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2008年06月21日

アニメビジネスの諸問題:ペンギン娘はぁとの場合

| 01:34 | アニメビジネスの諸問題:ペンギン娘はぁとの場合を含むブックマーク アニメビジネスの諸問題:ペンギン娘はぁとの場合のブックマークコメント

 ニコニコ動画発のアニメペンギン娘 はぁと」のDVDの価格設定が話題になっています。

ペンギン娘の価格=スポンサーのないアニメの現状 | FANTA-G - 楽天ブログ

『ペンギン娘 はぁと』のDVDの価格が高いのは広告収入がないからではなく、OVAと同じで予想売り上げ枚数が少ないから - ARTIFACT@ハテナ系

高いという前提が間違っている

 まず言っておかなければならないのは、「ペンギン娘 はぁと」の価格設定、80分9800円というのは、決して高くないと言う事です。現在テレビアニメの平均的な価格設定は分単価80円〜150円。超売れ線のコードギアスマクロスFと言った作品で3話75分入りで6300円。ほとんどのテレビアニメは2話50分収録で5250円〜7140円!という価格設定がされています。といってもこれは定価の話でほとんどの作品はこの2割引から3割引の価格で購入できます。それだけ、小売マージンを高く設定してるのですね。およそ3割が製作収入、3割がメーカー収入、残りが流通マージンと考えればよいと思います。

なぜアニメDVDは高いのか

 そもそもなぜアニメ作品のDVDは高いのか。まずそこから確認しないといけないですね。それは制作費がべらぼうに高いからに他なりません。一般のテレビアニメの製作費は最低クラスで1話25分で1000万円。トップクラスの作品だと2000万円を超えます。これは、ほぼ人件費だけでこの値段なんです。話を分かりやすくするため1分あたりの費用で言うと、1分40万〜80万円というお金がかかるんですね。仮にペンギン娘が最低クラスの製作費だったと仮定して、40×80分=3200万円。流通マージンを抜いた版元+制作の取り分が1枚あたり6000円と仮定しても、5000枚以上売らないと元が取れない計算です。これは、昨今のアニメDVDの販売本数を鑑みても常識的な…どちらかといえば高めの目標設定と言えます。

問題は売り方のセンスのなさ

 問題なのは価格ではなくて、その売り方のセンスのなさですね。そもそも今のアニメ作品が2話又は3話入りという形式なのは、バカ正直に4話ないし5話入れて単価が高くなると売上が落ちるという分かりやすいデータがあるからなんですね。だから資源の無駄だとは思いつつもどのメーカーも実売で4000〜6000円くらいで収まる価格設定にしている。11分アニメを7話80分収録という形式にした事自体が疑問符のつくところです。

 特典の内容もいただけない。ステッカーやピンバッジといったグッズは従来のアニメファン向けの商材であって、ニコニコ動画ファンに向けて特化されたペンギン娘のような作品にはまったく向いてないんですね。そうではなく、これがあればニコニコ動画がより楽しくなる、ニコ厨の友人に自慢が出来る、そういった内容の特典をつけたほうが、明らかに食いつきが違うでしょう。

 例えば、ですが、DVD購入者だけがニコニコ動画でスペシャルなコメントカラーが使える、特別なコマンドを使用できるであるとか。ニコスクリプトを利用したゲームでDVD版とニコニコ版で作画間違い探しが出来るとか。あるいはMAD素材用にブルーバックで切り抜きしたアニメーション素材や逆にキャラクターを消した背景素材を提供するとか。もっと即物的にニコニコのプレミアム1ヶ月分のチケットを付けるとかだっていい。実現可能か不可能かは置いておいて、考えればいろいろあるでしょう。

ネギまOADに見るアニメビジネスの新展開

 週刊少年マガジンで連載中の魔法先生ネギま!スクールランブルの単行本にオリジナルアニメを付けた特別版が出る事がちょっと話題になっています。

no title

no title

1巻3500円程度。恐ろしい事に公式ページを穴が空くほど見ても収録分数が書いてないのですが(笑)、まあ1話25分収録でしょう。完全受注生産で書店流通ですので流通マージンはギリギリまで抑えられていると考えられます。この企画の素晴らしいところは、従来のアニメDVD購入層以外の、原作コミックファンに強くアピールしている事なんですね。収録されるアニメの内容も、原作単行本の流れに沿ったものとし、また他では見れないというプレミアム感を出す事にも成功しています。実際のところこの企画が成功するかどうかはまだ未知数ですが、何よりも今までアニメDVDを購入していなかった層を巻き込んでいこうという気概を評価したいんですね。ネット配信に力を入れるコードギアスやRD潜脳調査室であるとか、意識の高い製作会社はテレビ以外のコンテンツのアクセス経路を構築しようと今様々な工夫をしてるんですね。ニコニコ動画でオリジナルアニメを流すというのも、もちろんその流れの1角であるわけで、それならばアニメファンではなく、ニコニコ動画ファンが思わず手に取ってしまいそうな企画を考えるのが、自然な流れでしょう。

