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2013-05-03

『企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン〜新しい統治者たちの素顔』 松井博著 これからの時代に必要なものとは?

企業が「帝国化」する アップル、マクドナルド、エクソン〜新しい統治者たちの素顔 (アスキー新書)

評価:★★★★★星5つ

(僕的主観:★★★★★5つ)

素晴らしく面白かった。自分の人生を考える時に、今後の未来の流れの前提となる本で、素晴らしい出会いだったと思う。何度も読み込んでますので、僕の考え方のベースの一つとなるものなので、物語三昧の読者はぜひ読むことをお勧めします。この本の内容は、さらっと前提として今後の記事に反映されるはずです。


まずは、この本の前提として、巨大なグローバル企業が「私設帝国」化していくと論じています。この定義は、

・ビジネスの在り方を変えてしまう

・顧客を「餌付け」する強力な仕組みを持つ

・特定の業界の頂点に君臨し、巨大な影響力を持つ

この3つを実現するために、「私設帝国」には5つの機能的な特徴が見受けられる。

1)得意分野への集中

2)小さな本社機能

3)世界中から「仕組みが作れる」人材を獲得

4)本社で「仕組み」を創り、それを世界中に展開

5)最適な土地で最適な業務を遂行

です。こういった特徴を持つグローバル企業の行動原則を分析していくのですが、このような本社で集中的に「仕組み」を作り、それを世界中に標準化して展開して、生活の在り方を根本から作り上げて支配してしまう企業行動を「帝国」化とネーミングするセンスは素晴らしい慧眼だと思いました。ビジネスの最初の部分から、世界中で通用する製品やサービスを本社の多様な人材によって開発することは、これらの組織に共通の原則ですが、このあたりの描写を見ていて、僕の頭の中にずっと浮かんでいたのは、ローマ帝国の支配体制とそっくりだ、という思いでした。ローマ帝国の強さ、その普遍性の根源は、属州のありとあらゆる人材を登用したことにあります。属州の蛮族出身のローマ皇帝が頻出するほどですから。それと同じように、世界中から「仕組みを作れる」才能を結集し、かつ、アイディアの根源を生み出す本社中枢機能に人材、人種、文化の多様性を持たせることで、世界展開上、普遍性を獲得させるというのも、よくよく考えれは非常に理にかなっています。グローバル化とは、地理上に広がることでも、たくさんの外国人従業員を登用することでもなく、本社のすべての企画と意思決定を、多様性の中で全世界同時に通用する標準さで作り出せるようにすることなんだというのがよくわかります。つまりは、日本のたいていの企業は全くこのことを理解できていないというのがよくわかります。日本の大規模な組織のたいていの、グローバル化とは、社員が英語をしゃべれることや外国人労働者を増やすぐらいが関の山ですから。

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さて、もう少し詳細に何が素晴らしいかというと、この本を読むと、アップル、グーグル、アマゾン、マッケッソン、ユナイテッド・ヘルスケア・グループ、メットライフ(MetLife, Inc.)、エクソン・モービル、シェブロン、BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、トタル、コノコフィリップス、モンサント、Tyson Foods, Inc.(タイソン・フーズ)、クラフトフーズ・グループ(Kraft Foods Group, Inc.)、モンデリーズ・インターナショナル(Mondelez International, Inc)、ネスレ、マース、P&G、ジョンソン&ジョンソンなどなど、帝国化した企業の負の側面が、これでもかと描かれていて、おもわずこの人はマイケルムーア的な反資本主義・反グローバリズムのことが主張したいのかな?、イタリアのスローフードの運動家的なイデオロギーの持ち主なのかな?と思ってしまうし、そういう印象で読みきってしまう人もいるようなのだが、それはまったく違う。もし、そのように理解したら(=そこがかなりのボリュームをさいて書かれているので)それは、間違いだと僕は主張したい。ほんとのところはわかりませんが、少なくとも僕はその文脈では読まない。

ちなみに、上記で描いた帝国と呼ばれる凄まじい規模と利益率を誇る帝国化した巨人企業をどれだけ知っていますか?。健康・医療と食とエネルギーという世界の根幹を支配する企業の名前なんか、ほとんど人は知らないんじゃないでしょうか?。彼らはBtoBなので宣伝しませんから全然知られていないのです。メットライフやタイソンフーズ、モンサントなんて、普通の日本人は知らないんじゃないですか?。アメリカで暮らしたことがあれば、知っているかもしれないですが。ぜひぜひ、これらの知らなかった企業をモニターしてみると、とても興味深いと思いますよ。世界を支配している巨人たちですから(笑)。自分たちの人生を支配する構造の管理者、発明者を知って損はないのです。

