2008年09月14日
アニメはすでに払いたい人だけが払うビジネスモデルになっている
前回のエントリでは払いたい人だけ払うビジネスモデルの例としてアイドルマスターとニコニコ動画を取り上げましたが、もっと大きな規模でそれをやっている業界があるんですね。それはアニメ業界。その中でも特に製作委員会方式のアニメというのは、実は払いたい人だけが払う金銭収入だけで成り立ってるんですよね。
スポンサーから制作費を捻出してもらう旧来のアニメ制作と違い、製作委員会方式のアニメではとにかくコンテンツ自体を買ってもらえなければ収入を得られない。しかし、国内に何百万人といるアニメファンのうち、積極的にアニメコンテンツに直接お金を支払っている層というのは、全体のごく一部なんですよね。明確なデータはない憶測の話になりますが、アニメDVDのトップセールス*1や周辺のアニメファンへのヒアリングの感触からいって、積極的にコンテンツ購入するのは全体の1割程度で、過半数はまったくコンテンツの購入にお金を使ってないんじゃないかと思っています。
現在のアニメの市場規模は2500億円。熱心な1割のファンが年間30万円〜40万円をコンテンツ購入に充てていると考えるとだいたい妥当な数字にも思えますね。
参考:
数十万人の熱心なファンが支えるアニメ業界
かつてのアニメが、スポンサーが薄く広く集めたお金を使って作られた一種の公共物だったのに対し、現在主流の製作委員会方式のアニメというのは、数十万人程度の熱心なファンの捻出した資金によって成り立っているんですね。コンテンツにお金を払っていない大多数は、あくまでその少数の人たちのおこぼれに預かっているだけなんです。コンテンツにお金を払う人がいなければ制作することは出来ない。考えてみれば当たり前の話ですが、アニメ(を含むテレビ番組一般)は公共物であるという意識ゆえか、なかなかこうゆう現実は認知されていなかったりします。
大多数が無料で見ているものに何故あえてお金を払う人がいるのか。そこには自分を楽しませてくれた作品やスタッフに報いたい、少しでも業界に還元してこれからもよいものを作ってほしいという意識が少なからずあると思うんですね。高画質・高音質といったスペックや、購入特典なんかは、あくまで制作者の意気を買うのであって、コンテンツ購入という行動そのものの動機じゃないんですよね。そもそも画質や音質を追求した場合、下手なパッケージ版よりもデジタル放送を録画したもののほうがよかったりする現実もあったりします。
アニメコンテンツを気持ちよく購入する環境は整っていない
アニメビジネスは、払いたいと思う人が払うことで成り立っている。この事はもっと周知されてしかるべきだと思うんですけどね。なかなか、そうは上手くはいかない。というのもですね。コンテンツを購入する事によって得られる満足感というのが、購入しない人のそれに比べてあまりにも差がない。胸を張って「お前たちは安心して無料で見てくれ」と言うには、越えるべきハードルが高すぎるんですね。2クールのアニメを1シリーズ買うだけで、6、7万円はしてしまう。この線を踏み越えるかどうかというのはほとんどの人にとっては大きな決断が伴う金額です。だからお互いに、無料でみれるのに金を払うのはバカだとか、金を払わずにアニメを見る奴はクズだとか、そうゆう罵り合いになってしまう。あまつさえ、先ほども少し言いましたが、自分で録画機器を揃えて録画したほうが、画質も利便性もパッケージメディアよりもよいなんていう逆転現象まであると、コンテンツにお金を払うというのが本当に心意気だけの問題になってしまう。それは、やっぱり気持ちよくないんですよね。
よりよいコンテンツ購入環境のための一私案
現状のパッケージメディアというのは、録画ファイルに比べてとにかく取り回しがよくないんですよね。これは容量に制限のあるメディアの限界でもあり、なかなか克服は難しいのですが、あくまでパッケージではなくコンテンツを売っているんだという意識があれば、やりようはあるように思います。
例えば有料ネット配信とパッケージ販売のハイブリッド戦略というのはあってもいいんじゃないかなと。放映直後から半年なり1年なりという期間の有料配信を1000円くらいで販売する。その際にクーポンを発行し、DVD等のパッケージ購入時にその分を割り引きするというサービスなんか、どうでしょうね。DVD購入を前提に考えている人にすれば、余計な出費を重ねずにネット配信の利便性を享受出来る。ネット配信のインフラだってタダじゃないという意見も当然あるでしょうが、現状宣伝のためとして無料で何万人*2という人に開放しているわけで、確実にパッケージ購入が見込める層に回線を開放するのは、そんなに分の悪い話ではないと思いますしね。
あるいはもっとアクティブに、パッケージ購入者に対してモバイルツールへのダビングサービスをするというのもアリなんじゃないでしょうか。近年、録画機器への制限が強化される中で、逆にパッケージを購入した方が利便性が高くなれば、十分な魅力となるように思います。パッケージ購入しなくても、少額の金銭で同様のサービスを受けられるようにすればなおベターですね。
制作者と購入者がよりよい信頼関係を築くために
そもそもお金を払う意思のない人にいくら餌で釣っても追い込みをかけても、それは労力の無駄なんですよね。それよりも、対価を払う意思のある人が、より気持ちよく安心してそれぞれの余裕の範囲内で支払う事の出来る環境作りに努めるべきなんじゃないかと考えています。
ともかく、現状コレクターズアイテムとしての価値以外が非常に乏しいパッケージメディアという商品を、購入の意思を示せば最低でも録画視聴者と同等かそれ以上の利便性と品質が得られるものに変えていく。そうゆう意識が働けば、制作者と購入者の間の信頼関係はよりよいものになっていくんじゃないんでしょうか。