1巻1500円で売るくらいの冒険があってもいい

 もしペンギン娘DVDを1巻1話で発売した場合、その価格はおおよそ1500円程度になると考えられます。1500円というのはちょっとしたマジックナンバーで、ニコニコ市場を積極的に利用するような層はこの数字にピンと来るんじゃないかと思うのですが、amazonで購入した場合に送料が無料になるラインなんですね。もし1巻1500円で、ニコニコ動画を少し楽しくするような特典を付けて売り出したら、ニコニコ動画ファンの反応は全然違うものになったはずです。DVD一枚に11分てどんだけ資源の無駄遣いだという話ももちろんありますが、その隙間を埋める企画を上手く演出できればそれだって追い風になるかもしれません。例えば特選マイメモリという形でニコニコ動画上で流れたコメントのベストショットを収録する。その収録マイメモリ自体をユーザーから募集する。そうゆう企画を起こせばちょっとした祭になるかもしれません。コメント職人というのはニコニコ動画上で欠かす事の出来ない存在ですが、なかなかブログ等でも具体的に評価される機会が少ない存在ですしね。

 この程度の話はほんの数時間考えただけでも出てきます。要は、やる気があるかないかだけの問題で。少なくとも今回のペンギン娘DVDの販売方法には、アニメファン以外を巻き込んでやろうという気概を感じる事が出来ませんでした。今回は残念な事になってしまうかもしれませんが、しかしそれで終わったわけではありません。次の企画、その次の企画で“何か”が起こる可能性は否定できないわけで。

必勝法はない

 重要なのは、どの作品にも通用する必勝法は存在しない、と言う事です。ペンギン娘のようなネタ性の強い作品の場合は少し度を越えたような悪のりをするべきでしょうし、そうでない作品にはまたそれなりにふさわしいアイデアというのはあるでしょう。常に考えて考え抜いて、限られたパイしかない従来のアニメファン以外を巻き込んでいく方法を考えなければアニメ業界に明日はない。そう思っています。

ペンギン娘はぁと DVD Vol.1

ペンギン娘はぁと DVD Vol.1

ペンギン娘 1 (少年チャンピオン・コミックス)

ペンギン娘 1 (少年チャンピオン・コミックス)

あだとむあだとむ 2008/06/22 07:55 素晴らしいエントリだと思います。

GiGirGiGir 2008/06/22 13:33 >あだとむさん
コメントありがとうございます。反応返してもらえるとすごく励みになります。また何か思う事がありましたらよろしくお願いしますね−。

低価格だけだと低価格だけだと 2008/06/22 21:30 1500円と言うと1巻だけ安かった、そして赤字を出したOVAのゲッターロボを思いだします。価格を下げるだけでは買ってくれる人間はなかなか増えないですよねえ・・・。
低価格路線は制作ジャンルを広げる行為と本数を出す行為を同時にやらないと効果がなかなかでない。
ソフトの低価格路線はではDSとかまんがなんかが成功しているが大人向けの漫画に進出したり頭脳ソフトを出したり。
買ってない層にかつ低価格で売る、かつその中にマニア向けも混ぜておくぐらい量を出す。・・・お金かかるし難しいな。

高い理由をのべても高い理由をのべても 2008/06/22 22:08 >、「ペンギン娘 はぁと」の価格設定、80分9800円というのは、>決して高くないと言う事です
アニメを買いなれてる方の意見ですね。正しいですが正解ともいえないような。高いといってる人の主語は
(ハルウッドの映画等と比べて)高い
(海外で販売されるアニメと比べて)
高いと(主語を抜いて)言ってるので
アニメでは普通といってもアレは安いじゃないか?っで話が終わってしまいます。人件費がかかる?売れないから単価がが高い?
高い理由をいくらのべても安い商品が存在すると言う事実の前に
は客はいいわけにしか聞こえません。安い商品がなぜ安いのか分析が(商品の販売前にいかに制作費を回収するか?など)必要だすねえ。

kalmalogykalmalogy 2008/06/23 01:24 初めまして♪
ペトロニウスさんのブログでちょくちょく見かけてると思いま
す、カルマと申します。

1期からのギアスのファンでありまして、大変興味深く読ませていただいております。
「漫研」さんも1年ほどROMってます(笑)

本編が無料で流れている以上、「高画質」と「需要があるかどうか人によりけりな特典」だけでは厳しいですよね。

そういう意味で、ニコ動にフィードバックされる特典というアイデアはかなりイイですね!