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さて、話を戻すと、この人の主張のコアは、最終章にあるように、自分の子供に対して、企業が帝国化していくこれからの未来社会において、帝国を建設する側に回るのか?帝国の上層部にグローバルエリートとして上り詰めることを目指すのか?、それとも、そうではない生き方をするのか?、未来の世界の構造を理解した上で選択して欲しいとしているところだと思う。どっちでもありなのだ。世界が、そのようであるという正の側面と負の側面を両方見た上で、ミクロの選択肢として、何を選ぶのかを自覚的になるべきだ、というのは正しくフェアな態度だと思う。僕にとって、この本が最も刺激的だったのは、自分のこれからの人生に役に立つというのもあるけれども、自分自身が、子供の親であって、この変化し続けていく激動の未来に、何を教育として子供に与えればいいの?ということに悩んでいたからです。その文脈に素晴らしい示唆を与えてもらえたと思います。

世界の構造はマクロの、個人の手に届かない「うねり」によって形成されていく構造なので、まず現実・事実・ファクトをちゃんと見据えて、その上で、価値基準の選択をすべきだろうと思う。それが、主体的な人生というやつだ。主体的といっても、選択と決断によって、自分の人生を「選べる」という意味ではない。それは、世界は自然に流されていれば、ある型にはめられていくようにデザインされており、自由と自己決断と自己責任など幻想だ。しかし、それでも、その選択幅の狭い中で、長期の未来を、現在の世界の構造とトレンドを見据え、世界と自分の人生の建設とデザインしていくのは、近現代を生きる生き方としては、最も成熟して意味ある生き方だ。なぜならば、絶えず競争によって人類の領域を広げ、リデザインして、クリエイトしていくことが正であるとるする資本主義社会が、いまのところ我々が選べる唯一の世界だからだ。限定された非常に拘束された状況でありながらも、少しでも自分の支配できる領域を増やしてい一歩一歩、歩いていく。

この世界の過酷さや腐臭に耐え切れなくて、オルタナティヴな選択肢として様々なイメージや学説が提起されるが、それは、この世界から脱出したいというユートピア主義の一種であって、実践的、プラグマティックに意味があるものは、ほとんどない。それどころか、ユートピア主義は、常に、全体主義などの結局のところ人々から自由と日常を奪う意味合いしか持つことはなかったことは、歴史が証明している。ユートピア主義は、人生をだます、最悪の夢だということを、僕等は肝に銘じて生きるべきだろうと思う。それが、人類史上最大の実験として存在した、コミュニズムというユートピア主義のもたらした惨禍を知っている現代人の基礎知識だろうと思う。

啓蒙の弁証法―哲学的断想 (岩波文庫)

そういった、お気楽なユートピア思想や反グローバリズム思想は大嘘・妄想(=イデオロギー)であって、もうこの帝国化した企業にそれぞれの生活が領域が完全に囲い込まれた人類社会で生きていくときには、帝国への道を選ばなくても帝国に生活の奥深くまで支配されている世界・社会を生活を生きなければならないということを肝に銘じなければならない。それが著者が主張したい根幹だと思う。たしかに、ユートピアを夢想するエネルギーがフロンティアに挑戦する気概に、この世界から脱出したいという人類進歩の動機になっていることも否定しないが、かといって、オルタナティブなものが全くなかったし、これからもないであろう現実は意識するのがプラグマティツクな態度だと思う。

また、負の側面を書いた部分に比して、さらりと書いてあるが、これらの帝国化する(=顧客の奥深くまでの行動と感情を囲い込んで支配して統制して生活をリデザインする)グローバル企業が、人類のフロントランナーであり、彼らがまだ見たことのない領域を開拓しイノヴェーションし、人々の生活を劇的に、より可能性に満ちたものに変化させ続けていることも同時に主張している。物事は両局面から見るべきで、片方のイデオロギーで見るべきではないと思う。コインの裏表で両義的なのだ。真の意味でのグローバル企業の最上の理念であり目的は、人類の生活をよりよくすること、に尽きる。なぜならば、それが最も儲かり、かつ持続的に成長できる目的だからだ。

