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物語三昧〜できればより深く物語を楽しむために このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-04-12

プラチナビーズ読了。

プラチナ・ビーズプラチナ・ビーズ
五條 瑛

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評価:★★★★星4つ

(僕的主観:★★★★★星5つ)

comingsさん、紹介ありがとうございました。『プラチナビーズ』読み終わりました。素晴らしく面白かったです。厚いのに、全然そういうウザさを感じさせないし、『スリーアゲーツ』と連続で読むと、世界観の広がり、キャラクターへの共感と謎が強い連続性を感じさせて・・・ほんといい人を紹介していただきました。ありがとうございます。物凄く楽しかったです。この人の作品は、もっと読んでみようと思います。何よりもうれしいのは、単体としても面白いんですが、シリーズとして面白い構成になっているが、とてもうれしいです。葉山の、エディの、坂下の、サーシャのその後が気になるもの。ちなみに、サーシャの容貌ですが、吉田秋生さんの『バナナフィツシュ』という物語に出てきた、ブランカという元ソ連のKGBの中佐を強く連想させられました。たぶん生い立ちもシュチュエーションも、ほとんど同じじゃないかなぁ、と思います。あと、もし人種が朝鮮系だとしたら、中国東北部とソ連のあたりの朝鮮族は、民族強制移動で、中央アジアの方に強制移住させられた、凄まじい過去がありますよね、、、ソ連邦時代に。あの辺の生き残りかな・・・とか思いました。この役どころ最高ですね。ああ・・・それにしても、プラチナビーズという言葉の意味がわかつた時には、胸がぐっときましたよ。この人、とても専門知識がある人のようですが、物語がうまいですね。本当にドラマチック。・・・・いま調べていてわかったんだが・・・この作者、女性なんだ!!びっくり、まったくそうは感じなかった。珍しくまったくアンテナが働かなかった。・・・ところで、この葉山君のシリーズの続編はあるのでしょうか?。鉱物シリーズは、この二作だけなのかな?。この人、たくさん著作があって、どういう順番で読めばいいのかが分からない・・・だれか、、、、教えてください・・・。

http://media.excite.co.jp/book/interview/200305/

2009-04-11

これを同時に読むと、なるほど、と見えてくるものがある。

「正義の国」の日本人 なぜアメリカの日系人は日本が“嫌い”なのか? (アスキー新書 037)「正義の国」の日本人 なぜアメリカの日系人は日本が“嫌い”なのか? (アスキー新書 037)
安井 健一

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池田信夫さんのブログで、『「正義の国」の日本人 なぜアメリカの日系人は日本が“嫌い』のことが、取り上げられていて、軽く流してみたのだが、日本社会を多面的に見るためには、「日本の中から見る日本」、そして「境界にいる人から見える日本」と、「海外から見る日本」というのがあると思うんだが、それの構造がこれら作品を読んで、なんだかとてもつながった気がする。

特に日本は地政学的に、北東アジアである、朝鮮半島と中国との関係の力学抜きには語れないと思うし、さらに反対側の対岸にあるアメリカ合衆国との関係を抜きにも語れない。そういう中で、こういったインテリジェンスを扱うスパイもの?になるのかな、小説は非常に面白いと思う。特に登場人物の内面が、ここに隠れているマクロの関係性をあぶりだして興味深い。最近これら関係の本が、特に意識してはいなかったんだが、ずっと読んでいて・・・・なんとなく繋がって「目に見えなかったもの」が浮かび上がってきている気がするんだ。こういうのがテーマを持ってつながりで読む読書というやつで、ぞくぞくする。特に、最近東南、北東アジア全般に出張することが多く、そのホテルや移動時間に読んでいるというのも大きな意味があるんだろう。何事にも体験や情報接種には、背景の文脈が重要なので。


