2011年12月23日
なぜ「本が破壊されること」が問題なのか
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スキャン代行業者に対して作家7人が連名で起こした提訴が物議を醸しています。ネット上の反応はこの作家に対する批判が大勢を占めているのですが、私はこの見方には懐疑的です。特に「本が破壊されている」事を問題にするのはただの感情論で筋が悪いという意見に対して、なぜ「本が破壊されること」が問題なのか、というのを主に法的な観点から考えてみたいと思います。
この問題を読み解く上でまず考えなければならないのが、スキャン代行業者が行なっている業務というのは実態としてどういうものなのか?ということです。業者によって多少の違いはありますが、多くは「依頼者から書籍を受け取る→裁断・スキャンして電子書籍を作成する→本の書籍を破棄して電子書籍を依頼者に渡す」というフローを取っています。
これが果たして私的複製の補助に過ぎないと解釈することは可能なのかということですが、どのように理屈をこねくり回してもそのように解釈することは不可能であるというのが私見です。スキャン代行業者のやっていることは明らかに私的複製の範囲を超えており、著作者の持つ「出版権の許可」という根源的な権利を犯していると解釈せざるを得ない。
その中でも特に問題となるのが「依頼者から受け取った書籍を返却せず破棄する」という部分です。これはつまり、「依頼者から受け取った一般流通している版を原稿にして1部だけ全く新しい版の書籍(電子書籍)を出版していると解釈するしかない」んですね。何しろ依頼者は原稿となった元の版がどういった内容だったのかを確認する術がない。乱丁・落丁や読み取りミスによって内容が違うものになってしまってもそれを交換する術もない。出版業というのは、著作者の許諾を得て著作者が許諾した状態の書籍を発行しなければいけないんです。だから落丁乱丁があれば取り替える。しかし無許諾の出版社であるスキャン代行業者はそれを行うことが出来ない。これだけで、作家としてこの業を認めるわけにはいかないという理由は十分です。これは提訴の記者会見で主に永井豪氏が触れている部分ですね。
では代行業者が原稿を破棄せず依頼者の元へ返却をすれば良いのではないかという考え方はあります。実際、一部の業者は依頼者が望む場合は原稿を返却しているところもあります。実はこちらのほうが法的にはクリアである可能性が高い。高いのですが、しかし今度は直感的に何かがオカシイのではないかとう疑念が頭をよぎります。つまり、依頼者がその返却された書籍をどう取り扱うかという問題が今度は浮上するんですね。
今回の提訴による反応は様々ですが、その中でも特に目立っているのは「書籍のスキャンをするのは保管スペースを確保するため。本を買う意志はあるが置く場所がない」といった意見です。つまり多くの場合、仮に裁断された原稿が手元に戻ってきても、利用者の大半はそれを処分するという意思を明示しているんですね。
古書流通は手元に複製物を残していないということが暗黙の前提になっています。仮に複製をしていたとして実際問題としてそれを証明する手立てがありませんから、限りなく白に近いグレーという取り扱いですね。しかし裁断された書籍が古書として流通していた場合はどうでしょう?もちろんこれも証明する手立てはありません。しかしおそらくはこの裁断した書籍を流通させている人物は手元に複製物を残しているであろうという憶測を多くの人がするのではないでしょうか。そして実際そのように証言をしている人たちも多数存在します。これは限りなく黒に近いグレーと言って差し支えないでしょう。浅田次郎氏を始め何人かの方が「裁断された書籍を見るのはつらい」というのは、いささか文学的な表現も混じってはいますが、それは返本された書籍が裁断されるのとはまったく意味合いの違う、確かに理由のある痛みであろうと私は解釈します。
もちろん紙の書籍をスキャンして電子書籍化することはスペースの確保以外の利点も多々あります。それについては私自身記事を書いたこともあります。その限りにおいては書籍を裁断することもそれを業者に依頼することも誰に憚ることはないという強弁は可能でしょう。しかし実際のところいわゆる「自炊」をする人の多くはスペースの確保を最大のモチベーションにしていることは疑いようもなく、その限りにおいてこれを作家連が問題視するというのはまったく理にかなった話であろうと私は考えます。
電子書籍には非常に大きな魅力と可能性がある。だからこそ我々利用者は、スペースの確保という消極的な理由だけでなくもっと多くの「自由な電子書籍」の魅力を語っていくべきだし、それを積極的に作家にも伝えていくべきでしょう。私たちは作家の新しい創作物をより自由な環境で、豊かな視点で読むことをこそ望んでいるはずなんです。その思いが伝わらなければこの対立は決して解消しない。逆に言えばその思いを正しく作家さんに伝えることが出来れば、今電子書籍を取り巻く問題のほとんどは自ずから解決するだろうとすら思っています。
実際のところ、「自炊」を実践している人のほとんども、出来うる事ならこの不毛な作業から一刻も早く開放されたいと願っているはずなんです。それは本来、著作者の利益とまったく対立するものではない。利便を得るための対価を代行業者ではなく著作権者にこそ支払いたいと考える人も少なくないでしょう。だからこそ、そういった捻じれ、対立を加速させるスキャン代行業のような業態はやはり問題視されてしかるべきであるし、今回の提訴は至極真っ当なものであると私は考えます。
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私もそういうサービスを愛用していますが、正直その作家達の言い分を見て浮かび上がったのは、「この人達は私のようなユーザーの気持ちをこれっぽちも考えていないのではないか」、と。
考えてみてもください。実体本を買う→追加の金を払ってスキャンしてもらう→待つ→デジタル書籍が手に入る。
そのまま本として読む人に比べると、時間と金銭両方で損をしています。そこまでしてもデジタル書籍が欲しいのです。
何故スキャン業者に頼むのか?それしかないからです。業務用のスキャンナーは高いし、何よりも手間がかかる。
ぶっちゃけていうと、さっさとみんなが角川のように本格的にデジタル書籍販売を始めろ、そうするとスキャン代行も要らなくなるから自然消滅するだろう、と。
スキャン業者はあくまでデジタル書籍が普及されたまでの「繋ぎ」。まぁ、出版社がデジタル事業を始めるつもりがあれば、ですが。
需要がある限り、そういった手段を取った所で何の対策にもなっていません。その「需要」がそういった行動に顰蹙し、共感出来ないとなると尚更です。
正直全く方向性が間違っているとしか思えません。何故私は漫画家を「敵」としてみなければならないですか。本当に悲しい限りです。
http://d.hatena.ne.jp/GiGir/20090501/1241171544
どうすれば問題が解決するのかなんてことは実はもうみんなわかってるんです。ただ、それを実行するためには「不信」と言うなの大きな溝を乗り越えなくちゃならない。今必要なのはお互いにお互いの要求を声高に叫ぶことではなく、お互いの言い分に耳を傾けて、少しずつでも歩み寄っていくことなんではないかなと。この件は、どちらかの全面降伏で終わっちゃいけないんです。作家と読者はけして敵対しない。多くの人がそう思った時にこそ状況が変わるんじゃないんでしょうか。
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