ボストリッジ「シェイクスピア・ソングス」



イアン・ボストリッジ(テナー)▼アントニオ・パッパーノ(ピアノ)▼エリザベス・ケニー(リュート)▼アダム・ウォーカー(フルート)▼マイケル・コリンズ(クラリネット)▼ローレンス・パワー(ヴィオラ)〔WPCS13553〕

シェイクスピアの戯曲の詞章をテクストとする歌曲を集めた特集盤。作家と同時代の16世紀半ばから、20世紀後半までの作曲家による20作品を収める。歌うのはボストリッジ。子音を予め発音し、母音を音符に乗せる歌唱は澱むところを知らない。フレーズの歌い納めに神経を通わせることにより、シェイクスピアの脚韻に新たな息吹が宿る。その上、詞の内容を充分に踏まえて声色を変え、息の勢いを調える。その表現の細やかさが、恋心の甘さや苦しさを豊かな階調で描く。英語の言語としての美しさを存分に楽しむことができる。ピアノを始めとした器楽陣も、多彩な子音で言葉に寄り添う。音楽家たちの冷静な演奏が一層、深い趣を誘う。2016年最優秀盤のひとつ。


初出:音楽現代 2016年12月号



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