娯楽と不況

 スーパージャンプ09年03号掲載の「王様の仕立屋-サルトフィニート」がなかなかの良エピソードだったので少し紹介を。

 あらすじは渡米した主人公一行がハリウッド映画の舞台衣装に関わることになったところから。紆余曲折あって、撮影がようやく軌道に乗りかけたところで先般の世界同時不況の影響でスポンサー降板、予算縮小で撮影続行が困難に、というところで。その後1エピソードあって、撮影再開するわけですが、そのときの監督のセリフがなかなか奮ってるんですね。


正直この企画を立てた時には世の中がここまであの時代とリンクするとは思っていなかった。世界恐慌を扱うのにノリが軽かったと反省している。しかしある意味こいつは天啓だ。


世界大戦の最中でも人間は歌と娯楽を忘れたことはねえ。マリリン・モンローが慰問に行けば死にかけた兵隊も起き上がれる。人間とはそういう生き物だ。大衆は楽しい事嬉しい事には喜んで金を出す。消費が冷え込んだ今こそ、俺たち娯楽屋が気合を見せる時だ。

 この映画は1920年代の世界恐慌吹き荒れるアメリカが舞台という設定なのですが、このセリフは作中のシチュエーションに併せたセリフであると同時に、この漫画のエピソードそのものにも掛かった言葉になってるんですよね。世界同時不況によって娯楽産業の先行きもまた不透明になっている今日。不況になれば真っ先に切られるのが遊興費だという世間一般の言説に対して真っ向から異を唱える、あるいは自分自身も含めた娯楽産業に従事する仲間に対する檄文とも取れるセリフで。

 このエピソードの中で監督が取った、自分の財産を処分してでも撮影を続行して完成させて見せる、というやり方が本当に正しいのかどうかはまた一考の余地のあるところではありますが。それでもこういった気概というのはとても頼もしいし、不況だからと諦めるのではなく、不況だからこそ娯楽は必要なんだというメッセージには強い共感を覚えますね。

 こんな世の中で面白いのつまらないのなんて言っている場合じゃあないだろうという向きもあるとは思いますが、こんな世情だからこそ、より面白いもの、すばらしい作品を伝えていくことが出来たらな、などと改めて思ったりしました。