本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50
本当のブランド理念について語ろう  「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50

アップルの下請けとして叩かれた自殺が頻発する台湾のフォックスコン・インターナショナル社(富士康国際)は、しかしそれでも、農村で選択の自由がない農奴のような貧困にある人々をひきつけてやまないのです。それが近代的な文明的な自由で豊かな選択のある人生の入り口だからです。そういう事実もまたあること、無視してはいけない。世界は常に両義的で、多方面から見ると、とても難しい。これと中国の台頭、新興国の台頭などを合わせて読み込んで考えていくと、非常に面白いです。経済だけで見ても駄目だし、労働環境のような自由と平等、人権などのイデオロギー問題で見ても駄目で、そしてロボットなどの科学技術の展開と合わせて多角的に見ないと、この辺の世界の「展開」の先読みはわからなくなると思います。ちなみに、イデオロギーが大抵間違っているのは、一面で真実ではあるんだけれども、ある一面「のみ」であるというポイントが抜けおちて信仰になるので、現実が無視されるので、すべて間違いになってしまうのだ。

米アップルなどの委託先フォックスコン社、自殺兆候がある従業員を解雇

http://jp.ibtimes.com/articles/42743/20130411/32417.htm

フォックスコンの労組が告げる「安い中国」の終焉

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37127

さて、だからこの本のコアのメッセージは、この帝国化した企業によって支配される人類社会・生活空間において、帝国の奴隷とならない生き方をするためにはどうすればいいのか?、何を学べば奴隷にならなくていいのかについて、考察していることだと僕は思う。構造を知る、というのはそういうことです。帝国の存在を前提として、その中枢に駆け上る帝国のエリートになるか?もしくは、逆のそうでない道を選ぶにしても、実は重要なことは、これらの社会において最も価値があることは何なのか?がわかっていなければならない、ということだ。なぜならば、帝国の中枢のテクノクラートとなることも、それに反旗を翻して生きることも、どちらにせよ、人類に新しい生活空間をリデザインしてクリエイトするという義務が、どちら側にもあるからだ。代替案がない主張などくそくらえだ。物語の世界や学者の世界ならば、学説やイメージだけでいいかもしれないが、実践の世界は違う。実践の世界には、常に、ではどうする?という具体的な、すぐ行動にうつせる選択肢が必要なのだ。それを知るためにも、帝国で何が必要とされる条件なのか?というのは重要なことだ。これからの社会の最も重要なことは、言い換えれば、最もバリューを生み出す、もっと端的にいえば自由が買える時間と金を生み出す技能とは何か?ということだからだ。いいかえれば、ビジネススターであるティムクック(アップルCEO)やスティーヴ・ジョブス(アップルファウンダー)が生み出したものの、背景にあるのコアは、スキルは、何なのか?ということだ。

Steve Jobs

『Steve Jobs』 Walter Isaacson著  グローバル競争の中で勝ち抜くのに必要な要件とは? 新しい価値を生み出すのはどのような人間か?

http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20111222/p2

松井さんははっきりと、それはアートだ、と主張している。ようは、プロセスを分解して、単純作業に分解して、モジュールとして、全世界の最も安い労働賃金に収斂させることができる労働は、代替が効いて世界最安値の賃金になってしまう。その世界共通賃金は、生活していくのが困難なレベルだ。世界の平均値の少し上というのは、年収でいうと10万に満たないはずだ。それすらも、コンプライアンスや人権を意識した途端、ロボットにすべて代替されて職業自体が簡単に失なわれてしまう。フォツクスコンのケースは、それを明確に示している。中国の企業が外国企業に買収されると、途端に法律やコンプライアンスを順守させられて競争力が崩壊するのだが、その時にまずまっさきにやるのはリストラだ。過酷な労働環境だけれども、たくさんの人に可能性と職を与えることと、ルールや人権意識を順守するためにほとんどに人の可能性を奪って解雇するのと、どちらがいいか?というのは難しい問題とは思いませんか?。しかし、ここで話題になる「職業」というのは、ようは代替が可能なものなんです。代替が容易にはできない技能とはなにか?といえば、ロボットが再現不可能なもの、また分解して単純作業にできない『総合化・統合化』の技術なんだということです。それは、アート。アートというのは、総合体験の技術であって、プロセスに、分解しても意味がないものだからです。コンピューターでは、この領域は、いまだ全く対応できていないのです。だからこそ、このマインドを深く鋭く持ち、同時に帝国の上層部のメンバーシップであるハイスペックな部分を持つというのが、理想的。じゃあ、じっさい、子供に教育する時に、そのアートとは具体的に何か?というのは、、、、いま考え中(笑)。

