『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』 加藤陽子著 

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

もうすぐ読み終わる。。。。うーむ、素晴らしい本だ。じみーな歴史の本ではあるが、友人がブログって言っている通り、

本書を読むと、司馬遼太郎歴史観加藤周一の言う「英雄史観」ーー英雄が歴史を作っていくーーであることが分かる。半藤一利歴史観は長老や実力政治家が密室で政治を作っていくという印象があるが、それも正しくないことが分かるのだ。


mmpoloの日記
http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20091112/1257974909

非常に同感だ。この本は、本当に面白い。ただ個人的には、いきなり読むよりも、かなり癖の強い司馬史観半藤一利の『昭和史』などを読んで、熟成させた頭で読むと、かなり感じるものがあるはずだ。非常に正当で、全うで、正しい歴史家の視点という気がする。戦争が新しい社会契約を生むという包括的な視点を提示したうえで、それに沿って、説明していくところなど、非常に全体ぞとらえられていて、読んでいて心地よかった。


部分の話だが、それにしても、日中戦争のくだりで、中華民国の外交官である胡適の対日戦略を読んでいて、鳥肌が立った。なんというか、さすが中国としかいいようがない、、、、物凄い政治センスを持った大戦略だ。満州事変が、日本の軍部の課長クラスの計画によって動かされていくのと比較すると、この圧倒的な政治センス、、、さすが中国、政治の国としか言いようがない。日本を倒すためには、アメリカとソ連を引き込むしかない・・・そのためには、中国が対日融和政策を捨てて、正面から戦争で「負け続けるしかない!」と喝破する。。。


すげぇ


中国沿岸部をすべて占領するために日本の海軍がすべて動員され、日本陸軍に内陸奥深くまで占領させて、、、、その時に、内陸部は、ソ連は日本に攻め込む機会ととらえ、そして太平洋では、フィリピンなどの防衛のために英米は艦隊を派遣するしかなくなる。その時国際世論は中国同情で染まり切っているはず・・・それまで、徹底的に正面から日本に負け続けることが、中国が日本にかつ最大の戦略だ、と、蒋介石に訴え出る・・・いや、まじですげぇ。


その他の内容も見ていると、かなり政治家の個人的能力で、異なる結論に向かう可能性が十分にあったことを垣間見せて、とても考えさせれる。


それにしても、戦略なき日本、といわれる日本が、その植民地経営において、徹底的に安全保障に利する形で進めていく凄まじい戦略的な行動をとっている部分を論証されていくと、ああ、、、『風雲児たち』の200年以上前の林子平の時代からの日本の防衛意識が、ここでつながっていくのか、、、と本当に歴史の深さを感じさせる。『風雲児たち』の物語は、本当に感動的だった・・・が、その同じ動機が、コントロールしきれなくなると、こうなるのか・・・と、とてもとても考えさせられる。


素晴らしく面白いです。かなり地味な歴史日本だけれども、この時代の知識があったり、司馬史観などでもいいので、ある種のイメージがあると、それとよく丁寧にほぐしてくれるので、本当に素晴らしい。

風雲児たち (1) (SPコミックス)


昭和史 1926-1945