ネギま!のOADについてですが、最近更新された赤松先生の日記(http://www.ailove.net/diaries/diary.cgi)にて、
23巻で実現しなかったアイデアとして、以下のような物が挙げられています。

>例えば声優ラジオは入りましたが、原作準拠の特徴を生かした「作者サイドのオーディオ・コメンタリー」や
>静止画データベース、付録デスクトップアクセサリ等は入りませんでした。
>(↑動画投稿サイトでは扱いにくい分野)

最後の1文が、企画意図を感じさせますよね。
ニコ動にうpしにくくて、買わせる動機になる特典を付けないと売れない、という戦略が見えます。

ネギま!OADは、公式サイトのTOPカウンターが「23巻の予約数」だそうです。
34000本という数字は、現段階でも十分な売上だと思われますが、
一般書店のほとんどは締め切りが来てから予約数を報告するそうなので、もしかすると、締め切り日の25日を過ぎると、数字が跳ね上がるかも知れませんね。

1期のアニメ主題歌の売上が、多くて3万枚なので、それを超えての売上となると、普段DVDを買わない原作ファンも巻き込んで売れているように思えますね。


>(ハルウッドの映画等と比べて)高い
>(海外で販売されるアニメと比べて)高い
>と感じる
うーんと、その例えは深夜アニメのDVDを購入する層「ではない」、もっと一般層の話であるように思います。
今回の「ペンギン娘」の場合は
「(そこまでDVDを買わないかもしれないけど)アニメファンのニコ厨(=この商品における主要購買層)」
にとっても「高い」と感じられるからこそ問題になっているように思います。

じゃあ、主要購買層のニコ厨に売れる要素って何よ?と言ったら、エントリ内で書かれているようなニコ動と連動した特典とか、もう少し低価格にして、ニコニコ市場に付いても買いやすいようにすることなのではないかと。

GiGirGiGir 2008/06/23 03:49  カルマさん、貴重な情報をありがとうございます。それにしても中間集計で3万4000本ですか!正直侮っていました。価格設定的に1万本越えれば十分成功かな…くらいに。手元の資料によるとネギま!テレビアニメ版の1巻の売上が2万本強といったところですから、明らかに新規層の開拓に成功してますね。さすが赤松プロデューサー(笑)。マジ尊敬です。

 言うべき事はだいたい先回りされちゃってるんですけれども、私の書き方が悪くて伝わってない部分もあるので少し補足しますね。

 1巻1500円というのは、安売りをしろという話ではなくて、9800円÷7話=1400円にちょっと色をつけた、むしろ割高な価格設定なんですよね。にも関わらず、ブクマコメでNANAやゲッターロボの話が引用されているあたり、ダンピングして安くしてるんじゃないかという錯誤を実際に生んでいる訳で、これはそれなりに有効な手なんじゃないかと思いますね。id:yoshikawaさんが指摘しているように上限値設定に関わってきますので、むしろ逆に1800円とか2000円にしてもいいくらいかもしれません。

 そもそも普段アニメDVDを買わない層にとっては、アニメDVDの価格の相場感自体がないんですよね。だから、この内容で1500円ないし2000円だったら試しに買って見てもいいかな?という魅力を出せれば実際には普通のアニメDVDよりも割高でも買ってもらえる。それはネギまOADの予約数が実際に証明してますね。

angmarangmar 2008/06/23 13:51 DVD付きコミックという形態は既にこどものじかんのコミック4巻で行われていました。こちらは価格3980円。どれだけ売れたかはちょっと分かりませんが、確かかなりの好評企画だったはずで、今回発売される5巻でも同じ企画が行われています。
この例を見ても、DVD付きコミックの場合3500〜4000円が価格帯になりそうということでしょうか。
コミックに上乗せ3000円分と考えれば、一話30分とすると普通のアニメと同等の相場感ですね。
(今調べたところ、ロザリオとヴァンパイアの最新巻にはTVアニメ一話+特典映像のDVDが付いて1600円ということらしいですが、これはコミック用に作られたアニメというわけではないのでちょっと性質が違いますね)

もっともこの手の企画が成功するのはそれが一話単位、一回限りの手法だからで、アニメのDVD一巻目が良く売れるのと同じ構造な気が。

ペンギン娘については別の考え方があって、販売側は、「ニコニコで映像だけならタダで観られてしまうものに対し、映像だけの商品が果たしてどれだけ受け入れられるのか?」という不安感から、逆に特典てんこ盛りによるプレミア付け戦略に出たのではないでしょうか。
おっしゃるように低価格路線戦略の方がニコユーザー層にはフィットしたかも知れませんが。
あと確かペンギンの製作にはニコ動自体は入っていなかったと思うので(ドワンゴは参加)、ニコ動連動企画についてそれほどスムースに話が進むわけではないかも知れません。

kawatikawati 2008/06/23 19:25 >ニコニコ動画を少し楽しくするような特典を付けて売り出したら
こういうちょっと面白い着眼点から何か取り入れていくのは面白そうですね。単体で値段どうこうして売り出すのはもう行き詰っているようですし