アート以外の部分は、典型的なのであまり説明を必要としない。アップルが急成長をし始めてから入社した人々の学歴は、グロ−バル・ソサイティの中の頂点ともいうべき学歴ばかりになる。それも修士や博士はざらだ。それらの学歴を背景とした超ウルトラ専門性の高いスキルを持ち、母国語と英語を当然のようにネイティヴ並に使いこなし、現実感覚にあふれ、とことんまで物事を追求する高い健全なモチヴェーション(動機)を持っている。もちろんのこと、超がつくほどのハイレベルなロジカルシンキングで思考し、そのスピードも桁違いに早い。そんな人いるのかいな?と思ってしまいそうだが、グローバル競争で、帝国の最前線に立つプレイヤーは、普通にこういう人ばかりです(苦笑)。自己実現系の完成版のような人々。

本社で要求される能力を一言で言い表すとしたら「仕組みを創る」能力でしょう。例えば、新製品、サービス、流通、製造工程などをデザインし、管理し、運営できるような人材が必要とされます。また業務の多くの部分を異国の外注先に出すことが多いため、異なる文化圏のマネージメント経験や外注管理能力なども要求されます。さらに、開発にあたる人たちは当然のことながら高い専門性が要求されます。修士や博士業を持っている人もたくさんいますし、分野によっては修士や博士業が必要最低条件として要求される場合もあります。


中略


ひと口にコミュニケーション能力といっても、プレゼン、議論、交渉、指示、報告などさまざまな形態があります。口頭なのか、メールなどの書き物かによっても、変わりますし、職種によっても異なります。多国籍な環境で最も必要とされるのは、「相手に分かってもらうまであの手この手を尽くす粘り強さ」を伴うコミュニケーション能力です。この環境というのはバックグラウンドを共有している人がいませんから、「空気を読んでもらう」といったことが通用しません。そこで言葉を尽くし、何度でもくじけずに説明するということになります。


p60 帝国で働く人々

グローバルな事業をやっている企業は、日本企業であってさえ、新しく入ってくる新人はこんな奴らばかりです。最近は、本当に重要で大事な事業には、日本人はほとんど配属されない。彼らは、普通にMBAもっている。もちろん国籍全然問わない。そういう人を雇わないと、グローバルには勝てないんだもん。まぁ、それを教育する、動機づけをしなければならないと思うと、時々心が寒くなりますが(苦笑)。最近の部下や後輩たちは、辺境日本の大学ではなく、米国やヨーロッパの一流大学院を卒業してきます。もしくは、アメリカなどで大学を出た後に、その後、せめて日本のMBA(早稲田とか一ツ橋のね)を卒業してきます。アメリカでなければ、インド工科大学北京大学、ソウル大学やチュラロンコーン大学とか、もちろん母国の頂点にちかいクラスの大学を卒業した後にね。僕の学歴を知るとまず驚くのは、えっペトロニウスさんは学士なんですか?(=大学院を出ていないの?)と驚かれます。そういうなよ(涙目)とか思います。まぁ、みんな普通に博士とか修士持っているし。なので、ペトロニウスパパ(双子の)は、自分の子供は最低限日本以外の英語の大学院を卒業するように教育しなきゃ、と心に誓っています。別に日本の大学の学歴とかは、そんなめちゃくちゃ良くなくてもいいです。あまり意味がないので、グローバルな肩書としては。昔の学歴のない団塊の世代のお父さんが、必死で子供を大学に入れよう!せめて人並みに!と思ったその「人並み」のレベルが、凄い変わった気がします。いや、何を言うかって、日本国内での勝ち組とかリア充とか、物凄く世界水準では負け組でレベルですから!ってこと。そんな世界は甘くないんだよ。たぶんこの辺で生息している人は、日本の甘すぎて、甘すぎて、劇甘な議論に腹を立てるのを通り越して絶望しているのは、よく理解できます。もういっても無駄だな、と思うぐらいに。

僕は、オタクのかつ日本の若者の文脈でいつもいろいろなことを観察しているが、僕が日常に住んで戦っているのは「この帝国との激動の競争が行われている戦場の最前線」なので、日本社会の文脈がいかに隔離された変なもの、クイアなものであるかはいつも感じます。それは、本当にヘン(苦笑)。でも、この内側に住んでいると、その変さがよくわからないんですよね。あまりに、日常にビルトインされた、いつものことなので。