特に「内面のプロセス」がとても興味深い。それなりにマクロの政治や経済の軍事の関係はわかるのだが、結局軍事も外交も最終的に決めるのは人間であり、そこに住むトップが、組織が、人々が、内面でどう感じてどう思っているのか?って事が実感しないと、どのような意思決断がされるかが曖昧模糊となると思うんだ。そういった内面のプロセスを追うには、やっぱり直にあって友人となることと、こういった小説がとてもいいと思う。小説と事実を混同して考えるな、という注意は必要であろうが、所詮人間は本当の意味では理解し合えないので、やはり時系列として長く「内面の変化のプロセス」を追ってそれを追体験できるメディアは、小説が群を抜いていると思う。なんというのかな、一種のシュミレーションだと思うのだ。冗長ではあると思うが、僕はレポートを書く時も物事を考える時も、冗長に相手の思考プロセスを再現できるように、だらだら情報を集めて積み上げていく癖がある。いちおうミニッツは、意識すれば要約して一瞬で書けるのだが、そういうものは、情報の持つその背後にある「目に見えない網の目」みたいなものを、結局あぶりだすことはできないと思うんだよね。僕がやりたいのは、「目には見えないものを明らかする」ことと「その情報を使って意思決断をし現実を変えること」なんで、まぁビジネスなんだよね。小さいサイクルでもこれができると、ぞくぞくするんですよ。


さて日本人の僕は、日本社会の情報や日本人としての常識というものはいつもとらわれているのでよく知っているんだが(=つまり「空気(ニューマ)にどっぷり浸かっているということ)、今回特質して面白かったのは、五條瑛さん、佐々木譲さんや山崎豊子さんの小説で、アメリカの情報機関に所属する日系アメリカ人の視点というものを体験することで、一気にアメリカから日本がどう見えるのかというもので、自分の感覚が相対化されたからなんだと思います。これは、素晴らしい視点の体験で、久々に興奮しています。その原点は、なんといっても、山崎豊子さんの『二つの祖国』で、実在の人物をモデルにした日系二世のアメリカ人情報将校である天羽賢治が、日米戦争にあたって苦悩し続ける過程を小説にしているんですが、この日系のアメリカ人のアイデンティティの変遷が、かなり深く日本とアメリカとの「関係性」を明らかにするよう感じるんです。特に、アメリカに同化するために、必要以上に白人社会にこびへつらって、アメリカ人以上にアメリカ的なものへの過剰な忠誠心とコミットするチャーリー田宮と、日本人であるというアイデンティティを捨てきれなかった天羽賢治や井本梛子との対比は鮮やかで、この対比の果てが、『「正義の国」の日本人 なぜアメリカの日系人は日本が“嫌い』にいるような、日本を正義感から告発し続ける日系アメリカ人の議員ような存在になるのでしょう。


これも表の結果や機能だけ見ると、まぁ日本に住む日本人の僕からすると、なんだよこいつ?って不愉快なりますが(だって情報操作で踊って、しかも自らの実存のエゴ丸出しで、事実や公平さが無視されているようにしか思えないもの)、けど、チャーリー田宮や日系移民のアメリカ合衆国への同化プロセス、つまり一つの旗のもとへ忠誠を誓うということが、「後から移民した既得権益のない人たちにとってどういうものであるか?」という内面のプロセスを少しでも勉強、共感、追体験すると、単純には憎んだり怒ったりできなくなるんですね。なぜなら、もし自分が同じ立場であったら、やはり同じような実存のエゴ、自意識の病で悩むと思うから。


あと僕の少ない読書量(微妙に本気で謙遜でもあるが・・・まぁぼのぼのさんやノラネコさんのような凄い例があるので、、、、)で、北朝鮮の内面をちゃんと人間として描いたものってほとんど見たことなかったんですが、五條瑛さんの『スリーアゲーツ』は、良かったなぁ。というのは、最後までこのドラマチックな物語って、家父長の理想の在り方を説いているんで、主体思想のようなアジア的皇帝専制の思想の枠組みの基礎ってまさにこれだもの。けど、これが家族愛に変換して、家族を愛する父親の誇り高き義務という、我々にもわかりやすい形式で感情移入させてくれると、もう最高によくわかるの。この北朝鮮のスパイには、強いシンパシーを感じたよ。そもそもこういう職業人は、自分の意志よりも強制的にマクロの波にのまれて、組織のしがらみと国家権力からの恫喝と恐怖でコントロールされていることが普通で、、、それは、多かれ少なかれ「食べて家族を養うために」会社の社畜となること(笑)と、もちろん質的な違いはあるしても、そんなに変わるようには僕には思えないんだよね。もちろん、「国益」と「こうした個人としての共感」は別物で、そんなに事情は分かっても、人格的にシンパシーはあっても、国益を貫くためにどんなえげつないことでもしなければならないのが、またこお弱肉強食の競争社会なんだよね・・・人類が生きる世界、社会ってそういうものだもの。


