物語三昧〜できればより深く物語を楽しむために このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2014-07-24

『トンイ(Dong Yi)』  2010 韓国 李丙勳(イ・ビョンフン)監督  朝鮮王朝の歴史と地政学的条件が気になる、、、もっとわかるとドラマや映画が楽しめるから頑張って勉強しようと思う今日この頃

トンイ DVD-BOX V [本編6枚組]

評価:★★★★星4つ

(僕的主観:★★★★★5つ)

■ついに、トンイ見始めました。やっぱり韓国ドラマは危険です(笑)

宮廷女官チャングムの誓い』や『イ・サン』を手がけたイ・ビョンフンが監督の作品ということで、見よう見ようと手元に置いていたのだが、、、、基本的に韓国ドラマは危険だと思っているんです。これたぶん60話ぐらいあるはずなので、ようは60時間これに拘束されるんですね(苦笑)。通常、アニメなんかで撮りためているものを一気に見ようとすると、意外に面白くなかったり、ニコニコ動画のリアルタイム性みたいな、その時の盛り上がりが共有できないと、見るのいいやって、全部を見るのって難しいものです。見よう見ようととりだめておいて、見始めた最初の数話でめんどくさくなってやめてしまうことが多々あります。けど、これまでの韓国ドラマで、見始めて途中でやめることができたことは、一度もありません(苦笑)。これ、物凄い危険な劇薬だなーといつも思っています。ましてや、僕が手元にあるのは、評判とか、自分の興味の文脈とか、かなり厳選されたものなので、まずつまらないなんてことはないんですね。いやほんと危険です。しかし、アメリカに来てから気絶するように寝ることも多くて、ストレスもたまっているので、子供を寝せた後に、毎晩奥さんと共有できる何かストレス解消を探さなければいけないということで、、、禁断のこれに手を付けました(笑)。友人の韓国人が、だけでなくいろいろ、同時期に何人も、これいいぞ!ってFacebookで話題にしていたりしたんで、これは何かの啓示だろうと思ったんです。いや、、、それ以来、平均1.5話ぐらい?毎晩、疲労で睡眠が不足しててやばいのに、妻と見続けています。やっぱり、止まらないよ、これ。

イ・サン DVD-BOX I


■背景知識が気になる、朝鮮王朝の歴史が気になる今日この頃

韓国ドラマの面白さのコアは、ソープドラマとしての面白さなので、マクロがメインで全面的に描かれているわけではありません。このようなエンターテイメントをもって、朝鮮の歴史を語ろうとしても、まぁ無理があるとは思います。とはいえ、これは時代劇ですし、基本の人物などは歴史に沿っています。なので、おおざっぱな構造でも、いろいろなマクロの疑問が出てきて、凄い興味深いです。この楽しみ方は、ドラマそのものの面白さとは少し違った楽しみ方ではあるのですが、東アジアの歴史を読み解いていく上では、朝鮮半島がどのような歴史を持っているのか、楮を、地政学的条件を持っているのかを、理解していくとぐっと広がりと深みを持つようになります。なので、全く知識がないなりに(そもそもほぼ知識は皆無なので)いろいろ思ったことを考えてみようと思うのです。僕は知識がほとんどありませんが、そういって勉強できて、ちゃんとわかってから、、、とか言っていると、いつまでも何も始まらないので、わからないなりに自分の頭でえいやって仮説を立てながら考えていきたいと思います。


これは、李氏朝鮮の第19代朝鮮王粛宗 (スクチョン)1674年 - 1720年の時代を描いた作品ですね。


舞台となるこの時代、17-18世紀頃ですね。僕が気になっている光海君の少し後の時代の人ですね。このドラマを見ていて不思議なのは、矛盾する下記2点が並立している舞台背景があることです。


1)粛宗 (スクチョン)が絶対王政的な強大な権力を、自分一人で独占しているように見える


2)西人(ソイン)と南人(ナミン)という大きな党派があって、それが権力を独占しようと争い続けている


ちなみに、ウィキで見る限り、これは事実です。これって、見ててすごい不思議なんですよ?。不思議に思わないですか?。だって、そもそも2)の貴族(リャンバン・両班)の党派が政治権力の実務を独占している状況にあるわけです。だとすれば、国王は、権力が持てるはずがないんです。


