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物語三昧〜できればより深く物語を楽しむために このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2017-12-30

『IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』  錦織敦史監督  みんな仲良しと目的に向かうことの矛盾をどう昇華するかは日本的な物語類型の分岐点

THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ! (完全生産限定版) [DVD]

客観評価:★★★☆3つ半

(僕的主観:★★★☆3つ半)


基本的にアイマス好きなんで、タスタイさんに薦められてから3年ぐらいたってしまったけど、やっと見れました。いやーブルーレイの再生装置壊れてて、見る機会を逸していたんだよね。やっとみれてよかった。


んで、アイマス面白かった、やっぱり千早かわいいなーとか、そういうどうしよーもないことは除いて、アニメで描いたものと全く同じ構造だったな、と思いました。というか、群像劇になっているけれども、やはり、天海春香の物語。彼女が問いかける問題意識は、僕がいつも話す日本的部活モノの問題意識と全く同じ。「仲間との日常(=変わらないこと)」をとるのか「孤独だけど自分が勝ち抜いていくこと(=変わっていくこと)」というもののバランスをどうとるか?ということ。政治哲学でいうと、極端に言うと、リバタリアニズムの徹底的な個を重視する視点と、全体を大事にするコミュニタリニズムの仲間の絆の視点ですねー。まぁそこまで言いすぎか(笑)


これほんとは成り立たないものだと思うんですよね。だって、アイドルは、個人であって、集団じゃないから。。。。といいたいところが、日本には、モー娘。にはじまって、AKB48など、この伝統もめちゃくちゃ根づいている。ここで確実に問われるのは、仲間の絆や看板(全員が掲げるブランドの維持)と、個人の勝ち残りと確立・自立をどう止揚するか、ということが、強い葛藤となって表れる。


このテーマを一身にアイマスで集めているのが、天海春香。彼女は見ていても、なんの尖ったこともない普通の人として描かれていて、何が彼女をアイドルというか、人よりも視線を集めるスタートととして成り立たせているかは、僕にはさっぱりわからないんですが・・・・・でもね、この矛盾する葛藤を一身に、これだけのギリギリの最前線のなかで持ち続けるというのは、ある意味、物凄いことで、そういう意味では彼女が二大巨頭であるというのは、なるほどなーといつも思います。映画でもアニメでもそうだけど、こんな無駄な手間をかける必要がないし、プロとして、そんな甘ったれたことが通じることはあり得ないんですが、、、、それを、このようなドラマトゥルギーまで強烈に持ってくるところに彼女の存在の意義があるんでしょうねぇ。


というか、このテーマはいつも思うんですが、物凄い日本的ですよね。個を選ぶのか全体(集団)を選ぶのかという同調圧力が極端に極まる。キーワードは、


「みんな仲良く」


ですね。これ、悪い方向に触れると、みんなでダメになる(=あずにゃん問題(笑)ですね)や、同調圧力といじめの地獄になるんですが、、、、うまく回ると日本的な絆の物語になって、とってもあったかくて、かつ実力が全体的に上昇するという最良の物語にもなる。どっちにふれるかは運なんで、凄い怖い賭けですが、日本人は、こういうのが好きだし、特に、日本人の女性、特に少女には、強烈につてまわる思考ですね。だから、アイドルという日本的な産業の中で、普遍的テーマとして、ありつづける。日本の学校もすべてこのスタイルですよね。全体のレベルを同一に保って絆を大医にしようとする物凄く強い原理が働く。ああ、本当に日本的だなーと思いました。そして、たぶん、日本的が極まっているが故に、一つの普遍の気がする。


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2017-12-28

『ベイビーステップ(47)』 勝木光著 プロ編をもっと書いてほしかった。

ベイビーステップ(47) (週刊少年マガジンコミックス)

2017年は、僕らの中で何かが終わったという話を、下記のラジオでしました。2017年のまとめて言う形で。ここでは丸戸史明さんの『冴えない彼女の育て方』が13巻で、終わったことをシンボルとして話しています。話していて物語の類型的には、ハーレムメイカー的な、女の子を選べないでウハウハ状態に世界が止まるという類型が終わって、ちゃんと一人を選択するのを明示的な形で示して、しかも人気を保ったまま、かつその他のヤンデレやツンデレの類型のエピソードをこれでもかと深堀していながら(ハーレムメイカー的な手法を洗練しつくしている)、それでも、ちゃんと物語を終わらせたところに、「終わった」という感慨を覚えます。


それと同じくらいに、このタイミングで、ベイビーステップが終わったのも、とても感慨を覚えます。最初期からの大ファンなので。10年間なのですね。とにもかくにも、素晴らしい物語を、勝木光先生ありがとうございました。