なんかまとまらないですが、上記のようなものをずっと追っていて、なんとなく、日本をめぐる「いまのポジショニング」がとても相対化されて、僕には素晴らしい読書体験でした。

2009-03-31

『スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙』 五條瑛著 対アングロサクソンへのアジア人の苦悩〜覇権国と属国の視線

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五條 瑛

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評価:★★★★星4つ

(僕的主観:★★★★星4つ)


■属国から見た覇権国への眼差し〜コンプレックスとプライドの狭間で

大学時代に、日本におけるアメリカに関する研究の泰斗である本間長世氏の『思想としてのアメリカ―現代アメリカ社会・文化論』を精読したことがあるんですが、ここでなかなか興味がある問題提起が書かれていて、それは「アメリカ人とは何か?」というといなんです。これは、本間さん独特のものではなくて、アメリカ社会自体で深く苦悩されている疑問なんです。いや、単純な話、民族的にピュアネスを絶対に唄えない「移民社会」であるアメリカという人工国家にとっては、「僕くって誰なの?」「私って何なの?」と問うた時に、非常に答えにくい社会なんですよね。ちなみに、このアイデンティティを問う問題は、アメリカ社会の根幹をなす問題なので、よく知っておくと、そういった関連の本は非常に読みやすくなります。逆に、この疑問が社会の、思考の、基調低音にあるということを理解しておかないと、さっぱり意味が分からず情報を摂取しているということになりかねません。この疑問があってこそ、ランドルフボーンの「アメリカの歴史は未来にある」という言葉の意味が輝くんです。もちろん、知っている人は知っていると思いますが、メルティングポット論とサラダボウル論などの例の論争です。

思想としてのアメリカ―現代アメリカ社会・文化論 (中公叢書)思想としてのアメリカ―現代アメリカ社会・文化論 (中公叢書)
本間 長世

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さてさて、なんでこんなアイデンティティの話になるかというと、スパイの話というのは、この問題に深くかかわることが大前提のようだ、ということを最近考えているんですよね。僕は営業・マーケティングをしているんですが、自分でも自慢で話ですが、僕は優秀なマーケッターだと思うんですよ、過去の実績を見ても(笑)。その実経験から感がていくと、そうやって外部で調査している時には、自分が会社側の人間かそれとも敵や顧客側の人間であるか、よくわからなくなる時があるんですね。それは、真の分析や情報の追求は、二つのマインド(=心の姿勢)が常にないといけないから起きる現象なんです。



1)相手(=特に敵)に対する限りないシンパシー(=相手の立場になってシュミレーションする同化力)


2)現象を立場・属性に付与させないで全体から俯瞰的に構成する


えっとつまりね、「インタヴュー」という形で、情報を引き出すには、大前提として相手だったらどう考えるか?ということを深く体感して、ほとんど相手の味方になるくらいの共感力と同情心を発揮してしゃべらないと、「そもそも話なんかしてくれっこないんです」よ。また、話がかみ合わないですよね、もちろん。

それと同時に、相手が思わずしゃべってしまうには、「相手の立場も含めた包括的な議論のスキーム」を提示できる時なんですね。えっと、難しく言うと、ある現象・・・たとえば北朝鮮でテポドンが撃たれた?ということがあったら、それを北朝鮮の人に話を聞く時には、自分の信条がどうあれ、北朝鮮の人が正しいよね?ぐらいのスタンスや雰囲気で共感をもった言葉選びをしないと、当然しゃべってくれませんよね?、、、けど、実際には、敵がしゃべりかけているんだから、警戒してなかなかしゃべってくれません、それでも。

そうすると、どうなるか?というと、この議論のスキームは、アメリカ人がどう思っているか?中国人がどう思っているか?そういう情報を対置して、全体の中で、あなたが思っていること(=主観の意見)ことはこう、全体の中に位置付けられますよね?という風に、議論の広がりや総体観を示しながら話をもってきます。自分が公開してもかまわないがかなり重要な、第三者の情報・・・たとえばアメリカとか中国の話を伝えてあげると、敵はとても喜びます。僕にとっては大したことがない情報でも相手にとっては重要ということはままあるからです。


こういう姿勢で臨むと、かなり人は胸襟を開いてしゃべってくれることが多いです。これ以外にもいくつかあるのですが、今回はアイデンティティに関わるので、まずはこれに絞りましょう。


つまりね、全体を俯瞰して(=コスモポリタン的なニュートラルさ)、相手に非常に強くシンパシーを感じる(=相手への同胞・帰属意識)必要があるということです。


これが容易に、相手側に寝返る素地をつくってしまうことは、わかりますよね?