中国王朝を見るとわかりますが、皇帝がなぜ独占的に国家運営をすることができるかというと、国の実務を動かす官僚を科挙によるリクルーティングシステムで皇帝自らが選抜して、直接任命しているんです。また、宦官は、もちろん皇帝の奴隷です。これが何を意味するかといえば、中国における貴族の力をそぐためにやっているわけですね。重要なのは、だれが政治の実務を動かしているか?です。皇帝が一人で、実務を動かすことはできません。実際に実務を動かす人が権力を握るんです。皇帝が絶対権力を所有するのは、実務を動かす官僚の任命権を独占的に握っているからですね。


貴族が官僚的な政治の実務を握ると、皇帝や国王などのトップの権力は極端に落ちます。貴族は、自分自身の領地をもち、自分自身が、血統的に継続する自分の家の主なので、全てを皇帝に支配されているわけではないからです。王朝の最初期は、皇帝なり国王が、貴族を任命するので強く支配権がありますが、その後時間がたって代替わりすると、貴族は独立的な力を持つようになります。


ということで、、、、両班(朝鮮の貴族)が強く、政治権力の運営実務を支配しているように見る李氏朝鮮で、国王の絶対権力が維持されるのが、とても不思議なのです。しかも歴史的に事実のようですし。。。なんで???って思います。


さらに、朝鮮王朝における軍事力は、いったいどこにあるの?誰に指揮権があるの?というのがよくわかりません。チャングムもそうなんですが、朝鮮王朝は徳川幕府よりも長い500年の治世があるわけで、基本的にとっても平和なんですよ。平和ボケしすぎるほど、平和慣れしているといってもいい。なので、ドラマでも、ほとんどのケースがこうした後宮の権力争いや、だれの寵愛を受けるかなどの、とっても内輪向けの揉め事ばかりが題材に上がっています。

宮廷女官チャングムの誓い DVD-BOX I



さらにいうと、この平和ボケしている朝鮮王朝の、平和(=戦争がない状態)は、どのような地政学的条件で形成されているのか?というのが気になります。



これ見事に、世子(セジャ)=皇太子の後継者問題のテーマで出てくるんですよね。


朝鮮王朝の皇太子は、だれが決めるというか承認するかっていうと、なんと、中国が承認するんですね。これ普通に物語で描かれているけれども、いや、、、まってよ、、、独立国である朝鮮が、なんで、そんなもっとも重要なことを中国の承認を得ないとだめなわけ???って、、、というか、仮にそういうことがあったとしても、当然のことながら、そんなことは、独立国として不愉快なことはない!!と政治権力争いのテーマになってもおかしくないと思うんですが、国王も貴族も、だれもこのことを全く疑問視している風には描かれていないんですね。これ、物凄い不思議でした。


同じ時期の日本で、天皇や将軍の後継者を中国の承認を求めるなんてはなしになったら、国内で政権交代が起きるほどの反対が出ると思うんですよね。基本的には、日本も朝鮮も、巨大な中国王朝からすると辺境の朝貢国なので、構造的には、それは事実なんですが、、、とはいっても、日本でそれがあまりあからさまになったら、大問題になると思うんですよ。


ここでなんで、こんなに貴族の両班の中で、全く疑問がないんだろう、、、と思っていたら、1636年の丙子胡乱についての記事をこの前見つけました。


丙子胡乱の辛い記憶

地理的に中国に近いので、その顔色を伺う必要があるとは理解できます。しかしそれにしても同盟国からの、しかも自分を守ってくれるための案をすべて蹴ってしまうとは……。

鈴置:「地理」だけが理由ではありません。中国の言うことを聞かなかったため、殴りつけられ踏みつけられた屈辱の「歴史」による部分も大きいのです。

 11月1日、韓国の歴史学者、ハン・ミョンギ明知大学教授が『丙子胡乱』(ピョンジャ・ホラン)という歴史小説の出版記念会を開きました。

 韓国の各メディアはこれを大きく取り上げました。「丙子胡乱」こそが、現在の韓国人の対中恐怖心の源であり、現在の国際情勢と二重映しになる歴史的事実だからです。

 これは丙子の年――1636年の12月、「後金」から国号を変えたばかりの清帝国が、服属を拒んだ朝鮮朝(李氏朝鮮)に大量の兵を送って攻撃し、2カ月で降伏させて冊封体制に強引に組み込んだ事件です。