ただ、日本を出た人とか、外から眺める人になると、これをとても批判する人がたくさんいます。痛いほど、この批判はわかります(苦笑)。けれど、云っていることは正しいのだけれども、何か違和感がある。たぶんそれって、自分はもう関係ないけどという当事者意識の欠如、愛のなさなんだろうと思う。そして本人は、それに気づいていない。だいたいにおいて、海外に出ていく人(&日本を批判する人)は、日本社会の中ではウルトラモチヴェーターに位置づけられる強い動機の持ち主だからだろうと思う。なので、正しくとも、まったく日本国内にいる人には伝わらないだろうなぁと思う。共感がない言葉は、伝わらないんだよ。特に、強い意志と動機を持つ人は、日本社会では村八分にあった経験を持つことが多く日本に恨みを持つ人が多いと思うんだよね。なので、とても発言が攻撃的になる。ただ、どうしても批判意識を持って、しかも構造を理解している人って、上から目線で恨みを晴らすとか、優越感の発露とかいう(苦笑)形式になりやすいんですよねー。それは、なかなかたくさんお人に届かない結果になるので残念ですが、そうはいっても、人間だものそれは仕方がないと思います。


海外で勉強して働く・・・のは魅力的だけど、日本でマンガ読んでアニメについて友達とだべって希望なく生きる選択肢も、けっこう魅力的だよ?

http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20090503/p5


ただし、この日本社会のヘンさに関して、そうはいっても僕は非常にポジティヴな感覚を持っています。なぜならば、アート以外の部分では、世界の競争に、圧倒的なレベルで負け続ける日本の教育、人材ですが、ことアートの文脈に関しては、世界の最前線を驀進しているからです。それが、社会的に登用されたり、育てていって、マネタイズに結びつき、帝国の囲い込みのような生活をリデザインする「仕組み構築者」にスキルアップして上昇させる仕組みが弱いところが日本的ではありますが、そうはいっても、世界最高レベルのメガリージョン・メトロポリタン・トーキョーを持ち、かつ後背地である田舎が本来なら全面没落する世界的な潮流の中で、先進国の先行者である強みを生かし、田中角栄によって為された「均等な国土開発」というアセットがあるが故に、人材のプールのすそ野が広い。こんな素晴らしい国は、なかなかないのだ、と僕はいつも思う。問題はあまたありすぎるほどあるが、それは逆に非効率が故に、まだまだやれるということでもある。ちきりんさも似たようなことを言っているし、僕の最近(読者家の先輩として!)とても尊敬する出口治明さんもことあるごとに同じことをいってらっしゃいます。これは、自分のなんちゃってフィーリングに非常に裏付けを与えてくれるようで、いつも勇気づけられます。日本の未来は、僕もとても明るいと思っている。


日本の将来は明るい!そう考えられる根拠とは 【第67回】 2012年11月6日 出口治明の提言:日本の優先順位

http://diamond.jp/articles/-/27421


オタク的な文脈で言えば、凄まじく洗練された、均質化された(=レベルの落差が非常に低い)1億の市場背景があり、現代的テクノロジーの粋が結集されたマーケットで凄まじい淘汰が働いているのだ。そこから生み出される、アートのレベルが低いはずがない。アートを学び育てる条件は、そもそもゆとりや物質的な水準が平均的にクリアされていること、表現の自由の伝統が長く続いていることなど、いろいろかなり難しい条件があるからだ。ちなみにここでいうアートとは、必ずしも高踏的な芸術、ハイカルチャーを言ってはいません。バウハウスとかじゃないですが、市民に解放されて広がっているもの全般です。またこうしたものが再生産されるには、消費者自体が生産者と変わらないほど知恵や技術経験を持つ成熟した大衆社会(=後期資本制社会)でないと、これが維持されません。

とはいえ、この圧倒的に恵まれたアートを生み出す環境にいながら、このソフトパワーをマネタイズしたり、尊敬する土壌の無いことには、非常に悲しい気持ちがします。そこは馬鹿にされても仕方がない。最近は、ちきりんさんが、梅原大悟さんについてよく書いているが、まさにここで言われることが、日本の最も重要な部分を、マネタイズしたり、尊敬してそれをレベル高いものに洗練させていく知的資本形成のインフラストラクチャーの整備が弱いことを示していると思う。

勝ち続ける意志力 (小学館101新書)

2013-04-13 売って稼ぎたいだけ? 文化で?