とはいえ、物語的に言うと、不思議な感覚があります。というのは、「ここで終わる必然性がない」と思ったからで、まぁ、ぶっちゃけ、ファンなので、もっと続いてくれてもよかったのに、と思ってしまいます。あとがきにあるように、デビスカップ編や、プロのATPツアーの日常を見てみたかった。フロリダのテニスアカデミーに属していたことからも、物語的にも仕込みがたくさんしてあって、もっともっと見れるはずだと思ったので、唐突な終わりに、ショックを隠せませんでした。しかし、同時に、逆説的ですが「いまここで終わってもおかしくない」ところまで物語が到達していることも、構造的にも伏線の残りを全く感じないところも、この作品の特徴だなぁと思うんです。なので、傑作として完成しているし、えーちゃんには、そもそもトラウマなど何かの欠落があって、勝つことや上に上ることを目標としているキャラクターではないので、彼がテニスをして食べていけること、ずっとずっとテニスにかかわっていけること(=プロになったこと)と、あえて言うのならば、それを共有できる伴侶のなっちゃんと相思相愛になった時点で、もこの物語の構造的なドラマトゥルギーは終わっているんですよね。


けれども、それは「あえて」言っている話で、スポーツ漫画として、やはりこの作品が特異なオリジナルな部分は、トラウマや欠落をベースに、強烈な上昇志向による「勝ち負け至上主義」、僕は日本的ランキング・トーナメント方式といっていますが、そうではなキャラクターの在り方を軸に成長が描けるんだ、ということを描いたことだと思うんです。僕は、ランキングトーナメント方式に勝ち登っていく・・・・典型的なのは、「甲子園を目指す」というような物語ですが、そういうものの動機の在り方を成長(勝ち上がっていく)ことに対比させて、成熟という言い方をしていましたが、もうこういった高度成長期の残骸とでもいうようなランキングトーナメント勝ち上がり形式は、one of themになってしまっている現状では、まだまだ物語の類型としては大きな府という骨太のものですが、既に中心の幹で、他を支配するという構造ではなくなっていると思うんですよね。なので、もう、わざわざ成長という言葉に対比させて成熟という意味が失われているように感じます。スポーツ漫画の物語において、このような在り方が可能なんだ、ということを、しかも高い人気と長い連続性を備えて世の中に打ち出したことは、とてもエポックメイキングなものだったと思います。


まぁそういった分析の部分ではなく、、、、、もうえーちゃんやなっちゃんに会えないのは、寂しいなーと思います。10年ずっと、気にしてきた存在ですからね。それにしても、こうして全体を見渡してみると、なっちゃんの決断と行動の速さっぷりには、驚きます。アキちゃんやマーシャなど、かなりのハイレベルのライバルたちに、一瞬たりとも、付け入るスキを与えなかったのは、本当に凄いと思うのです。これは、彼女が人生を間違わない人なんだな、というのが凄くよくわかる。そして勝木さんのヒロインに対する感覚、ヒロインとのラブコメの物語をどういう展開で考えているかが、如実にわかるものでした。なんというか、恋愛にまったく重きが置かれていない(笑)。かといって、自己実現まっしぐらで、「自分」しか見えていないおれがおれがの怪物でもない。とてもニュートラル。うーん、とても不思議な感じがします。というのは、これだけニュートラルだと、普通は動機自体がなくなってしまうんですよ。けど、えーちゃんの強い意志は、物語全体を通して、見事に描かれている。いやはや、新世代の動機の在り方だな、と思います。けど、もうこういう「動機の感覚」は、もうこういう「動機の感覚」は、普通なんでしょうね。時代が本当に、次の世代にうつって、これまでの物語類型の文脈が、かなりいったん終了した感じが、凄いします。勝木さんのキャリアはわからないのですが、フロリダのアカデミー編やなっちゃんのジョージア大学のエピソードを見ていても、アメリカやグローバルな人間関係というのが、ほんとうに、壁がなくサラっと描かれている。たぶん住んだことないと思うんですが、アメリカの日常の雰囲気とか、もうほんと、何のなんというか壁もなく、普通に描かれてて、、、、世代が違うってこういう感覚なのかーと、驚きを感じます。たぶん、アメリカに住んだことなくても、日本の日常と地続きなんですよね、グローバルに接続しているので、何かを本気でやると、特に壁もなくそこに接続されてしまう感覚。「地続き」なんですよね。ほんの20年前までは、アメリカなどの生活世界というのは、憧憬のまなざしで見る異世界のようなものだったんですよね。いまはや、日本の普通の日常と、特に違和感悪接続されている地続きなんですよね。。。いやはや、本当に、なんと時代が変わってしまったんだろうと思います。



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