優秀な情報分析官・スパイは、すべてがダブルスパイ(二重スパイ)である


とよく言われるのはこのためです。


また、これらの情報分析官に、立場上、混血というのか、ハーフ(ダブル?)といっていいのか、PC的(政治的正しさ)なことはよくわかりませんが、そういった立場の人間がとても向いていることは、いわずもがなでしょう。存在自体が、そういうものなのですから。これをもう少し絞り込むと、日本においては、過去の関係及び現在の社会構造から、日系アメリカ人を筆頭に、アメリカ人、中国人、朝鮮人のそういった人々が、こと、外交(=諜報戦)と、覇権国の属国統治に非常に重要な存在であるといえると思うんですよね。

そこで小説的に、内面のドラマとして、そういった人々がどのようなアイデンティティを確立し、どのような世界観を持っているのか?というのが、小説の題材になるほど本質的な問題点であることがわかってきます。このことに敏感でない人は、国際社会で生きていけないでしょうしね。えっと、その一つが、日系アメリカ人のアイデンティティ問題とパックスアメリカーナにおける辺境の有力な属国である事実上の植民地日本(アメリカによる世界覇権の有力な同盟国)の統治者及び統治者予備軍たちのアイデンティティーの問題となるわけです。たとえば、パックスロマーナを支えた多民族国家にして大帝国のローマン・エンパイアの属州統治の基礎として、ローマの高級指定の家に属国のエリートたちを人質として出させてエリート教育をローマ風に染め上げるというものがありました。もちんこれは、国家としてのレベルが、常に属国よりもはるかに高いレベルで維持されているというインセンティヴ(=動機付け)の問題はありますが、覇権国が属国よりも情報集積や統治手法に置いて優秀ということはまずあり得ませんから、まぁ問題ないでしょう。とすると、アメリカのフルブライト留学生(たとえば革新官僚で、官僚エリートの出自の、宮沢喜一元首相もそうでした)なんかはこのシステムの有力な傍証ですよね。


ここには、


覇権国家への強い憧憬と恐怖




属国である自分たちへの差別に対する強いコンプレックスと自主独立の怒り



がないまぜになった難しい感情を持たせることになります。


これを具体的に上げていくと、日本においては・・・これは僕の感想ですが、やはりですね、ペリーの黒船による強制開国以来のアングロサクソンへ憧れと敵愾心が、渦巻いています。とりわけ、世界戦争を遂行して自民族の崩壊をかけて戦った日本には、アジアの中でも、アメリカに対する異様に強いプライドが溢れていることと、同時に、西欧文明に対する強いコンプレックス、それに戦後のアメリカのリベラリズムによる価値化の支配、奴隷化が混ざり合って、とても複雑な意識を形成するに至っているようです。僕が、村上龍の『愛と幻想のファシズム』のCIAのスパイである可能性が最後まで消えないまま日本国首相になって暗殺された、万田のエピソードが非常に「らしいなぁ」と思うんですよ。日本のような属国でアメリカの意思なしにトップに立つことはできません・・・が、プライドがある場合には、その狭間で、どうやって独立を維持しようかと悩むわけです。あくまで「その中」でです。なぜなら現実主義者ならば、「世界を支配する暴力のシステム」または「金融による圧倒的に支配力」に対して、そんな簡単に抵抗できないことは百も承知だからです。いや、吉田茂にせよ、池田勇人にせよ、日本の過去のエリートたちは、みんなこの難しいバランスが垣間見えます。最近の白洲二郎の人気だって、「マッカーサに楯ついた!」という部分だなんて、笑ってしまいますよね、アメリカというご主人様がいるのが前提の勇気なんだもの。日本人にはそういう複雑なコンプレックスが渦巻いています。もちろん、これは、白人対非白人や、アジア人とアメリカ人でも、似たような構造は見出せます。