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130413

2013-04-23 ゲームと教育と研究とイノベーション

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130423

これ、重要ですよ。オタク文化もサブカルチャーも、これって素晴らしい知的資本なんですよ。しかも、人類の最前線の最高度に洗練された部分。これが、より広く社会に評価されて接続されてマネタイズされていかないのは、なんとも残念です。


さて、松井さんの本に戻りましょう。


松井さんのこの結論は思い付きではなく、相当深いところまでの実感なのだろうと思う。本のタイトルが、元アップルシニアマネージャーとなっているんですが、現在の松井さんは、この帝国の上層部で中枢の人間として戦い続けるのに疲れたといって、西海岸で保育園を経営しているんですね。あれ、幼稚園だっけか?。どっちでもいいのですが、このコンセプトは、さまざまな人種や国籍のエリートが集まる西海岸は、凄い高いレベルの教育施設がそろっているんですが、その詰め込み教育ではなく、とにかくアートを、遊ぶ力を、といってコンセプトをベースにこの保育園を立ち上げたというようなことがかかれています。もしかしたら本ではなく、下記の記事だったかも知れませんが、とにかく現在は、幼稚園の経営者なんですよ。ようは、帝国化する企業の世界で中枢まで上った人が、これからの社会に生きていく上で、帝国の中枢に上るにも、帝国とは異なる道を歩みにしても、どちらにせよ、基本的なスペック(=地頭や学歴)は当たり前として、同時にアート(=芸術)が必要だと考えているわけです。

企業が帝国化する

http://blogos.com/article/56520/

佐々木俊尚×松井博 グローバル化と幸福の怪しい関係

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1209/03/news007.html

このへんは、とても慧眼だな、と思います。とにかく、いまわれわれが住む世界が、どのように、誰によってデザインされているか?、そして、それを実行する帝国化した企業群の中枢にいる人材たちは、どのように世界中からリクルートされるのか?何を考えているかが非常に具体的にわかる、素晴らしい本でした。今後は、ここでいうアート的なものを、どういう風に教育するか?、知的資本形成インフラストラクチャーとして整備するか?、そしてマネタイズするか?を、学ぶことができたりするようなシステムをデザインできるかが、さまざまな場面で重要な指標になるような気がします。ちなみにデンマークのThe Kaospilotsというビジネス・デザインスクールとか、ゲームの講座を持つNYUとか、こんなの若い時に知っていたら、まじで行きたかったよ。

2013-03-06 Logic, Market and Art

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130306

2013-04-05 研究者・勝負師・芸術家

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20130405

ちなみに、ちきりんさんの上記の記事も併せて読むと、いろいろ気づかされますので、お薦めです。この辺りは今後の物語三昧の記事のバックグラウンドになる思考履歴なので、もし、こんな役に立たないブログをまじでちゃんと読みたいという人は、ぜひ読みこんでおいてください。&ここで紹介している記事や本は、熟読しておいてくださいね!。文脈というものは、さまざまに複雑に結びついているので、ポイントポイントを共有していないと、コミュニケーションコストが高くなって理解が凄く難しくなります。僕の近しい人々、僕が理解してほしいと思う友人たちには、このあたりの本は必須だ!と強制的に読んでほしいメールがいったり、無理やり電話で屋飲み会で長々と思考プロセスを説明したりしていますが(笑)、もしくはなるべく可能ならばラジオで説明はしていますが、なかなかそういう機会がないという人でも、ぜひ読みこんでおいてもらえれば。ちきりんさんの上のブログにもあるけれども、思考や概念というものは、履歴というものがあって、大きな塊がいくつもあって、それが相互に重なって、全然違いそうなものの共通点を見つけるというステップを踏みます。なので、そういう意識で頭にアイディアを「溜める」ようにしないと、思考プロセスの止揚や飛躍につけていけなくなります。そこまでして読みたい!理解したい!と思わない限り、こんな冗長で長いブログの記事とか読む意味ないっすから。

アイデアのつくり方 近代科学を超えて (講談社学術文庫)


ということで、この記事は、このブログの文脈を理解していくには、非常に重要な思考履歴のポイントなので、ぜひ、熟読をお願いします(笑)。