、女性ゆえの柔らかさの現れなんでしょうかね。のださんは絵本原画の作家として活躍しており、癖のない可愛らしさはそれだけで魅力的でしたが、額装など全体的な魅せ方も含めたプロフェッショナルさに作家性の強さを感じたり。

なかには東京や府外で活動をしたことのある作家もいますが、このギャラリーが本格的に東京に進出するにあたって、今度はどういった色で、各作家がfabre8710のギャラリー空間を染めてくれるか、とても楽しみですね。