この部分を無視しても、国際政治や外交は語れないはずなんですよね。


それが、日系二世の強制収容所問題の苦悩を扱った映画の『ヒマラヤ杉に降る雪』や山崎豊子さんの『二つの祖国』の実在した日本への情報部隊の士官だった日系アメリカ人の内面を丁寧に追っていくものを見ると、「現代」と「過去」がつながってくるんです。ああ・・・彼らはこういうことに苦悩して、その結果として、「いまのこういう未来」を選択してきたんだなぁ…って。

こういう全体像をすべて理解して体感したうえで、もう一度同じスパイものを見ても、見える感じが全然違ってきます。やっぱり歴史を学ぶことは大事だなーと思う今日この頃です。面白さが違うもの。


ヒマラヤ杉に降る雪ヒマラヤ杉に降る雪
デビッド・グターソン

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インテリジェンス小説の楽しみ方

comings 2009/03/28 04:44

どうもです。

ペトロニウスさんのブログでは関連したテーマを扱った作品ばかりでなく、どのように関わりあっているかを丁寧に記されているので、読んで感じたことを明確化させてもらって参考になります。こちらこそありがとうございます。

蛇足ながら今月の雑誌軍事研究で公開情報の分析を行い日本人を擁するアジア研究分遣隊という在日米軍の情報部隊の存在を知りました。まさに作中の“会社”のモデルの一つであろうと思われます。

ごっちゃにしてしまう危険を孕みますが、フィクションから現実のニュース等に興味を持つ、また逆にニュースから興味のあるテーマの作品を読んでいく(上述の情報部隊の事はプラチナ・ビーズを読んでいなければ目に留まらなかったと思います)。そうして現実と読書の視野を広げていく、その相互作用が起きやすいのがインテリジェンス小説の功用であり魅力なのだと思います

http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20090321/p3

■1冊の本を読むためには、たくさんの背景知識との連関で読むと、より大きなものが浮かび上がる・・・はず?

コメントありがとうございます。僕こそ、五條瑛さんは全く知らなかったので、紹介いただきとてもうれしいです。もともと僕がブログを始めたころは、メインは、映画の感想を書くサイトにするつもりだったんです(笑)。そして、その時のコンセプトが、小説も漫画も、その「一つの映画のバックグラウンド」と、「ほんとうに監督がいいたいこと」を追求していくと、様々な作品ともテーマが重なりあったり補完関係にあってありして、一つの大きなテーマがある場合が多いんじゃないかな?、そしてそういうより横に展開し広くつながる「大きなテーマ」みたいなものを説明したいという思いがありました。はてなにきてからの最近は、時間がなくて、本当に意味でただのベタな感想&単品紹介に堕していますが・・・。だから、旧館の映画関係の記事を見ると、その作品を媒介に、できるだけ同じテーマや関連を感じる「他のジャンルの作品」を紹介することに重みを置くようにしていましたはずです。そういう部分が、ちらとでも感じてもらえれば、とてもうれしいです。同時代に生きる人間ですから、影響をうけないとは思えないですよね。僕の人生のスタンスの一つは、「もっと世界を深く広く体感したい」ですので、より広くマクロの視野を獲得できるこういった作品や情報は、とても楽しいです。



■公開情報から、未来を予測する技術

戦争の研究をしている本で、実は原子爆弾やその他の革命的な技術やアメリカの参戦などは、当時の公開情報を丹念に追えばすべて分かるものだった、ということが実証されているのを読んだことがあります。つまりは、この現代情報化社では、そもそも情報を隠匿することは不可能に近いんですね。ましてや大規模な開発・研究ともなれば、その産業連関につながる民生に影響が出ないなんてことはあり得ない。それを追えば、パズルのように構築できてしまうんですよね。実は、ビジネスでも似ていると僕は思っています。