- 1209 http://www6.ocn.ne.jp/~katoyuu/
- 815 http://b.hatena.ne.jp/hotentry
- 641 http://www.golgo31.net/
- 436 http://b.hatena.ne.jp/
- 421 http://d.hatena.ne.jp/
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まったく買わない者とコアなマニアとの間に ある程度なら買ってもいいという層があるのにその部分が今の業界ではサポートしきれてない ディープな層でなくても気に入った作品があれば年数万程度なら出せる層がディープな層の何倍もいると思うんですよね 私も昔はLD BOX今はDVDボックスをたまに買いますが でも年に出せて数万です よほど気に入った作品なら欲しいと思うけどここ数年はDVD買うほど欲しいと思わせる作品もありません なにしろ1作品セットではそうとうな金額になってしまう これではライトなユーザにはそうそう出せる金額ではない 毎回番組改編時期になると数十タイトルのアニメ新作が氾濫する たしかにいろいろなユーザの好みに合わせれば数が増えるかもしれないが 数が増えた分クォリティの低い作品も乱造されているような気がする DVD販売売り上げを制作費にあてるというのなら 売れる作品 ユーザにうける作品 クォリティが高い作品など考える部分はいろいろあるだろうが 今の現状みてると 一部のマニアしか買わないのだから一般ウケや大量に売ることを考えなくていいみたいな あまり売れそうもないような作品も見かける これでは製作コストが増えるだけでそれが価格に影響してしまう 租税乱造をやめて作る本数をしぼりこんで製作を丁寧にして 売れる面白い作品にしぼりこんでいけば1本あたりのセールスが上がりコストも下がりライトなユーザでも買える価格になり業界の裾野が広がるのではないだろうか
あとDVDを買うのがアニメ製作を盛り上げる意思があるような書き方されてますが
私の場合は製作なんてどうでもいいです 面白い気に入った作品を自分の手元に置きたいというコレクター心だけです 面白いものにはお金を払うそうでないものにはお金払う必要ない 当然な考えです市場原理でしょ ですがアニメ業界が一部マニアのお布施だけで成り立ってることに満足してコアなネタだけを提供し続け市場原理を忘れたなら斜陽の道をたどるのは当然です
低画質の動画ファイルがデータで入っている
データDVDをパッケージ販売すればいいと思います。
ネット流出をどう防ぐのかが問題ですが…
そのために無料か1週間100円200円の課金ではなく、どこの動画サイトも例外なく1日で旧作10円新作20円程度課金にするべきだと常々考えています。
正直100円払ってつまらなかったら、たいした金額でもないのに物凄く損した気分になります。
1度しか見ないようなライト層でも10円20円なら喜んで払うし、途中から見始める敷居も低くなると思います。何より10円20円でいつでも見られるなら違法ダウンロードする方が面倒でしょう。
仮に50万再生で20円課金なら1000万になりますから再生数を上手く稼げる工夫をすれば10円20円でも十分成り立つんじゃないかと思います。
出せて年に数万という感覚はとても真っ当だと思います。私も偉そうな事書いてますが、アニメのDVDは年に1作品買うかどうかというのが実際です。コレクション的な価値以上のものがないパッケージビジネスだけでなく、もっと気軽に、自然に対価を支払う方法を模索するべきなんですよね。
>なありさん
データ販売という形であればパッケージにこだわる必要はないかもですね。本文にも書きましたが、特にモバイル端末向けにそういったサービスがあってもいいんじゃないかと考えています。
>うにさん
無料と有料の間には越えがたい壁があるんですよね。それが例え10円でも1円でも。これは少額決済の仕組みがまだ未成熟だからという事もあるんですが。それと、無料であっても数十万再生という数字はかなり達成は難しいです。本文注釈に書きましたが、コードギアスですら、無料配信で45万再生です。この数字はネット配信の利便性をもっと高めれば改善される可能性もありますが、ネットインフラもタダではないですしね。実際にアニメ制作に必要な資金を考えると、実は100円200円でも安すぎるというのが制作サイドの本音だと思います。
「払いたい人だけが払うというビジネスモデル」を前エントリで推していましたが、それをすでに取り入れている(しかも規模の大きい)例として既に崩壊しかかっているアニメ業界を挙げてしまっては、これじゃ逆に「そんなビジネスモデルじゃうまくいかない」と証明しているように見えてしまいますよ。
そもそもアニメ業界も、ゲームのDLCも、ニコニコ動画も、いくつか共通項があったとしても、やり方も目指すところも違うそれぞれ別のビジネスモデルなんじゃないですか?全部を一まとめにして考えると、色々無理が出てしまうかと。
現に、このエントリで提案されたものは全て「購入者により利便性を与える」という「払った人」と「払っていない人」との差別化ですよね。
「払いたい人だけが払うというビジネスモデル」ではやってはいけないことと言ったものを、そのモデルを既に採用して崩れかけているアニメ業界の解決策として提案するのは矛盾してませんか。
おっしゃるとおり、矛盾をはらんでいます。考えどころは、ニコニコも、アニメ業界も既に望む望まないに関わらず、そういったビジネスモデルが成立してしまっており、いまさら払った人だけがサービスを受けられるモデルにはおいそれと変更できないんですよね。
既にそうなっているということを前提に、そこからいかにして商売として成立させていくか。それを考えていきたいと思っています。