野蛮人に土下座

 この戦争は今でも韓国人のトラウマになっています。清は女真族に建てられた国家です。朝鮮人は彼らを自分よりも劣った野蛮人として見下していた。その女真族に戦で負けたため、当時の王様、仁祖は土下座して和を請わざるをえなかった。

 漢民族に服属するのならともかく、野蛮人の建てた清帝国の属国になるとは大いにプライドが傷ついたのです。

 ちなみにその少し前には、同じく野蛮人の日本が攻めて来ました。しかし、明に助けられて撃退に成功しています。だから7年間に及ぶ日本の侵攻よりも、たった2カ月間で終わった「丙子胡乱」の方が大きな事件だった、という韓国人も多いのです。

 今でも、当時に清が朝鮮に建てさせた「大清皇帝功徳碑」がソウル市内に残っています。「愚かな朝鮮王は偉大な清皇帝に逆らった。朝鮮王は猛省し、この碑を建てた」との文言が碑に刻まれています。

 それに敗戦の結果、数十万人の朝鮮人が捕虜として連れ去られ、多くは戻れませんでした。敗戦に続く冊封体制下でも「清国に逆らった朝鮮」は大量の朝貢品や若い女性を送らざるを得ませんでした。


「異様な反日」を生む「絶望的な恐中」

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131119/256047/?P=3

2012年ぐらいの韓国で大ヒットした『神弓-KAMIYUMI-』は、この時の題材をとったものですね。


【初回限定生産】神弓-KAMIYUMI- ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]


えっと、僕はあんまり朝鮮史には詳しくないんですが、朝鮮半島を見るときには、大きな歴史的な条件として、


中国との関係に置いて絶望的なまでの恐怖が刻み込まれていること


中国大陸と地続きという地政学的条件が故に、最強の陸軍国たる中国に対して軍事的に優越することが非常に難しい


こういった諸条件が、地政学的(単に地理的なもの)と歴史の記憶に深く刻み込まれていることがあるらしいということです。そして多分ですが、李氏朝鮮は、非常に強烈に明(漢民族の王朝)に対して臣従していますが、このパックス・チャイナとでもいうべき、中華帝国の周辺国・衛星国として冊封体制に組み込まれると、驚くぐらいに国が安定するのでしょうね。中国は巨大な国なので、臣従している限りは、そこまで野蛮人が住む周辺国に攻めてくることはあまりありません。朝鮮王朝は、500年続いています。ただし当然のことながら軍事的には、中国に頼るわけですから、


・軍事的に強国になるのが非常に難しい&対外戦争や内乱の契機がないので文官が統治する傾向が強まる


・たぶん国内で中国と結ぶとかの派閥争いが常態化して、かつ軍事力が弱いので政治闘争的な内ゲバなになりやすい



こういう構造が、500年ぐらい続くわけです。ちなみに、ベトナムのように周辺国なんですが、中国としょっちゅう戦争して、しかも、ほとんど勝っているという国もあります。中国との軍事力の格差が圧倒的にあるにもかかわらず、、、ベトナムは軍事的には強国ですよねぇ。ああ、、そういう意味では、ベトナムとかチベットとかの歴史物語を見てみたい、、、。時代劇のいいものないかなぁ、、、。


さて現在の韓国は、北朝鮮に比較すると物凄い予算規模の上の近代国家なのですが、韓国は戦争になったら北朝鮮(&中国軍)に全然勝てると思っていないように見えるんですが、、、不思議ですよね。国力はありえないくらい差がついているのはずなのに。いくらなんでも、北朝鮮とでは軍隊の装備やレベルで差がありすぎるだろうと思うんですが、、、まぁ、陸軍の規模は凄いですが、、北朝鮮、、、けど、伝統的に戦争には自信がない国なんだろうと思います。それは、たぶん歴史の蓄積なんだろうと思います。そもそも、ここ数百年は、軍事的には負けの経験ばかりですからねー。