僕はマーケティングが本職ですが、あることが、どうしてもわからないと悩んでいる部隊に僕が配属された時に、丹念に公開情報をつなぎ合わせると、かなり精確にいろいろなことがわかってきたりすることがあります。これが、マーケティングプランの専門としては、けっこうたまりません。普段は、遊んでいるんじゃないか?とか、無駄なこと細かく調べてレポートで書くなとか、ビジネスでは効率を重んじるんでよくいわれるんですが、こうして背景を埋めていった後に見えてくる「世界の像」は、凄まじいインパクトがあることがあり、しかもこれまでのビジネスに意思決定をひっくり返してしまうことがしばしばなんで、あまり気にせず僕はいつもこも細かく自分の興味を追うようにしています。まぁスタイルなんですよね。時々怒られるんですが、ただの主張レポートやミニッツで、異様に長く書くので・・・(てへ)。


まぁ仕事がそういうものであることからも、ここに出てくる葉山ら情報分析官の仕事には、非常にシンパシーがわきます。世界で分かっているのが自分だけという孤独から、話しかけるとなんでもしゃべってくれる可能性がある・・・とか、なかなか鋭い観察だなーと思いました。


ちなみに、『軍事研究』のブログはここですね。こういうのを継続的に追い続けているジャーナリストが、自然と諜報員に近い位置づけになるのは、当然ですよね。そもそも出来事があっても全体に結びつけるだけのバックグラウンドの知識がないと、理解ができませんからね。

http://gunken.jp/blog/

f:id:Gaius_Petronius:20090329163956j:image

2009-03-21

『スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙』 五條瑛著 

スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙 (集英社文庫)

評価:★★★★星4つ

(僕的主観:★★★★星4つ)


comingsさんのお薦めで、本日、出張の帰りの飛行機で読み終わりました。凄く面白かった!です。この作家は、僕にとって金鉱のようです。まだまだたくさん書いているので、楽しみでたまりません。『プラチナビーズ』も購入済みです。紹介ありがとうございました。特にスパイ小説と、現代の東アジアを巡るテーマの話の流れで読んだので、全体像を描けながら読めて、とても楽しかったです。モノごっとつ厚かったですが、一気に読めました。

特に、『ウルトラダラー』は韓国出張時に、この『スリー・アゲーツ』は上海のからの出張中のホテルと移動時間に読んでいたので、なんというか、話の世界にとても良く入り込めました。こういうって、雰囲気が重要じゃないですか(笑)。漢江の奇跡のくだりを読みながら、インチョンからタクシーでソウルの市街に向かう途中の漢江を眺めつつ読んでいたりすると、なかなかひたれてよかったです。

最近、ここらを飛び回っているので、こういう東アジアを巡る小説とか読むとなかなかぐっときます。

北朝鮮の偽ドル札をめぐるマクロの状況は、『ウルトラダラー』が良く書けており、それを前提とした「ある北朝鮮人スパイの物語」というミクロ視点でのドラマ性を盛り上げたものが、『スリー・アゲーツ―三つの瑪瑙』という、評価はまさにそうですね。二つ同時に読むと、非常に全体が分かって面白いと思います。また、この作品は、北朝鮮のスパイの内面描写が延々続く・・・事実上、シリーズの主人公である葉山が狂言まわしの役になって、このチョンという悲しくも苦しい「北朝鮮のスパイを主人公とした物語」になっていると思いました。これはかなり北朝鮮人のスパイの内面が描かれていますが(これが泣けるんだ・・・・)、そういった内面描写がほとんどないのは、村上龍さんの『半島を出よ』なんかがいいです。これらを比較しながら読むと、興味深いですよ。


そうですね・・・・マクロの伏線は、『ウルトラダラー』がとても良く、また僕は葉山やエディ、坂下ら米国駐留軍の情報機関に連なる日系二世三世や、その指揮を執る青い目のアングロサクソンのエリートの葛藤や緊張関係は、山崎豊子さんの『二つの祖国』の主人公天羽の苦悩を読み込んでおくと、非常によく全体像が分かってより深く理解できるな、と思いました。またこういった、「私とはいったい誰なんだ?」というアイデンティティの問題と、アジアの事実上の支配者たる米国アングロサクソンと、そのなかで葛藤する為政者やアジア人という緊張関係は、村上龍さんの『愛と幻想のファシズム』の万田総理のエピソードが凄く重し出される。最近、この手の物語を多く読んでいるので、なんとなくこの世界の考え方とか全体像がうっすらわかって気がします。いや、読書って面白いです。


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