でも、現代戦争史の中での屈指の名将である白善ヨプ将軍が登場するなど、本当はそんなに弱い国とは思えないんですが、、、、けれども、国の構造が、軍事的に暴走して「外に侵略拡大する」ような暴力に偏ることが少ないのかもしれません。そこへいくと、日本や中国、ベトナムとかは、相当に暴力的な国です(苦笑)。日本なんか、小国で辺境国のくせに、軍事的には相当気合が入っいます。国の傾向から行って相当内向きで、細かいことが好きな日常コミットな文化伝統があるはずなんですが、、、戦国時代から大日本帝国の近代まで、軍事的には、歴史が証明していますよね。歴史って重要なんでしょうねー。おれはやれる!!!と思いこめる(=妄想・幻想)があるのとないのでは、国の統合や意思統一のレベルが違ってくるのでしょう。


あっと、近代の朝鮮の歴史を見るのに、この白善ヨプ(Paik Sun-yup))将軍自身による伝記は、素晴らしく面白いです。しかも、この本の凄いのは、そもそも日本語で書き下ろされている!というところです。彼は、元満州国軍の士官で、日本の教育を受けているからできることなんですね。父の代に、朝鮮が他国の植民地にされる暗い絶望の時代を経験した後、国が分断される中で、自由主義陣営の同盟国として韓国を建国していく部分のダイナミックな歴史が、主観の記述で読むことができます。韓国陸軍の建軍の父であり(なんと30台で将軍かつ参謀総長!)、朝鮮半島ひいてはアジアにおける自由主義陣営防衛の英雄である彼の様な人の伝記が、日本語で読めるというのは、なんと素晴らしいことなのでしょう。ちなみに、彼の人生を一言でいうと、漫画のチートキャラのような大英雄です(笑)。もう人間の器でかすぎて、めまいがします(笑)。もう少しわかりやすく言うと、そうですねー田中芳樹さんの小説のヤン・ウェンリーみたいな感じです。・・・いや、もっと勇猛果敢かな?。朝鮮戦争でほぼ韓国、アメリカ軍とも徹底に次ぐ撤退でめちゃくちゃに追い込まれてボロボロの時に、将軍自らが先頭に立っておれに続けーと敵軍に突入していった逸話は、軍事マニアの中でも有名な話だそうです。ちなみに、それで、弱卒の韓国軍を馬鹿にしていたアメリカ軍が、その行動に非常に感動して韓国軍を信用するようになり、大反抗に出るきっかけを作ったことになるといわれています。戦術的にだけではなく、戦略的にも見事な突撃だったそうです。この辺の部下に向けたスピーチとか胸が熱くなりますよ。これ、マジであったことなのか!と思うと。ちなみに当時の韓国陸軍は、素人を寄せ集めただけの集団で、戦いの中で指揮官や訓練された軍事が損害に次ぐ損害でほとんどおらず、学生などの動員で何とかしのいでいるような状態だったんです。その弱卒部隊で、中国軍と北朝鮮の大部隊をうち破っていくのです。ちょっと考えただけでも、熱い話でしょう?。

連日連夜の激闘は誠にご苦労で感謝の言葉もない。よく今まで頑張ってくれた。だがここで我々が負ければ、我々は祖国を失うことになるのだ。我々が多富洞を失えば大邱が持てず、大邱を失えば釜山の失陥は目に見えている。そうなればもう我が民族の行くべき所はない。だから今、祖国の存亡が多富洞の成否に掛かっているのだ。我々にはもう退がる所はないのだ。だから死んでもここを守らなければならないのだ。しかも、はるばる地球の裏側から我々を助けに来てくれた米軍が、我々を信じて谷底で戦っているではないか。信頼してくれている友軍を裏切ることが韓国人にできようか。いまから私が先頭に立って突撃し陣地を奪回する。貴官らは私の後ろに続け。もし私が退がるようなことがあれば、誰でも私を撃て。さあ行こう! 最終弾とともに突入するのだ


— 白善、1950年8月21日


文庫 若き将軍の朝鮮戦争 (草思社文庫)


そんな背景を考えなら見ていると、歴史大河ドラマ、時代劇というのは本当に楽しいです。こつこつ、朝鮮の時代劇はこれから見ていきたいです。まぁ、そういう背景ないしにも、とても楽しいので、超見る気になります。